EP.34 やりすぎ乙女の説教タイム
ミオンちゃんが激しい音と共に仰け反った。
そのまま勢い良く地面に後頭部を打ち付けて、手に持っていた水風船が弾けた。
私は急激に膨れ上がった怒りに身を任せ、ミオンちゃんに何かしたであろう、ロボットの様な人へ、全力で迫り──勢いそのままに拳を撃ち込んだ。
それこそ、以前言われた事の有る、赤と緑のオーラを身体から立ち昇らせての、全力全開の一撃である。
小さい子供、それも可愛いケモ耳ミオンちゃんに、あの音が出る程の威力の何かをぶつけた相手。
加減なんて、一切考えていなかった。
それなのに──八代ママがいつの間にか拳を撃ち込んだ相手の背後に居て、何かをした瞬間──私の撃ち込みの衝撃が掻き消され、ロボットの様なモノを着込んでいた人が倒れた。
「何で止めたのさ八代ママ……ミオンちゃんに、あんな酷い事したんだよ」
今は──『水風船…割れたのおぉぉぉ』
水風船が割れた事に悲しんでいるけど、良く見たら額から血が出ている。
子供の可愛いお顔に傷を付ける人なんて、許せる訳が無いんだよ。
「花乃歌ちゃん、少しやりすぎよぉ? 後少し遅れていたらぁ、この人死んでたわねぇ」
「その人、ミオンちゃんに何かしたんだよ……ミオンちゃんが何かした訳でも無いのにっ。何でその人助けたのさ……」
いくら八代ママでも、そんな人を庇うのなら許さないからね。
「うーん……そもそもぉ、そのミオンちゃんは何者なのぉ? 可愛い犬耳と尻尾が有るけどぉ、人では無いわよねぇ……」
「……っ」
言える訳が無いんだよ。
今この子が地上に居るなんて、さっちゃんですら知らないのに、八代ママに話しちゃったら捕まえられちゃう。
「そう言う事よぉ。知らない者、特に強い者が発する威圧感を、この人は感じ取ったのねぇ。なまじこの人も強いからぁ、そこのミオンちゃんを脅威と感じてもぉ、仕方無いわぁ」
どう言う事!?
八代ママはマイペース過ぎるっ!
「そんな事っ、私は威圧感何て感じて無いし、それが子供を痛め付けて良い理由にはならないんだよ!」
そんなのっ、ただのこじつけだよ!
「それは花乃歌ちゃんのぉ、危険に対する感覚が鈍いからよぉ。子供……それも人外でぇ、急に背後に迫られてぇ、強者の威圧感でぇ、蛇に睨まれた蛙よねぇ」
確かにっ、ミオンちゃんは知らない間にその人に近付いたけどっ、ただ興味が有っただけなんだよ。
「花乃歌ちゃん、強者の興味はぁ、弱者への死の宣告に成り得るのよぉ。例えばぁ、私がミオンちゃんにぃ、興味が有るとしたらぁ?」
「──っ、私が全力で護るんだよっ!!」
「悪魔の抱擁嫌なの!? カノ助けてっ!」
ミオンちゃんを隠す様に立つけど、八代ママが相手だと正直勝てる気がしません。
だから、最悪迷宮に放り込んで逃すのさ!
八代ママには絶対渡せない……だけど、戦うのはやっぱり怖いっ。
「ふふっ。ほらぁ、花乃歌ちゃんでもぉ、私が怖いでしょぉ。私は殺意何て無いのにぃ、これが圧迫感と言うモノよぉ」
「……それでも、納得いかないんだよ」
圧迫感が怖いのは分かった。
分かったけど、やっぱり納得出来ない。
ミオンちゃんが何か悪い事をしたのなら、分からなくも無いけど、悪い事なんてしてないんだよ。
「頑固な子ねぇ……なら、レオンちゃんはどう思うのぉ?」
「えっ、私に聞くか? 物凄く蚊帳の外感が有ったから、傍観してたんだけど……」
「私も、レオンちゃんの意見が聞きたい」
「……そう言うなら。まぁ、私から見たら……ぶっちゃけミオンの不注意だろ。子供ぶっ飛ばしたそいつも相当ヤバいけど、こんな事態で警戒しない訳が無いし、気を張ってる所に突然現れたら私だって拳骨喰らわすぞ」
ぬっ、ぬうぅぅぅっ、ぐうの音も出ない。
納得したく無いのにっ、納得せざる得ない。
「カノ…水風船割れた…戻らないの……」
「あぁっ、御免ねミオンちゃん! 直ぐに額の傷を手当てしようねっ!」
早く病院っ、駄目だ!?
ミオンちゃん病院行けないんだよ!?
「いや花乃歌、先ず死にそうなアイツだろ……」
「まだ心臓は元気よぉ、相当鍛えてる様ねぇ。これならぁ、死ぬ事は無いわぁ」
「病院っ、どうしたら……」
ミオンちゃんを、このまま病院に連れて行ったら、間違い無く問い詰められて、最悪笑顔のさっちゃん登場で連れて行かれちゃう。
「(すんすん)お爺ちゃんの匂い!」
「えっ、急にっ、何処に!?」
「向こうで呼んでるの! カノ、レオ、ミオン帰ります!」
ちょっと待ってミオンちゃん!?
せめて怪我の手当てだけでもしないと!!
「私の家に救急ば──『お爺ちゃーん!』こ……行っちゃった……ミオンちゃあああんっ!?」
水風船は良いのかなぁああああああ!?
「あらぁ、この人が死に体じゃぁ無かったらぁ、捕まえたかったですねぇ」
「八代ママ駄目だよ! ミオンちゃんは良い子なんだから!」
「……なぁ、向こうから黒服走って来るぞ」
今度は何なのさっ!?




