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第52話 総力戦

 野外演習場はさながら戦場になっていた。

 まだ観客の避難が終わっていないけど、教導部隊の兵士たちは腐獣の動きを抑えこんでいる。状況を理解した教師たちも戦いに加わっているから、少なくともこの場の一般人に被害は出ないだろう。


「……なゼだ」


 魔族が呟く。その声は不愉快さを隠そうともしていない。


「貴様ラの技量が高いこトは認めヨう。だガ演習用の装備では十分ニ力を発揮できなイはずダ」

「確かにそうだろうな。演習用だったら……だけどさ」


 俺は魔銃を掲げてみせる。

 簡素な形状で、地味な黒塗りの演習装備。握りにつけた装置を操作すると、その形と色が変わっていく。

 効率的に機能を詰めた形と、鈍く光る銀色の魔銃。

 実戦用の武器を手に、俺はニヤリと笑って見せた。


「俺たちは最初から演習用の武器なんて使ってない。お前らとの戦いを見越して、実戦武器で昇級テストを戦ってたわけだ」

「なニ……?」

「俺たちが〈アダマス〉と当たるのは、事前にアオイと打ち合わせて決めていたことだよ。実戦用の武器で相手に重傷負わせずに模擬戦やるなんて、〈アダマス〉じゃなきゃ無理だし、アオイがいれば万が一もないからな」


 チラリとアオイの方を見ると、困ったような面倒くさそうな表情で俺を見ていた。……まぁ、無茶振りだったことは認める。


「そういうわけだから、俺らは実践装備だ。ここで虐殺なんて絶対にやらせない。お前とケリをつけて昇級もする」

「ぐ、ぐク……クククク……」

「……なにがおかしい」

「あア……獣を狩った程度でいい気になってイるお前らが憐レでナ」


 魔族の姿は人間に近い。その両腕がゆっくりと上がっていく。

 やがて肩の高さまで上がったそれら(・・・)が、メキメキと音を立てて裂けはじめた。


「……シロン、〈個人結界〉は突破される。〈付与魔法〉は速度上昇にしろ」

「承知いたしました」

「エテルの反応速度なら相手の攻撃に当たる心配は薄い。ただ接近時の反撃に注意だ」

「はいっス」

「ハトリは中距離から援護。銃剣で接近戦になる可能性を視野に入れてくれ」

「わかったよぉ」


 魔族の裂け目から何十本もの触手がゾロリとこぼれだした。

 魔族の固有武装〈触腕〉……鞭のように高速で動き、遠く離れた相手を一撃で粉砕できる規格外の白兵攻撃手段だ。

 だけど、その準備が終わる前に俺たちは攻撃方針の共有を終えている。


「いくぞ……アイツは俺たちで倒す!」


 号令をかけると同時に数本の触手が縦に振り下ろされた。


(初動は予想通り……だけど!)


 一瞬前まで立っていた地面に、長く深い裂け目ができている。まるで超巨大な刃物でも落下したかのような斬撃痕が〈触腕〉の威力を物語っていた。

 並みの〈結界魔法〉じゃ魔法士ごと両断されて終わりだ。

 さすがにゾッとしたけど、ビビって止まるわけにはいかない。


「はあぁぁっ!」


 間合いに踏み込んだシロンが、前進の勢いを使って斧槍を振り下ろす。魔族は束ねた触手で防御し、その数本が切り飛ばされた。

 が、厚い金属板を両断する刃はそこで止まる。魔族の肉体は普通の生物とは比べものにならない。それこそ幼少期に戦った〈森林熊〉とは強さのケタが3つくらい違う化物だ。


「ぐクくく……」

「前菜は気に入りましたか? では主菜をどうぞ」


 嘲笑を浮かべた魔族の目の前でシロンが武器から両手を離す。

 そのまま重心を落として半身を引き、肩の前で握った拳を……前へ。


 ドゴォンッ!


 轟音と呼ぶにふさわしい音が空気を揺らす。

 青紫の飛沫(しぶき)が宙を舞っていた。魔族の胸は放射状にひび割れ、その奥から体液が噴出している。

 地面すら震わせたシロン渾身の直突き(ストレート)は、魔族の強固な外殻を粉砕して肉体深くにまで損傷を与えていた。



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