転生したらクズ男だった件〜夫婦になってからが本当の地獄!?編〜(続き)
ある夜——。
「ユウマ、ちょっと来て。お風呂に湯を張ったはずなんだけど、水のままなんだけど?」
ミアがタオルを頭に巻きながら、片手には桶を持ち、仁王立ちしていた。
「え、マジで? オレちゃんと火入れたって!」
「薪、入れてないじゃん。むしろ水に氷魔石突っ込んでたよね!? お風呂が冷蔵庫になってたけど!?」
「……へへっ。 でも、サウナのあとは水風呂が定番だろ?」
「その前にサウナに入ってないよね!!?」
バシィィィィン!!!!!
桶が空を切り、俺の額にクリーンヒット。見事なノックダウンである。
翌朝。
「はあ……、これで今月だけで3回目のご近所謝罪ツアーだよ……」
ミアは手土産のクッキーを両手に抱え、村の家々を回っていた。原因? もちろん、昨夜のユウマの寝言大爆発である。
「おうおう! やめろ! そっちは元カノの名前だってばぁあああ!」
という魂の叫びを寝ながら村中に響き渡らせたのであった。
「……ミア、これは寝言じゃなくて心の叫びじゃ?」
「だったらなお悪いわっ!!!」
それでも、村人たちはミアの笑顔と手作りお菓子で即懐柔される。どこぞの無能クズ男とは大違いである。
「なんで私がこんなに頑張って、アンタが英雄扱いされてんのよ……」
ミアのボヤきは今日も止まらない。
◇◆◇
そんなある日のこと。
ユウマが家に帰ると、リビングのテーブルに見慣れぬ封筒が置かれていた。
「なんだコレ?」
封を開けると、そこには妙に達筆な筆文字でこう書かれていた。
『謎解きクイズツアーへようこそ! 当選者は夫婦で一泊二日の旅が当たります!』
「……ん? これ、怪しいやつじゃね?」
しかし、ミアは目を輝かせて言った。
「やった! 温泉旅行よ悠真! 二人で癒されましょ!」
「いや、絶対これ罠だって。ギルドの奴らが仕組んだオチとかさ……」
「行くの! 決定!!」
というわけで、半ば強制的にふたりは謎の夫婦旅行に出発することとなった。
◇◆◇
到着した先は、妙にラブホ感のある高級旅館。
出迎えたのは、まさかの旧パーティーメンバー・エイドと、元ツンデレヒーラーのメイであった。
「ようユウマ、来たか……。この『夫婦力テスト温泉』へようこそ!」
「なんでお前らがいるの!?」
リナが微笑んだ。
「ふふ、王国からの依頼でね。『クズでも結婚できる前例』を記録するために夫婦の愛を調査することになったのよ」
「言い方にトゲしかねぇ!?」
「それでね、この温泉には“真実の湯”っていう不思議な泉があるの。入ると、相手に抱いてる本音が湯気に文字で浮かぶの」
「待って待って!? 地獄の始まりすぎない!?」
しかし、ミアは楽しそうにタオルを持って脱衣所へ向かった。
「さぁ、ユウマ! 本音でぶつかり合いましょ!」
「俺、ぶつかり合うっていうより一方的に串刺しにされる未来しか見えねえ!!」
◇◆◇
温泉に入ると、案の定湯気に浮かぶ文字たちが恐ろしい破壊力を持っていた。
《ミア:こいつの顔を見ると炊飯器をぶつけたくなる》
《ユウマ:最近ちょっとミアの尻がでかくなった気がする》
《ミア:昨晩の寝言「金返せ!」はさすがに引いた》
《ユウマ:実はまだヒーラーのメイに未練が……いや何でもない》
「おい!! 最後の何でもないって何だオイ!?」
「えー!? 湯気が勝手に!? これは事故! 湯気のバグ!」
「バグならバグで修正パッチ今すぐ入れてもらっていい!?」
温泉タイムはまさに言葉のナイフが飛び交う戦場となった。
◇◆◇
そして夜。
「はぁ〜〜〜、疲れた……」
ミアが布団に寝転び、ユウマも隣にゴロンと転がる。
「……なあ、ミア」
「なに?」
「なんか、オレって本当にクズなんだなって思ったわ」
「うん、今さら?」
「ちょっとぐらい慰めろよぉぉぉ!?」
ミアはクスクスと笑った。
「でもさ、私はそんなアンタを選んだんだし……。後悔してないよ」
「マジで!? なんで!?」
「ツッコミ甲斐があるから」
「もっと他にあるだろぉおおおお!?」
それでも、そんなふたりの距離は少しずつ近づいていた——ように見えた。
◇◆◇
……だが、旅館の裏手で怪しい影が動いていた。
「ふん、ようやく隙ができたな……」
闇の中、妖しい微笑を浮かべる美貌の魔女。
「勇者の妻を、寝取るには……。今が最適」
彼女の名は、リリス。
かつてユウマが無意識にナンパしてフラれた魔女であり、地獄の恨みを晴らすため、着々と罠を仕掛け始めていた——!!