瓦礫、瓦礫、少女
瓦礫が大地を覆い尽くし、地が見えない。
まずはこの星の地面を拝まなければと、
重い 右腕 を持ち上げ、
払い、掴み取り、
ゴミ箱 に流し込む。
近くの星々に運良く液状のものを見つけた。
それを掬い上げ、火と煤で汚れた大地に
注ぎ込む。
多少マシになったかと思い、
腰を落とす。
奮発して買ったライターに、煙草。
いい匂いだ。
製造会社に感謝しなければ。
「おじさん人の家で煙草吸わないで。」
…
時が止まる。
腰を下ろした瓦礫の山から黒く、小さい何かが
腰から出ていることに気づく。
「…誰だ」
反射的に口にでる。
「おじさんこそ誰?」
誰。
この言葉になんの重みもないことを少し
悲しく思う。
「…俺が知りたい」
「何それ、名前くらいあるでしょ?」
そう名前、ほんとのものではないにしろ、
恩人からいただいた大切なもの。
「ライラだ」
「いい名前じゃん。私は永理。」
永理…
第17銀河の6番目の惑星に似たような名付けをする
星があった筈だ。
確か超新星爆発の影響で大規模な星越しをせざるを得なくなっていた。
運悪くこの星に逃げて来てしまったのだろうか。
こいつ以外は皆…
「…ねぇ!話聞いてる?ボケてるんじゃないの?」
「……悪い…それで、なぜここに?」
「星間旅行中にこの星の奴らに誘拐されたのよ。
艇ごと堕とされたせいで艇で生活せざるを得なく
なってたの。」
旅行だったのか。
予想が外れたな。
「そうだおじさん、私のこと養ってよ。
行く先ないんだよね。」
「無理だ」
俺はこいつを殺せない。
こいつに今どれほどの時間があるかも分からないのに、容易に還らせるほど馬鹿では無い。
「11,801,400,635,902年…」
…
時が止まる。
「そこらの星と同じくらい生きてるね。
私の8倍って考えるとすごいじゃん。」
俺が忘れていたものを完璧に言い当てた。
「何回でも死ねるじゃんいいなぁ。」
「お前はあと何回だ」
「…7回。」
少ないが、十分。
「おまえの要求を叶えてやろう」
星越し:星が死ぬ前に別の星に移り住むこと。
引越しの星版。