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第46話 クラスメイト

「テメェ、なに考えてンだ!?」


 野外演習場の控え室にロックの声が響き渡る。

 メイドを除くクラスメイトたちは、ロックと同じような、怒っているんだか戸惑っているんだか分からない表情を浮かべていた。


「落ち着けって。あと服掴むのやめてくれ。シワになっちゃうから」

「これが落ち着いていられるかッ! いろいろありすぎて、もう俺ァわけわかんねぇよ!」

「話聞いてなかったのか?」

「聞いてたからこうなってンだろうがっ!」


 両手で頭を押さえて絶叫するロック。

 うん、この感じ。帰ってきたって気がする。


「ヴィオランス、学院長が言っていたことは本当なんだよね?」

「相手が〈アダマス〉ってことか」

「それもあるけど、君が自分の戦果を使って僕らの昇級テスト参加を推薦したってこと」

「ああ、そっちか。ぜんぶ本当だ」


 ロックに手を離してもらって、形が崩れたネクタイを締め直そうとする。

 すかさずシロンが寄ってきて手際よく整えると、ささっと戻っていった。


「……いや。いやいやいや、ヴィもシロたちも落ち着きすぎじゃない!?」

「私たちは事前に承知していましたから」

「お屋敷に戻る前に、ご主人ちゃんと相談したからねぇ」

「帝都に戻っていろんなところに書類を運んだのはウチっス」

「あ、そうなの……」

「で、でもだよ? その功績なら4人だけ試験パスして進級できたよね、たぶん」


 呆れた表情を浮かべるカーラに代わってミジィルが問いを投げてくる。


「まぁ、そうかもしれない。けっこう頑張ったからなぁ」


 〈原作知識〉を使って偵察部隊が出現するところに出て奇襲をしかけまくり、領地の兵士に1人も怪我を負わせずに相手を撤退させた。

 守備側に被害が出ると外交問題になって戦争の機運が高まるのだけど、先んじて潰すことで問題を大きくせず、「情報が漏れているぞ」と判断した相手は作戦を切り上げていく。


「とはいっても、実はアオイに頼んでオルスタ隊に手伝ってもらったんだ。だから昇級テストに間に合うよう帰ってこれた。俺一人の戦果じゃないよ」

「まぁ、ヴィオランスくんがそう言うなら、そういうことでいいけど」

「とにかく、俺はお前たちと一緒にテストを受けて昇級するって決めたんだ。イヤとはいわせないぜ」

「へっ……わかってンよ。結果的にお前に引っ張って貰うことになったが、元から実力で這い上がるつもりだったんだ。訓練は欠かしてねェ」


 ロックの言葉にクラス全員がうなずく。

 どんな経緯だろうと、チャンスは必ずもの(・・)にする。そういう覚悟は決まっているようだ。


「で、相手は〈アダマス〉なわけなんだが」

「現実が辛ェ」

「急に弱気になるなよ」

「だってアレだぞ? 学年最上位クラスだぞォ!?」

「だったら何だよ。俺らの実力は上級クラス並みだってオルスタ隊長も言ってただろ」

「まァ、そりゃそうだけどよォ……」


 不安そうな顔をしているのはロックだけじゃない。カーラもミジィルの雰囲気も、決して明るいとは言いがたい。


「……正直、僕も厳しい戦いだとは思う」

「アルカまで……」

「平均しても、〈アダマス〉と僕らの間には差がないよ。いや、僕らの方が上かもしれない」


 でも、とアルカは続ける。


「アオイは別だ。彼女がいるぶん、僕たちが不利だよ」

「……そりゃ、たしかにな」


 アルカの言葉は真実だ。

 ゲームでもアオイは最強クラスのユニット。特に防御と回復は帝国で随一と言っていい。

 しかも、俺との出会いから「我が道を()く」モードに入って自分を鍛え始めているので、もう現状でゲーム後半の強さに至っていると考えていい。

 加えて、俺たちの特訓に付き合っているから、全員の特性を把握している。


「ま、こうなるだろうなと思って事前にアオイとは話をしてある」

「え? じゃあアオが出ないってことも……」

「ないない。俺らの力を試す絶好のチャンスだって、やる気満々だった」

「だよねー。うん、自分で言っといてなんだけど、アオならそうだよね」

「……ん? じゃあヴィオランスは何を話しに行ったの?」

「ちょっとした打ち合わせだ。いいか、この試合はな……」


 俺はアオイとの打ち合わせ(・・・・・)をクラスメイトたちに共有する。

 話が終わると、全員青ざめた顔で言葉を失っていた。


「大丈夫、大丈夫。俺らならやれるって」

「おま……言ってることメチャクチャだぞ……」

「でも無理じゃない。だろ?」


 俺はみんなの顔を見渡す。

 アルカも、3人のメイドたちも含めて、こいつらの実力はよく分かっているつもりだ。

 それは〈原作知識〉じゃなくて、一緒に過ごした時間からくる確信だ。

 信じていると言い換えてもいい。


「頼む。これから起こることに対応するためには、これが一番確実な方法だ。みんなの力を貸してくれ」


 俺は頭を下げる。

 昇級テストのチャンスを代金に、危険な賭けに付き合わせることになる。「付き合っていられるか」と言われたら、引き留めることはできない。

 だけど――


「……わかった。ヴィにそこまで言われて、逃げるわけにはいかないし」

「うん。私もカーラちゃんと同じ。こうなったら、とことん付き合うよ」

「仕方がねェよな。頭上げろよ、ヴィオランス。お前の無茶ぶりは今に始まったことじゃねェしな」

「僕は最初から、どんなことでもする覚悟だよ。ヴィオランスの案、乗った」

「お前ら……」

「私は最初から覚悟の上です」

「ウチもウチも」

「わたしも、がんばるよぉ!」


 みんなの返事で胸がぐっと熱くなる。

 大丈夫だ。

 このメンバーなら、きっと一緒に乗り越えられる。


「ありがとう。絶対に勝つぞ!」


 ついに昇級テスト……俺たちの確定死亡イベントが幕を開ける。

読んでいただいてありがとうございます!

次話からついに昇級テスト開始。

vs〈アダマス〉クラスです。


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