第3話 魔王討伐に巻き込まれたクズ男、生活費のために頑張る
「魔王が復活しました」
「うん。で、俺に何の関係が?」
朝のニュース(※王都の号外チラシ)を読んだミアが、神妙な顔で告げてきた。
けど、こっちは朝から焦げたベーコンと格闘してる身。魔王どころじゃない。
「王都が“勇者候補”を募集してるのよ。報酬は――」
「報酬は?」
「金貨1,000枚、城下町に豪邸一軒、国からの生活保障付き」
「俺、行くわ」
◆◇◆
【クズ、勇者試験に挑む】
そんなわけで、俺は“勇者候補選抜試験”に参加することになった。
受験者数:5000人
内容:バトル、知能、モラル、カリスマ性……etc
俺:クズ、ニート歴5年、職業・ヒモ志望
「無理ゲーじゃね!?」
だが、奇跡は起きた。
「この試験、“女性陣の人気投票”により、15名を通過とする!」
「通ったァァアァ!!!?」
なぜか女性陣の投票で2位通過した。理由は不明。
(※なお1位はリアナ、なぜ候補に混じってるのかは謎)
◆◇◆
【試験:魔物討伐】
「さあ、魔物を討伐して名声を上げなさい!」
「いや待て! 俺まだ武器持ってねぇ!!」
そのとき、現れたのは――
「……ユウマ。これ、使いなさい」
ミアが、愛用の「対ドラゴン級特攻剣(重さ20キロ)」を手渡してきた。
「……これ、俺が使ったら自分の腰やっちゃうやつだよね?」
「大丈夫よ、気合で」
「体育会系かよ!」
仕方なく振り回すも――
「うおおおお!? 剣が飛んでった!? ……って、直撃して魔物倒れたァァ!!?」
偶然すぎるミラクル勝利により俺は“実力枠での通過”と勘違いされ、勇者候補に正式決定された。
――完全に事故なのに。
◆◇◆
【魔王城へ向けて出発!】
王からの命令により俺はミア&リアナとともに、なぜか3人パーティで出発することに。
「待って? 俺、ただの旦那なんだけど!?」
「生活費がかかってるんでしょ?」
「私はユウマの“最後の女”になってあげてもいいと思ってるの」
「いや、生きて帰れる前提で話して!?」
道中は、ひたすらリアナ vs ミアの修羅場バトルが続いた。
「今日のテント、ユウマと私が一緒に寝るのよ」
「はい? 妻の私を差し置いて?」
「……勝手に布団に潜り込むなァァァ!!」
「ぎゃー!! 引きずり出された!!」
「……はぁ、せめて夜くらいは静かに寝たい……」
(※結局、俺は外で寝袋だった)
◆◇◆
【中ボス戦:魔獣ケルベロス】
「うおおお、でっけぇぇぇええ!! 3つ首!? 魔獣!?」
「ユウマ、あんた囮になって!」
「囮って俺死ぬやつだよね!? 違うよね!?」
「大丈夫よ、“夫婦の信頼”があれば生き残れるわ」
「信頼っていう名の盾扱いじゃねーか!!」
だがそのとき、俺の頭の中に謎の声が響いた。
『……お前は、クズの中のクズだ。だが――』
『この力を貸そう。“クズスキル・開花”だ』
「クズスキル!?」
◆◇◆
【ユウマの新スキル:クズシステム発動!】
【スキル:逆ギレカウンター】
→ ダメージを受けると、自動で“逆ギレ”して反撃。相手は精神ダメージ。
【スキル:女の涙ガード】
→ 女性に泣かれると、自動で全能力が3倍になる(ただし1分限定)
【スキル:ヒモ覚醒モード】
→ 女性の援助があると全ステータスが上昇(援助=おにぎりでも可)
「なんだこのダメスキル群は!!」
だがこのスキルで――
「うおおおおお!! 俺は生活費のために戦うんだああああ!!」
見事ケルベロスを撃破。
ミアが泣いて、全能力3倍ブーストが発動したのが勝因だった。
◆◇◆
【帰還&報酬】
「お疲れ様です、勇者ユウマ殿。報酬の豪邸と生活費です」
「……やった、これで生活が……!」
帰還した俺はついに、ミアとの新婚生活の基盤を手に入れた。
が。
「さて――次は、魔王城ですね?」
「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」
まさかの“前哨戦”だった。
まだ終わってなかった。俺の戦い。
「じゃ、いってらっしゃい♡」
「いやいやいやいやいや!? なんで送り出す側!? お前も来る流れだったろ!?」
出発当日、ミアは玄関で手を振っていた。
なぜか荷物をまとめてるのは俺だけ。
「えっ、てかリアナは!?」
「先に魔王城に乗り込んで、"攻略済みの部屋"にしとくって言ってたわよ」
「もはやRPGのバグ技使ってるじゃん……」
というわけで、俺ひとりで魔王城へ突入することに。
完全におかしい。これ、死亡フラグ立ちすぎ。
◆◇◆
【魔王城:第一階層】
魔王城の門を開けた瞬間、現れたのは――
「ようこそ、クズ男。我が忠実なる手下たちよ、迎えよ」
バンッ!!
