EP.33 想い人は遥か遠く
ヘリから降下した後、直様確認した魔物を殲滅して、空地へと到着した。
地面には、縦二メートル、横一メートル程の亀裂が走り、新たな魔物が出て来ないかの見張りを行う。
「(ピポッ)こちら南雲、現場へ到着した。亀裂は然程大きく無いから、僕の部隊が到着次第密閉作業を行うよ」
『こちら楽羅蘭、了解したで御座る。どうやら魔物が、離れた場所にも居た様で御座るが、誰かが殲滅した様で御座る……気を付けられよ南雲氏』
「へぇ……別働隊って訳じゃ無いよね。了解した、気を付ける」
誰かが魔物を殲滅したね。華ノ恵では無さそうだし、まさか那邪道……は無いか。あの根っからの御嬢様が、魔物を殲滅だなんて有り得ない。
「まあ良いさ、此方は此方の仕事をするまでだからね」
部隊が到着するまでに、出来る範囲で準備をしておかなくちゃ。
先ずはこれ以上穴が広がらない様に、硬質剤を亀裂の外側へ散布して土を固め、穴の中に、細長いカメラを伸ばし入れて、固定する。
「内部に魔物は……居ないね。これなら安全に作業出来そうだ」
内部はコンクリートに覆われた直線通路だし、魔物が攻めて来ても直ぐ対処可能だね。
(ピピッ)──熱センサーに反応?
まだ魔物が居るのか……大きさ的に人?
大人二人に子供が二人か?
「(コンコンッ)あなただあれ?」
なっ、さっきまで離れた場所に居た筈っ、どうやって背後に!?
ゆっくりと後ろを向き、姿を確認。
あくまでも自然に、緊張を悟られ無い様に。
「おやっ、誰だい君は……犬耳?」
犬耳姿の幼子?
何故お腹が膨れて……あぁ、ぬいぐるみか。
いや待て……何故服が血塗れになっている。
先程の異常な移動は何だ。
この耳……妙にリアルでっ、人じゃ無い!?
「ミオンは犬耳じゃ無い! あなたはだあれ!」
戦うか……敵意は無さそうだけど、何だこの犬耳幼子は。得体が知れないと言うか、敵意は無いのに妙な圧迫感が有る。
まるで、華ノ恵に押さえつけられた時の様な、異様な圧迫感。
ここは──「僕は南雲、南雲智人だ」
相手に合わせるしか無いか。
「南雲? この装備なあにナグ?」
会うなり直ぐに名前を略すのか……僕の盾に興味を示しているね。これは、ある意味チャンスかな。
「これが気になるのかい?」
「見た事ないの。不思議な形なの!」
間違い無く異形の者。
言葉を解する何て聞いた事ないが、魔物の一種である事は間違い無いだろう。
敵意は無くとも、見た目が幼子であろうとも、この圧迫感だけは誤魔化せない。
謂わゆる化物のソレだ。
いつその圧迫感に、殺意が混じるか分からない。
だからこそ、やるしか無い。
「本当は駄目だけど、特別に触っても良いよ」
「良いの? 艶々してて、変な穴が有るの!」
もう少し……そう、その穴を覗くんだ。
チャンスは一回……これは絶対に外せない。
ゆっくりと照準を合わせて──今っ!!
ドンッッッ────『ぎゃっ!?』
良しっ、脳天を撃ち抜いた!
魔石を加工した特別製の弾丸だ。
一定の異常個体ですら撃ち殺す威力。
そんなモノを至近距離で撃ち込まれれば、華ノ恵ですら防ぐ事が出来ないだろう。
それなのに──『痛い…水風船割れたの…』
何故無事なんだいこの犬耳は!?
しかも何だ……今弾丸を撃ち込んだ時、遠くから花乃歌の声がした。聞き間違える筈が無い、確かに花乃歌の声だった。
「花乃歌が近くに──『ミオンちゃんに何するんだぁあああああああああっ!!』──えっ?」
咄嗟に身体が動いた。
鍛錬に鍛錬を重ね、訓練に訓練を重ね、鍛え上げられた肉体と、優れた感覚の成せる技。
ほんの瞬きの間に、盾を二重に構え、アシストスーツをフル稼働させ、自身の命を全力で繋ぎ止め様とする。
時がゆっくりと進む。
まるで走馬灯の様に。
盾が破壊され──右腕が砕けた。
盾が破壊され──左腕が捻れた。
腹部に衝撃──ゆっくりとその衝撃が、アシストスーツを伝い、骨、内臓全体に広がって行く。
肋骨が折れた感覚がした。
胃や腸が破裂しそうだ。
心臓の鼓動が速くなる。
このまま衝撃を受け続ければ、先に待つのは、確実な『死』である。
そう思ったその時──『そこまでよぉ』
その身体を伝う衝撃が掻き消えた。
「がっっっ、あ…………」
「あらあらぁ、何とか生きてる見たいねぇ」
「何で止めたのさ八代ママ……ミオンちゃんに、あんな酷い事したんだよ」
やっぱり…花乃…の声……あぁ…また怒らせてしま…………た。




