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第50話 勝利の価値

 爆発音は何度も響き、その度に地面が揺れた。

 予想もしなかった事態に〈アダマス〉の生徒たちも戸惑っている。それでも陣形を乱さないのは、流石というべきだろう。


「……なぜ、誰が攻撃を? おもな戦力はここに揃っているはず……!」


 アオイの表情に焦りの色が浮かぶ。背後に視線を向け、クラスメイトに指示を出そうとするが……


「させないっスよ!」


 エテルが投擲(とうてき)したナイフが、陣形の間隙を抜けてアオイへと迫る。それは白金色の結界に阻まれたけど、アオイの動きを止めるには十分だった。


(〈アダマス〉の生徒たちは、一部がアオイの周囲を守り、残りは俺たちと入り乱れている。速やかに撤退して本陣の援護に行くことはできない……)


「すべて……貴方の作戦なのですか、ヴィオランス!?」

「ああ、そうだ。ここに集めたのは、アオイと〈アダマス〉のメンバー半分を足留めするための戦力だ。もちろん、突破できるなら御の字だったけどな」

「なら、私たちの本陣を攻撃してるのは? カーラさんとミジィルさんは防衛に回って、ロックさんはその支援のは、ず……」


 アオイが目を見開く。

 自分の致命的な勘違いを悟ったかのように。


「そうだ。カーラとミジィルは本陣の防衛。ハトリは本陣と俺たちの援護に入っている。ロックは魔法具の使用……と思ってるよな。アオイなら」


 アオイは俺たち〈カッパー〉クラスのことをよく分かっている。何が得意で、何が不得意で、どんな行動が最適解かを知っている。

 そして、その情報を活用することに躊躇(ちゅうちょ)しない。必ず俺たちの動きを読んだ上で、それを潰しにくる。


「ロックだけ単独で動かして、本陣を狙わせた。ありったけの攻撃魔法具を背負わせてな。アイツ、戦闘はからっきしだけど魔法具の扱いは上手いだろ?」

「無茶を、しますね……!」


 そう、無茶な賭けだ。

 アオイが本陣の攻撃を増員していたら、奇襲は間に合わなかった。

 アオイが本陣の防御を重視していたら、奇襲は成功しなかった。

 だけど、そうはしないと信じたから。


俺たち(・・・)が勝つ。そのために必要な賭けをしただけだ」


 爆発音が響く。

 本陣に戻ろうとする生徒をシロンの槍斧が狙う。

 アオイの結界がそれを阻む。

 そうしなければいけないから。


「シロン、貴方いま本気で……!」

「アオイ様なら止めてくださるでしょう?」

「くっ……あぁもう……!」


 魔銃からありったけの魔法を叩き込む。

 アルカが双剣で切り込み、その陰からエテルが奇襲する。

 シロンの斧槍が唸り、アオイの行動を止め続ける。

 きっと本陣ではミジィルとカーラが猛攻を凌いでいる。


 〈カッパー〉クラス全員が死力を尽くして、ようやく掴める細い勝機。


 ひときわ大きな爆発音が鳴り響く。

 突風で土の建物がビリビリと震えた。

 そして……


『〈アダマス〉クラスの拠点、破壊を確認! 模擬戦闘は……〈カッパー〉クラスの勝利!』


【魔法】で増幅された教師の声が、野外演習場に響いた。


「…………」


 喝采も歓声もない。

 観客たちは目の当たりにした光景に戸惑い、ざわざわと言葉を交わしている。


「おお~~い! ヴィオランス! みんな!」


 大きな声に振り向くと、ロックが走ってやってきていた。その服はボロボロで、ところどころ焼け焦げている。


「やったな、ロック……」

「ふざけンなよ、なにが『本陣は手薄だから1人でなんとかなる』だ!? 死ぬほどキツかったぞ!」

「そりゃ〈アダマス〉が相手なんだから当たり前だろ」

「だからってなァ……」

「まぁまぁ、いいじゃないか。ロックがやりきってくれたおかげで、僕らの勝ちだ! そうだろ?」


 アルカに背中を叩かれ、ロックは渋々といった様子で矛を収める。


「……見事です。こんな奥の手を持っていたとは。でも私、信用されていなかったのは少しショックですね」

「隠してたわけじゃねェ。ただ日頃からヴィオランスに、商品増やすために戦闘用の魔法具たくさん研究しとけって言われてっからよ。使い方は頭に入ってたってェ話さ」

「なるほど……私が見ていないところで、皆さんは努力していた。考えてみれば当たり前のことですね」


 アオイはフゥ、と小さく息を吐く。その顔には呆れたような、あるいは感心したような笑みが浮かんでいた。


「負けです。私たちは持てる力を尽くして戦いました。見事な勝利でした」

「……ああ、ありがとう。まだまだこれから(・・・・)だけどな」


 アオイが差し出した手を、俺は握る。

 〈アダマス〉の生徒たちから小さな拍手があがった。


 パチ、パチ、パチ、パチ

 パチ、パチ、パチ、パチ


「…………?」


 いや、それとは違う乾いた音が響く。

 空虚でおざなりな音は俺たちの頭上から聞こえてきた。


「まさか〈アダマス〉に勝つなんてね。担任として鼻が高いよ」


 見上げたそこには。

 二階建ての屋上に腰掛けヴィステ・キルヤナインの姿があった。


読んでいただいてありがとうございます!

死亡イベント、もう少し継続です。

襲い来る敵をヴィオランスたちはどう倒すのか?


「面白かった!」

「続きが気になる!」


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