魔王軍四天王(自称)がずらりと登場。しかもなぜか――
「元・浮気相手1号〜4号!?」
どう見ても、俺が前世で地雷を踏んだ元カノたち。
「覚えてるわよ、あの日の“お前のクソ言い訳”」
「私、もう“許した”つもりだったけどねぇ?」
「私を捨てて、異世界でヒモ生活? 舐めてんの?」
「今度はぶっ壊してやるから」
「まって!? なんで俺、人生の因果律と戦ってるの!? 魔王関係ねぇよな!?」
◆◇◆
【VS.地雷四天王】
まさかの地雷ラッシュバトル!
第1の女:浮気相手と二股かけてたアイリーン(通称“ブチギレ姫”)
→ クズスキル「逆ギレカウンター」で辛勝。
第2の女:元ストーカーのメア(通称“影の嫁”)
→ クズスキル「ヒモ覚醒モード」(リアナの支援登場で勝利)
第3の女:記憶にない女(名前忘れた)
→ 名前を間違えて完全敗北→リアナの助けで逃走勝利。
第4の女:リアナ!?
→ 魔王軍に潜入してたフリしてたけど実はガチで裏切ってた。
「私、最初からユウマの“最後の敵”になるつもりだったの」
「うわああああ!? 修羅場がラスボス級になったあああ!!」
◆◇◆
【真魔王:まさかの○○】
最上階にたどり着いた俺の前に現れたのは――
「よく来たな、ユウマ。いや、“父さん”」
「え、俺、魔王の父親だったの!? クズDNAの進化系!?」
驚愕の事実が明かされる。
なんと、転生前に俺がソシャゲに課金してた謎の魔王アバターが、転生して成長しリアル魔王になっていた。
「父さんに捨てられた俺の恨み、今ここで晴らす!」
「ガチャに10万円使ってた俺が悪いのかァァァ!!?」
ここで、ついに最後のスキルが覚醒――
【新スキル:課金者の業】
→ 10万円分の課金をリアル戦闘力に換算。1ターンだけチート状態。
「行くぞ……俺の魂の10連ガチャアアアア!!」
──結果。
「うおおおおお! SSR3枚抜きぃぃぃぃぃぃ!!!」
「ぎゃあああああ!!? (魔王消滅)」
◆◇◆
【エピローグ:世界を救ったクズ】
「ユウマ……まさか、本当に世界を救うなんて」
「……別に、生活費のためだし? ヒーローとか興味ないし?」
照れ隠しで言ったけど、内心はちょっと誇らしい。
なんか……カッコつけてもいいかなって思った。
「ってことで、王様! ご褒美よろしく!」
「うむ、約束通り――」
「――新たな戦地に派遣だ」
「え、ちょ、話違くね!? 俺のご褒美どこ!? 豪邸は!? 生活費は!? 嫁は!?」
「あなた、もう一生働いて」
「地獄の始まりィィィィ!!」