EP.28 ちょっとした異変.2
児童養護施設愛情会────
表向きは何某らの理由で親と暮らせなくなった、又は親を失った子供達の保護施設。しかしその実態は、常人とはかけ離れた思考や異質な子供達を集め、異能の力を発現させる為の特殊機関である。
「はいはい皆さぁん、倒れたままだとぉ、踏み潰しまーすよぉ?」
道着を纏い、優しげな声色を発しながらも、倒れる子供を容赦無く掴み上げ──投げ飛ばす。
愛情会職員、十島重八代。
終末の刻により両親を失い、とある理由から裏の機関に身を置く、施設の指導員の一人。
施設の子供達から八代ママと言われ慕われるも、この手合わせの時間だけは、皆が恐れる化物へと姿を変える。
「ほらぁ、白瓦ちゃんもぉ、ちゃんとしないとぉ、また絞めて寝かせますよぉ?」
「ぐぅ、なぜ私だけ…こんな目に……ゼグだけゲーム三昧してるのに……不公平でしゅっ」
「白瓦ちゃん、早く立たないと。痛っ、八代ママは本当に踏んでくるからね」
「八代ママはこん時だけ怖いんだよなぁ。花乃歌姉ちゃんが居た時は、施設壊れるかと思うぐらい二人で暴れてたし」
あらあらぁ、やっぱり白瓦ちゃんは起きれないのかしらねぇ。他の子達はちゃんと起きてるのに、やっぱりまだ早かったんじゃぁ無いかしらぁ。
「でもぉ、スキルは封印してるのでぇ、少しでも身体の使い方を覚えないとねぇ」
緩やかに歩き、倒れて居るままの白瓦の頭を狙い、軽く──『ほぁ?』全体重を乗せて踏み込む!!
────ドンッッッ────
「あらぁ? ちゃんと起き上がれましたねぇ、偉い偉い」
「おまっまままマジで殺す気でしゅか!? 床っ床に穴が空いてるでしゅよ!?」
「あっぶね……八代ママ、何か日に日に強くなってるよなぁ」
「夜に地下で訓練してるみたいだよ。私達には絶対見せてくれないけど、熊や虎と組手でもしてるのかな……」
「ふふふっ、熊さんや虎さんとならぁ、私が小さい頃に良く遊びましたよぉ」
懐かしいですねぇ……熊さんに抱き付いて腰を圧し折ったり、動物園の虎さん達の餌を奪ってからぁ、良く鬼ごっこしてましたからねぇ。
今度動物園に遊びに行こうかしらぁ。
「熊や虎と遊ぶって何でしゅか!?」
「八代ママ冗談だよね!?」
「俺、冗談のつもりで言ったんだけど!?」
あらあらぁ、熊さんや虎さんぐらい倒せないとぉ、私には一生、敵いませんよぉ。今度は熊さんとぉ、組手させようかしらぁ?
「はいはい、休憩は終わりですよぉ。それじゃあ続きですねぇ──あらぁ、地震?」
施設が少しだけ揺れている。
ほんの少し──それこそ、水面に木の葉が落ち、緩やかな波紋を描く様な、ほんの少しの揺れ。
「……気味が悪いですねぇ」
「隙ありだ八代ママ! (パシッ)うげぇっ、これも駄目かよ!」
御堂君が拳を突き出して来たけどぉ。まだまだですよぉ。お腹を狙うのならぁ、ちゃんと腰を入れないとぉ。
掴んだ腕をそのまま引き付け『うわっ!?』腰を低くして、肩を御堂君の腹に添えて、勢いをつけ──投げて床に叩き付ける。
べキィッ──「ぐへぇっ!?」
「うひっ、あいつ死んだでしゅ!?」
「白瓦ちゃん、あれぐらいじゃ死なないよ」
そうですよぉ。
ちゃんと頭を打ち付けない様に投げましたから、『ぐぅぅぅ背中がぁぁぁっ』痛みでのたうち回る程度ですぅ。
「それじゃぁ今日はここまでぇ。あとは各自に自習ですねぇ」
「おっ、終わったでしゅ! ゲームの時間でしゅ!」
「白瓦ちゃん! 自習だからね!」
「ふっふふたりともぉぉぉ、助けてっっっ」
さてぇ、さっきの地震……少しだけ調べてみようかしらぁ。
「えっとぉ、震源地はどこかしらぁ、ぽちぽち」
今だに機械を触るのは慣れないわぁ、下手に触ると直ぐ壊れるしぃ。何回も壊しているからぁ、総務の人に怒られるものぉ。
震源地は……あらあらぁ、日本だけじゃ無くてぇ、世界で同時刻に起きたみたいねぇ。
「予兆かしらぁ……まぁ、分散してくれた方がぁ、あの時の様な事にはならないからぁ、助かるんだけどぉ」
またぁ、終末の刻の様な大災害となればぁ、今度こそこの国は沈むものねぇ。
「それでもぉ、何処かで湧き出たらぁ、大惨事になるわぁ……」
特に不味いのはぁ、『知性』有る魔物よねぇ。
一匹だけでもぉ、機動隊だけじゃぁ潰されちゃうものぉ。
少しだけぇ、見回りを強化しなくちゃねぇ。




