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第1話 俺、転生してクズ男になりました☆

 目が覚めたら、そこは見知らぬ草原だった。

 晴れ渡る空。小鳥のさえずり。ほのかに漂う花の香り。


「え? なにこれ……天国?」


 だが数秒後、俺はすぐに気づいた。


「異世界かよ!!」


 そう、俺は気づけば異世界に転生していた。トラックに轢かれたわけでも、風呂で滑ったわけでもない。

 ただ、朝起きたら異世界だった。


「なんという雑な転生ッ……!」


 そんな俺の前に、いかにも“神様です”って雰囲気のローブ姿の男が現れた。


「ようこそ異世界へ。選ばれし者よ」

「いやいや、選ばれてる感ゼロだし! 選考基準どこ行った!?」


 神様ローブがダサい曰く、俺には特別な才能があるらしい。


「お前の魂には、圧倒的な自己中心性と、ギリギリの良心がある」

「何その矛盾したスペック!? ていうか褒めてないよな!?」


 どうやら俺はこの世界にとって非常に珍しい『クズ系』の資質を持つ転生者らしい。


「ゆえに、『クズシステム』を授けよう」

「いや、どんなシステムだよ!」


 説明によれば、俺がクズい行為をすればするほどスキルが成長するという。


【初期スキル】


・クズ魂……嘘が通りやすくなる


・無駄口の極意……どんな状況でも言い訳がひらめく


・ラッキースケベ率上昇……


「いや、最後のやつ明らかにギャルゲー寄りだろ!」


 そんなこんなで、俺――佐藤悠真さとうゆうま、元社畜、現・異世界転生者――は、異世界で新たなクズ勇者としての人生を歩むことになった。



 まず最初に向かったのは、冒険者ギルドだった。


「こういうのって、最初に行く場所って相場が決まってるんだよな!」


 中に入ると、いかにもヒロイン顔の受付嬢がいた。


「うわ、受付嬢が美少女! テンプレ来たー!」

「……いらっしゃいませ。冒険者登録でしょうか?」

「できればデート登録もお願いしたい!」

「は?」


 開始5秒で怒られた。

 それでもめげずに冒険者登録を進める。顔写真付きギルドカードのため、10枚も撮り直しをお願いしたら「やっぱりクズですね」と断言された。泣きたい。

 とはいえ、ステータス登録は無事完了。


【ステータス】


名前:ユウマ


職業:クズ勇者(仮)


レベル:1


称号:異世界のクズ/神の失敗作


「うん、なにこの称号のひどさ……」


 しかし俺はポジティブだ。異世界でも前向きにクズを貫く所存である!



 その後、ギルドで知り合った筋肉戦士エイドと、回復魔法使いの美少女メイと即席パーティーを組むことになった。


「お、これはヒロイン候補か!? よっしゃ!」


 調子に乗った俺は、


「この宝箱、俺が開けるぜ!」

→ 中身を勝手にポケットに突っ込む


「メイちゃん、君の癒し魔法で癒されたいな(物理的に)」

→ ビンタ


「報酬? あ、俺が交渉してくるよ」

→ 全額ピンハネ


 結果──


「ユウマ、てめぇ最低だな!」

「ごめんってば! 冗談だって! ちょ、剣はやめて!? 剣は!!」


 俺は見事に初パーティーから追放された。夜、宿屋の屋根裏でひとり星を見ながらつぶやく。


「……まあ、次からはバレないように気をつけよう」


 ──反省、ゼロ。

 だが、それが俺の異世界ライフの本当の始まりだった。


「くそっ、あの筋肉……マジで本気の剣振ってきやがった……!」


 前回の失敗(パーティー追放)から数日、俺・ユウマは反省ゼロで新たなパーティーを探していた。

 だが、どこに行っても俺の評判は地に落ちている。


「え、クズ勇者? 無理無理!」 「うちの猫にまで手を出したってマジですか?」 「ラッキースケベスキルって公害じゃないですか?」


 あのクソチュートリアル神、ろくなスキルよこしやがらねぇ……!

