EP.32 緊急事態.3
終末の刻研究所────
耳障りな緊急アラートが鳴り響く中、波夏草楽羅蘭は懸命に、働いていた。
華ノ恵所有の衛星から、リアルタイムで送られて来る画像を解析して、異常なモノ──迷宮への出入口を特定する為に。
「範囲が広すぎで御座ろうっ、流石に某だけでは時間が足りぬで御座るよ!」
ディスプレイを操作しながら、画像を解析。
町に取り付けられたセンサー類のデータも含め、手当たり次第に確認していく。
奏地地区は平地が多い故、見つけるのにさほど手間はかからぬが、那邪道地区は住宅が多い故に、特定に時間がかかってしまうで御座る。
「桜乃氏だけでは探しきれまいて……部隊を投入っ、人通りが多過ぎるで御座る!」
那邪道地区には、コンビニに数名人員を配置しているが……彼奴らにも任務があるで御座るからな。
プシュ──『楽羅蘭、お茶です』
誰かはいってああああああっ!?
面倒な人がこんな時に来たで御座るよ!?
「母上っ、今はそれどころでは無いで御座る!」
某にぶっ飛んだ名前を付けた張本人!
空気が読めない!
余計な事をして来る!
人の話を聞かない!
こんなんで研究所内の監査役で御座るから、誰しもが近付かないぼっち母上っ!!
「楽羅蘭、ちゃんと八女母上と呼びなさい。若しくは、八女ちゃんでも良い」
「今話しかけないで欲しいで御座るっ! 忙しいのを、見て分からぬか母上!?」
奏地区の力場は──見つけた!
「(ピピッ)こちら楽羅蘭! 奏氏! 奏地区の力場発生地点は──農業プラントの広場に御座る!」
『了解! 直ぐに対処致します!』
ふぅ……あとは那邪道地区のみっ!
「楽羅蘭、お茶が冷えちゃう。最近は葛尾も冷たくなったし……楽羅蘭だけが私の味方」
だから今忙しいっっっ、殴りたくなってくる母上で御座る!!
今は無視! 無視して解析に専念で御座る!
「昨日だって、葛尾ったらまた変な人形を買って来て……今の推しはコレだとか見せて来た。これは浮気だと思うの」
ただの人形に嫉妬!?
我が母上ながら、何処かネジがぶっ飛んでおらぬで御座るか!?
一昨日は研究所内でラブラブしてたで御座るが、某は幻を見たので御座るか!?
「だから今さっきね、その人形を削岩機で潰して来たの」
えっ……怖っ、なぜ削岩機で……意味が分からぬで御座るよ。
じゃなくて! 解析をせねば!
「これがその人形の生首です」
持って来てたぁあああっ!?
何故人形の首だけっ、他のパーツを何処にやったので御座るか!?
しかも──その人形父上のでは無くてっ、弟の人形で御座るよぉおおおっ!?
昨日弟が、某に自慢して来た限定フィギュアに御座る!!
「なーんて……これは、私が精巧に作ったラムネ菓子でした(ゴリゴリッ)」
今食べるので御座るか!?
まぁ……何も壊してないようで何よりで御座るが、早く出て行って欲しいで御座る。
「本物は、こんがりと焼き尽くしたから大丈夫。浮気者には鉄槌を」
「だからそれ弟ので御座るよ!?」
突っ込みを入れてしまったで御座るぅ!?
あぁ……反応しちゃったから、母上が目をキラキラさせて……無視するが吉で御座るな。
「楽羅蘭……那邪道駅の改札を出て、右へ五十メートル進んだ先の空地」
「何がで御座るか!?」
急に何を──『データから算出した』
なんとっ!?
そんな来て直ぐに分かる筈が……小さな裂目が有るで御座る!?
「(ピピッ)桜乃氏! 力場の発生場所は──駅改札から五十メートル先の空地で御座る!」
ぬっ……桜乃氏から応答が無い?
何かあったので御座ろうか……いやいや、桜乃氏はスキル持ちであるからして、余程の事が無い限り大丈夫で御座ろうて。
「楽羅蘭、今直ぐ部隊を送りなさい」
「……母上?」
「早く……そこそこ出て来てる」
ははっ、母上がマジな顔になってる……これは不味い状況で御座るな。直ぐに向かえる部隊となれば……奏氏は動けぬし、那邪道氏は療養中……やむなしで御座るっ!
「(ピッ)南雲氏の謹慎を一時解除! 至急部隊を編成し、那邪道地区の力場へ向かうで御座る!」
桜乃氏に……怒られるで御座るかなぁ。
「楽羅蘭……お茶冷めた」
「良いで御座るよ母上、ずずっ……ふぅ、南雲氏に連絡するで御座るか」
母上のお陰で、結構な時短になったで御座るが……はてさて、間に合うで御座ろうか。
愉快な波夏草一家
父 波夏草葛尾 (はかそう くずお)
母 波夏草八女 (はかそう やつめ)
娘 波夏草楽羅蘭 (はかそう らららん)
息子 波夏草奈具留 (はかそう なぐる)




