EP.30 迷子の迷子の.1
楽しい? 日々が過ぎるのも早いもので、あっ、と言う間に期末テストの期間が過ぎて、もう少しで夏休みなんです。
本当にね……あっ、と言う間にと思うのも、仕方が無いんだよ。
さっちゃんから、魔石が電力になる事を聞かされてからと言うもの、期末テストなんてお構い無し、加減無しの迷宮上層マラソン大会だったのさ。
あのレオンちゃんが、『もう無理……一年分は稼いだから休みたい……』なんて弱音を吐く程だったからね。
ブラック企業真っ青の過密スケジュールで、平日学校終わり二十二時まで。土曜日曜は一日中迷宮の上層でゴブを狩り狩り、ウリを狩り狩り、お猿さんや骸骨さんも新たに発見して、襲って来たからそれも狩り狩りしつつ、期末テストの勉強勉強だったんだぁ。
一体だけ、異常個体ってさっちゃんが呼んでる魔物さんが来たけども、疲れて苛々していたレオンちゃんの、『狂気の叫び』を聞いた瞬間、発狂してそのまま……さようならお猿さん? ゴリさん? 良く分からない魔物さんだった。
さっちゃん曰く、異常個体の魔石なら、それ一つで戸ノ浄市五年分の電力が賄えるらしい。
レオンちゃんは魔石に興味が無い様で、オレンジ色の魔石を欲しそうに見ていたさっちゃんと、全力で価格交渉をしていたよ。
そんな事が有りながらも、もう少しで夏休みなのさ! そして今日は、夏休み前なのに夏祭りに来ております!
「夏休み前の夏祭り……不思議だなぁ」
さっちゃんとレオンちゃんを誘ったんだけど、さっちゃんはお仕事、レオンちゃんは実家のお手伝いだそうで、一人だから寂しいのさ。
昨日スマホをポチりポチりとしてたら、那邪道区でお祭りの情報があったの。
那邪道さんには遭いたく無いんだけど、お祭りには行きたい。行きたいけど、那邪道さんには遭いたく無い。
そんな葛藤をしながらも、結局那邪道区へ来ちゃいました。
電車?
違うよ?
試しに走って来たんだよ!
前にトラックで来た時は二、三時間かかったけど、走ったら一時間で来れました!
車より普通に速かったの……途中、人にぶつかりそうになったから、ジャンプしたら、十階建てのマンションを飛び越えました。
誰に説明してるのか……虚しいなぁ。
「またあのサイトに載るのかなぁ……今回は写真撮られて無いし、大丈夫だよね!!」
今はお祭りなんだよ!
お金は沢山有るし、食べ物の出店を全制覇してやるのさ!
端から順に攻めようか……それとも一回調べてから攻めようか……端からにしよう!
記念すべき一店舗目は──イカ焼き!
「イカ焼き一つ下さい」
『あい…よ…顔怖!? あっごめっ、怖っ、三百えっ円!!』
「はいタッチ決済」
『ひっひぃやぁあああっ!?』
一店舗目からコレなんだよ。
ムグムグ……味はイカ焼きの味だね。
市販の濃いタレでイカの臭みを消して、丸々イカさんご馳走様でした。
二店舗目は──たこ焼き!
「たこ焼き下さい」
『いらっっっ、さっ三百ごぢゅっ円や!』
「はいタッチ決済」
『堪忍っっっ、堪忍してぇええええええ!?』
二店舗目もこんな感じなのさ。
ムグムグ……たこ焼きだね。
和風の出汁が効いてて、タコもそこそこ大きくて、ソースが絶妙なんだよ。
三店舗目は──焼きとうもろこし!
「とうもろこし下さい」
『…………ごひゅっ』
「はいタッチ決済」
『ひゅーっ、ひゅーっ、ごひゅっ』
三店舗目は白目で対応されたよ。
ムグムグ……焼き加減が絶妙です。
醤油を塗り過ぎず、されど薄過ぎない絶妙な味付けをしつつ、焦げ過ぎない様に調整された焼き加減は、最早職人なんだよ。
四店舗目は──綿飴!
「綿飴下さい」
『あいよ綿飴ね、二百え……』
「はいタッチ決済」
『…………』
綿飴を貰う瞬間に固まったんだよ。
ムグムグ……黒砂糖の甘さだぁ。
ただの砂糖なのに、何で綿飴にしたら、こんなにも美味しくなるのだろうか?
五店舗目は──林檎飴!
「林檎飴下さい」
『三百円……お互い苦労するな』
「はいタッチ決済」
『祭り、楽しみなよ』
無表情な叔父さんに慰められた。
ムグムグ……林檎飴って、美味しいけど食べ辛いよね。
甘々が二回続けてだから、砂糖の違いが良く分かります。
六店舗目は──飴細工だね!
「お犬ちゃんと猫ちゃんを下さい」
『はいはい三百円ねぇ……』
「はいタッチ決済」
『おんやぁ、等々お迎えかねぇ……』
お婆ちゃん、私は天使じゃ無いんだよ?
ムグ……食べるの勿体無いなぁ。
シンプルな砂糖の甘さに、軽くレモンの香りが付いていて爽やかな気分です。
七店舗目は──魚の塩焼き!
「お魚一本下さい」
『んぁ? 人形か? 客は──』
「はいタッチ決済」
『っ!? 人形が喋ったぁあああっ!?』
私は人形じゃないです。
ムグムグ……表面のパリパリと身のふわふわ感が絶妙な塩加減と交わり、中々に美味しい。下処理完璧で臭みも無く、こだわりが感じられる一品なのさ。
八店舗目は──何か揉めてる?
『おにぐぅううう!!』
『だからお嬢ちゃん、金無いと買えないんだって。頼むから店の前に居座らないでくれぇっ』
子供が駄々を捏ねてるのかなぁ、人混みで見えないや。あのお店は串焼きかぁ、食べてみようかなぁ。
人混みを掻き分けてっ、駄々っ子中の子供は見ないようにっっっ、到着!
「串焼き一本『おにぐぅううううううっ!』っ、二本下さい……なっ!?」
気になって駄々っ子見たら、二度見しちゃったよ!? なんで普通にあの子居るのさ……ケモ耳ふわふわミノンちゃんの妹ちゃん!?
『はいよ嬢ちゃっっっ、そっ、ばっ』
「はいタッチ決済」
『めっめめめ目がっ、怖いぞ嬢ちゃんっ!?』
黙らっしゃい失礼な。
取り敢えず、土下座姿勢で丸まって駄々を捏ねているケモ耳ちゃんに、焼き串を近づけます。
「(すんすん)おにぐぅ?」
「かっ可愛い! ほら、こっち来て一緒に食べるんだよ」
「おにぐぅ!(よじよじ)」
何で私の背中をよじ登るのさ?
これアレだよね、肩車だよね?
軽いから良いんだけど、どちらかと言うと、私は抱っこしてモフモフしたい。
「ベンチは……あった、あそこで食べるんだよ」
「おにぐぅ(ぺちぺち)おにぐぅ(ぺしぺし)」
私の頭を……叩かないで欲しいなぁ。