 そんな中、俺の目に飛び込んできたのは、一人で巨大なモンスター《グレムリン熊》と戦う女騎士。


「おおおっ……マジかよ、ひとりであの化け物相手に!? あの太もも、もとい剣さばき只者じゃねえ!」


 俺は即座に彼女に飛びついた。物理的にじゃない、比喩だ。


「そこのお嬢さん、助太刀いたしましょう!」

「邪魔するな!!」


 剣がギリギリで俺の鼻をかすめる。あぶねぇ!


「お、おいおい、助けに来てやったってのに!」

「ならモンスター倒して!」

「え、それは……ほら、体力的に……」


 ということでモンスターが疲れてきた頃合いで、ちゃっかりトドメだけは俺がいただいた。


「ふふっ、やったぜ……!」

「今の、お前じゃなくて私の手柄でしょ!?」

「いや、結果的に俺が最後だったわけで……パーティーってのは、助け合いが大事だよな?」


 その場で張り倒されかけたがなんと彼女・ミアが次の日、ギルドで俺にこう言ってきた。


「……あんた、弱いくせに逃げ足と口だけは達者ね」

「褒めてる!? それ褒めてるよね!?」

「試しに、一緒に組んでやってもいいけど。条件付きよ」

「おう、なんでも言ってみな! 金以外でな!」


 こうして俺は、ミアという女騎士とパーティーを組むことになった。ちなみに条件は「嘘をついたら即刻契約解除&顔面ビンタ」だった。


◆◇◆


 そして迎えた初クエストは、いかにも初心者向けな《薬草採集》。


「地味だなぁ……せっかくなら《魔王の城への単身乗り込み》とかにしようぜ」

「馬鹿か!? そんなの死にに行くようなもんでしょ!」


 ちなみに俺のクズ魂スキル《無駄口の極意》が発動しまくっていた。


「この葉っぱ、なんか似てるけど違う気がする……まぁ、細かいことは気にすんな」

「だから変な草摘むなって言ってんでしょ!」


 そして俺が適当に詰めた草、後日ギルドに出したら、


「これは便秘に効くどころか、3日は止まらなくなる劇物ですね」


 ギルドの薬師が震えてた。


「悠真……一歩間違えば死人が出てたわよ……」

「でも、あの薬のおかげでおばあちゃんが3キロ痩せたって……」

「1回死んでこい!!!」


◆◇◆


 それでもなぜかミアは俺とパーティーを続けていた。

 聞けばミアは元々名門騎士家の出で、親との確執で一人旅をしているとのことだった。


「なるほどなー。つまり家出中の箱入り娘ってことか」

「家出って言うな! これは修行よ!」

「はいはい、ツンデレ乙」


 俺の軽口にも、最近はビンタの威力が減ってきた。これってつまり、俺への好感度上昇ってことじゃない?

 調子に乗った俺は、ある日調子に乗りすぎた。


「ミアー、今夜、宿で二人っきりで《反省会》しない?」

「何を反省するのよ?」

「この前の風呂覗き未遂の件とか……」

「未遂じゃなかったじゃない!」


 俺、宿の裏口から突き落とされて全治3日。


◆◇◆


 それでも何だかんだでふたり旅は続いた。

 時にはミミック(宝箱に化けたモンスター)に騙され、時には《酒場の裏メニュー》で食あたり。


「クズ勇者、そろそろまともに働け!!」


 というミアの怒号が日課になった。

 でも、少しだけ……。ミアの怒鳴り声の裏に、笑い声が混じるようになった。


「もう……あんたといると、気が休まらないわ……」


 ミアのその言葉に、なぜか俺の胸がちょっとだけきゅんとした。クズなのに、最低なのに。

 なのに俺といることを受け入れてくれる人がいるって、不思議な気分だった。

 ……だが、そんな平和な日々は、長くは続かなかった。

 次の村で、俺の《元婚約者》を名乗る謎の美女が現れたからだ。


「お久しぶりね、ユウマ。あなたを探してたのよ……。ふふ、こんなにクズになってるなんて最高だわ」

「やっべ、地雷きた!!」

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