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転生したらクズ男だった件〜夫婦になってからが本当の地獄!?編 隣村に現れた“謎の美人元婚約者”登場で波乱!?ミア、怒りの湯けむり鉄拳制裁!!

「ユウマ様〜〜。ついに見つけましたわぁ〜〜〜〜」


 朝。まだ鳥すら二度寝している時間帯。

 村の平和を切り裂くような奇声と共に、隣村からの来訪者が一人、俺の家の門をぶち破って登場した。

 煌びやかなドレス、腰まで伸びた金髪、目をハートにして突進してきたその女の名は――


「マリアンヌ・フォン・なんちゃら公爵家!?」


 俺は思わずベッドから飛び起きた。半裸のまま。


ミア「……説明しなさい、今すぐに」


 横では、すでに包丁を持って立ち尽くすミア。

 眉はピクリとも動いていないのに、額からは鬼のようなオーラが立ち上っている。

 背後に“業火”という漢字が見える。幻覚ではない。


「ま、待てミア! 誤解だ! これはあくまで昔の話でだな!?」

「過去に女と何があったかなんて今さらどうでもいいの。今、目の前で抱きつかれてたのは何?」


 正論が心に突き刺さる。致命傷である。

 

「おほん。こちらこそ初めまして、奥様。私はかつてユウマ様と婚約していた者ですの。

ふふっ、再会したからには……。離婚していただけます?」

「おいィィィ!!!? 勝手に婚約したことになってるうううう!!!」


 実はこのマリアンヌ、俺が前世で異世界転生する前、ブラック企業の契約書に押された謎のサインの効力で、「前世の借金返済の代償として婚約成立」という最悪の呪い契約が発動していたらしい。

 異世界に来ても追ってくる魔物よりも恐ろしいのは“法的拘束力”だった。


「なるほど……ユウマ、ちょっと一緒にお風呂入ろうか」

「えっ!? 今!? このタイミングで!?」


 そう、湯けむり。ここからが本番である。

 風呂場でミアは無言で俺の背中を流し始めた。だがその手はゴリラのような握力でタワシを持ち、皮膚を削り取る勢いだ。


「い、痛い痛い痛いミア!? これは拷問!? いや風呂!? どっち!?」

「愛の刑罰よ」


 そう言いながらミアは、俺の背中に「元カノ死すべし」と書かれた特製入浴タトゥーシールを貼り付ける。

 剥がすときに更なる激痛が襲う仕様である。

 

 その夜、マリアンヌは俺の家の外で野宿していた。


「私は諦めませんわよぉぉぉ……。ユウマ様は私のものですのぉぉぉ……」


 一方、俺は屋根裏に避難させられていた。


「ユウマ、明日も湯けむりタイムあるから覚悟してね」

「……生きて帰れる気がしねえ」


 しかしそれで終わらないのがこの物語。

 翌朝、村では大事件が起きていた。なんと村の温泉に怪しい盗撮魔物が出没したのだ。


「……タイミング的にお前だよな、マリアンヌ」

「ちがいますわ! それは別の変態ですのっ!」


 だが現場にはマリアンヌが用意した“ユウマ専用バスタオル(使用済)”が落ちていた。村中がドン引きである。


「ユウマ、お前の女関係地獄だな」


 エルドがボソリとつぶやいた。完全に他人事である。

 魔物は討伐されたがマリアンヌの執念は止まらない。

 その夜彼女は、ユウマとミアの寝室に忍び込もうとするも――


「甘いわね」


 待ち伏せしていたミアにフライパンで殴られ、あえなく再起不能。

 湯けむり鉄拳制裁が炸裂し、マリアンヌは翌朝まで温泉の底で煮込まれる羽目になった。

 翌日、村人たちはこう言った。


「やっぱりミアさん、最強だな……」

「ユウマさん、生きててよかったね」


 ミアは満面の笑みで言った。


「ふふ、当然よ。私の旦那様は私がしっかり躾けるから」


 ――地獄の新婚生活は、今日も笑いと鉄拳と誤解に包まれて続いていく。

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