EP.32 緊急事態.2
ミオンちゃんが地上に上がって来た場所に、案内されて来たんだけど、テナント募集が貼られてあるそこそこ新しいビルだった。
窓ガラスが三角に破られており、着くや否やミオンちゃんがビルに侵入してしまったので、やむ得ず私とレオンちゃんも後を追った。
「(すんすん)お爺ちゃん居ないの、きっと迷子になってるの」
「ミオンちゃん、お爺ちゃんってどんな人なの」
「お爺ちゃんって言うぐらいだから、モッサモサの耳と尻尾でも生えてんのか?」
モッサモサ……レオンちゃん。そんなお爺ちゃんだったら、絶対トリミングしたいんだよ。
ミオンちゃんが、こんなに艶々したお肌と毛並みなのに、お爺ちゃんがそんなだったら許せないもん。
「お爺ちゃんは人なの? 見た目が怪しい人間なの」
ミオンちゃん、何で最初疑問系?
それに、ミオンちゃんのお爺ちゃんなのに、人間なの?
「怪しい人間って、角でも生えてるのかよ」
レオンちゃん、そんな人間『時々生えるの』居ないって……思ってたのにっ!?
「時々生えるって、人じゃないよねそのお爺ちゃん」
「ぬぅぅぅ、お母さんが言ってたの。お爺ちゃんは時々、角を生やして遊んでるって」
角を生やして遊んでる?
生やして何して遊んでるのさ?
意味が分からないんだよ……お爺ちゃん。
「それでどうすんだ花乃歌。ここにお爺ちゃん居ないって事だけど、このミオンだけで、地下に行かせて大丈夫なのか?」
そうなんだよねぇ……上がって来れるって事は、ミオンちゃんも相当強いって事だけど、流石に小さい子一人は危ないと思うの。
「ミオンは一人でも帰れるの! いつもそこのお店で、こっそりお仕事見学してるから!」
「……だからあんなにレジ打ち出来たんだね」
「ははっ、いつも来てるって……華ノ恵知ったら卒倒するぞ」
だよね。
何かさっちゃん、境界を超えた者って言って、相当ミオンちゃんを警戒していたし……見つかったら大事になるかもだよ。
「お爺ちゃんの匂いが近づいて来るの、迎えに行くの──!!」
「えっ、そんな急に!? ミオンちゃんのお爺ちゃん来るの!?」
「花乃歌落ち着け……どうやら外らしいな」
ミオンちゃんがお鼻をすんすんしながら、窓から出て行っちゃった……ぼーっとしてないで追いかけないと!
窓を飛び越え、外に出て──『お爺ちゃんじゃ無いの、あなたはだあれ?』っ、知らない人に声かけたの!?
急いで声のした方へ向かうと──『あらぁ、可愛らしい子ねぇ。私は十島重八代って言うのよぉ』物凄く見知った人が、ミオンちゃんを撫で撫でしていた。
「八代ママ!?」
「あれっ? あん時の人じゃん」
レオンちゃん八代ママ知ってるの!?
いつ知り合ったのさ!?
「あらぁ……花乃歌ちゃぁああ『ぬぎゅっ』あああああん! ようやく会えたわぁ、元気だった? ご飯ちゃんと食べてる? 一人暮らしで寂しくなぁい?」
「くっ苦しいのっ……」
「やっ八代ママっ、ミオンちゃんがっ、挟み込まれてぎゅむぎゅむなんだっよ……」
ミオンちゃんを掴んだままのっ、八代ママの全力ハグだとっ、ミオンちゃんが潰れちゃう!?
「おぉーい十島重さん、花乃歌とミオンが苦しそうだぞ……花乃歌が苦しむってどんな力だよ、怖えぇな」
「あらあらごめんねぇ、会えたのが嬉しくって、力の加減間違えたわぁ。大丈夫二人共?」
「ぷはっ! ミオンちゃん大丈夫? どこも怪我してない?」
「お母さん並みの力だったの……怖いから近付かないで下さい!」
ミオンちゃんのお母さん並みっ!?
あの時出逢ったケモ耳美人さん並みって……八代ママって人間だよね?
「カノはその女から私を守るの! 優しそうだけど力は悪魔なの!」
「八代ママが悪魔呼ばわり!?」
「私は人間ですよぉ? 少し力が強いだけのぉ、ただの一般人ですぅ」
八代ママ、私記憶戻ってるからね。
八代ママは絶対一般人じゃ無い。
だって、研究所と繋がりがある施設の、立派な職員さんだもん。
「八代ママは何でここに居るのさ。いつもお仕事で、忙しそうにしてるのに」
「あらあらぁ、お父さんの言ってた通り、私の記憶操作を解いたのねぇ。凄いわぁ花乃歌ちゃん! これならいつでもぉ、施設に遊びに来れるわねぇ!」
「……人の話を聞かないタイプの人か?」
「レオンちゃん、マイペースって言ってあげて欲しいんだよ……恥ずかしいっ」
「生粋の天然なの!」
ミオンちゃん、マイペースだよマイペース。
天然さんとは違うからね。
「あらあらぁ、花乃歌ちゃん……そのまま全力で裏拳よぉ」
「急に何っ!? 裏拳って『早くぅ』分かったんだよ──(パチュッ)」
うぇっ!? 何か潰した感触と音!?
私今何潰したのさ!?
「花乃歌……今潰したのって、ゴブだったぞ……」
「ゴブさん!? うわっ、本当だよ。顎が砕けて分かり辛いけど、間違い無くゴブさんだ……」
何で地上にゴブ居るのさ……これ絶対不味い状況だよね!?
「花乃歌ちゃんとそのお友達さーん。気を抜かず構えてぇ……まだまだ来そうよぉ」
「ゴブリンの匂い分からなかったのっ、お肉にならないから嫌い!!」
ミオンちゃんの毛が逆立ってる!?
それでも可愛いなんて、反則だよね!!




