プロローグ
私はRPGが好き。
銃火器の方じゃなくて、ロールプレイングゲームの方。
もちろんゲームに出てくる銃火器なら好きだけど。
小中高と特にやることもなくて、青春をゲームに捧げた私が一番好きなジャンルがRPG。
現実とは別の場所。
時間も忘れて夢中になれる世界。
どんなゲームでも、プレイしてる間はその世界の住人になれる。
それだけで楽しい。
将来の夢とか、ない。
取り柄のない私が達成できる何かがあるとも思えない。
無難に地元の大学に進んでからも、就職なんて現実は頭の隅に追いやってゲームに明け暮れていた。
強いて言えば、ゲームの世界で暮らしたい。
開発がしたいとか、そういうことではなく。
あのワクワクする世界で、あの未知が広がる世界で暮らせたら、どんなに楽しいだろう。
レポートの提出を忘れるためにプレイするわけでもなく、就活から目を背けるためでもなく、ただあの世界で生きていけたら。
たとえ主人公でなくてもいい。
花屋のNPCみたいな立ち位置でもいい。
同じ街に居続けるとしても、現実よりずっといい。
お花を世話してたまにはサービスもしちゃうお姉さん、似合わないか。
それなら村娘Bでもいいかもしれない。
なんとなく村の青年と仲がよくて、話が進むといい感じになってるようなアレ。
恋愛とかよくわからないけど。
いっそカジノのバニーちゃんとかどうだろう。
誰に見せるわけでもないのに、育ちすぎた肩凝りの元も活かせるというもの。
いやいやいや、やっぱり恥ずかしすぎる。
RPGといえば賭場は定番なんだけどなぁ。
考えてたら眠くなってきた。
レベル上げもキリがいいし、寝ようかな。
流れるような手つきでセーブして、ベッドにダイブしたら部屋の明かりを消す。
怠惰な私がいつもしている無駄のないルーティン。
目を閉じても浮かぶのは明日はどこまで進めようかな、なんてゲームのことばかり。
意識的に追いやったレポートの提出期限がチラついたけど、気にしない。
ブルーライトで冴えた目も段々と瞼の重みを感じてくる。すると徐々に眠気もやってくる。
そうだ、ダークヒーローっていうのも悪くないかも。
勇者が誰かを助けるより、「信念を貫き通した悪」が人を助けた時の方が熱い......。
今度......ダークヒーロー......主人公のゲーム......探してみよう............。
私の意識はそこで途切れた。