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EP.21 愛する人に想いを届けに


 ※【ミノ肉食べたら異能に目覚めた危ない少女の日常生活】の続編になりますので、話の流れが分からない方は、そちらから是非お読み下さい!!




 先輩は熱血漢だった。

 私も含め、後輩達から信頼され、局内部での評判も良く、全てにおいて順調だったに違い無い。

 唯一、家庭を持っていなかったので、狙ってる後輩は多々居た。

 私もその一人だ。


 だけど、ある時を境に、先輩は変わった。

 先輩は事ある毎に、『超能力は有るんだ! 俺は見たんだ!』などと言う妄言は吐き散らし、どんどん周囲から人が離れて行った。

 飲み会の席でも言うもんだから、とうとう部下の子が、『じゃあ何か証拠はあるんっすか先輩! 毎回毎回同じ事言ってっ、正直うざいんっすよ!』とキレてしまった。

 そして先輩は、局を辞めてしまった。

 見送りに来たのは二人だけ。

 私は何を言うべきか迷い、戸惑っていると、先輩に頭を撫でられた。

『ははっ、これで気兼ね無く追えるな。おっと、これはセクハラになるのか?』

 私は先輩の顔を見た。

 先輩の眼は、死んでいなかった。


 あれから五年が経った。

 先輩は局を辞めてからも、色々と仕事の相談に乗ってくれた。時折、他局が掴んでいないスクープを、安く譲ってくれたりもした。

 その甲斐あって、私はこの歳で、内部監査室の係長にまで昇進した。

 若手の中では、一番の出世頭だ。

 ぶっちゃけ有り得ない人事である。


 そして、久しぶりに先輩と呑もうと思い、メッセージを送った。

 先輩から直ぐに返信が来たけど、内容がおかしかった。そのメッセージの内容が、『華ノ恵将勇を追え』の一文だけ。

 

 嫌な予感がした。

 私は直ぐに、先輩に電話したが繋がらず、急ぎその足取りを調べた。

 この数年で培った人脈を使い、直近の先輩の行動を追った。




 その数日後、一通のメッセージが届いた。

 差出人は、『S』と呼ばれる情報屋。

 どの様にしてか、国、議員や企業のトップ、密売組織、人身売買などの情報を持つ、不気味な存在。

 度々情報を買ってはいるが、今回は何も依頼していない。

 ただの人探しなのだ。

 そう思い、そのメッセージを開いた。

 そこに文章は無く、ただ一枚の画像が、添付されていた。


 その画像を見た時、首を傾げた。

 

 ただ空を撮っただけの画像。

 どこの空かは分からないが、端に瓦礫が見える事から、ゴミ処理場なのか。

 いや、何か写っている。

 画像を拡大して見ると、人の様にも見えなく無い。

 学生服だろうか、何故『S』がこんな画像を。


 華ノ恵将勇、Sからの画像、端に写る瓦礫、空に人らしき姿────先輩の言葉が、頭をよぎった。


『超能力はあるんだ! 俺は見たんだ!』


 私は急ぎ、局内の情報室に向かい、送られて来た画像を調べた。

 拡大、修正、補正、その作業は直ぐに終わり、出来上がった画像を見てみた。

 空に人が写っていた。

 画質が荒く、ぼんやりとだが、確かに人だ。

 しかも一人は学生服を着ている。


 ここは、この場所は戸ノ浄市郊外だ。

 先輩のメッセージに『華ノ恵将勇を追え』と書いていた。

 華ノ恵将勇を知らない人は少ないだろう。

 何せ国を建て直した英雄だ。

 しかし一方で、何故か放置している場所があった。

 一時期話題になったが、単純な『資金不足』と言う話で収束した。

 先輩は見つけたんだ、『超能力者』を。



 

 先輩の連絡を待った。

 きっと、スクープを片手にうきうき笑顔で、『これが真実だ!』とでも言うのだろう。

 先輩にメッセージを送った。

 待っても返信は無かった。

 先輩に電話してみた。


『電源が入っていない為かかりません』


 私は不安で、夜も眠れなかった。




 そして数日が経ち、ぼーっと局へ出勤した時、あの時先輩を見送った、もう一人の後輩が話しかけて来た。

 その後輩は、先輩の事が好きだった様だが、以前告白してフラれたらしい。

 その後輩に、何故か怒られた。

 物凄く怒られた。

 どうやら私に不満が有る様だ。

 鏡を見てみろ?

 そう言えば、ここ最近身なりを気にしていなかった。お手洗いついでに、見てみるか。

 

 鏡を見て、ようやく気付いた。

 髪はボサボサ、肌はカサカサのお化け状態となり、頬はこけ、唇は荒れている。

 なによりも酷いのが、目元が真っ赤の何これ状態だ。

 寝ている間に擦ったのだろうか。

 そうじゃ無いな、自分でも分かっている。

 泣いているのだ、知らない間に。

 好きだったのだ、あの先輩を。

 そりゃあ怒られるわ。

 

 私は決めた。

 先輩から連絡が無ければ、自ら会いに行けば良い。

 大体の場所の目星は付いているのだ。

 戸ノ浄市郊外か、その近辺に先輩は居る。

 会社なんて知るか、溜まりに溜まった有給を全部使ってやる。

 だって、先輩と上手くいけば、寿退社という事になるから。

 

 この想いを、伝えに行こう。

 何処に居ようとも、必ず逢いに行く。

 どうか無事で居て、羽紙先輩。

 


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