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第九話『追放される チャラ男がそれを拾う』


「じゃあ、その子。うちの隊で貰っちゃって良いんだね?」


 唐突に今のやな雰囲気と無関係な程に明るい、のほほ~んとした声が響き、その大きなお鼻の隊長さんは、明らかに不機嫌さを増しました。


「ちっ! お前はどこにでも鼻を突っ込んでくんだな!? この銭キチ野郎!!」


 気分を隠そうともせず、団長さんはその声の主に振り返りました。他の兵士たちも、びくりと肩をすくめ、その声のした方向を向くのです。私も引きずられての注目です。


 カンテラの明かりに、ゆっくりとその姿を浮かび上がらせたのは、まだ若い一人の男性でした。

 髪は軽いウェーブがかかり、着ている物も結構お洒落かも。身ぎれいにしているのが、少し離れていても判ります。多分、人族の貴族じゃないかしら?

 育ちも良い感じがします。

 周りの兵士に軽く手で挨拶。のんびりと近付いて来ます。身分にあまりこだわらない方なんですね。

 ちょっと、かっこいいかも♪



「ふふん。今宵も、良い銭の香りがしたものでね」


 そう笑顔で語り、不意に右の掌から一枚の大ぶりなコインを取り出して見せると、それを指で弾きました。


 ぴいいいいいいいん……


 不思議な唸りをあげ、コインはキラキラとした光を帯びて高く高く舞い上がり、やがてすっぽりと彼の手の中に落ちました。寸分違わずに。

 それを、大きなお鼻の団長さんは、心底嫌そうな顔で睨みます。


「けっ! ここにゃ、金目の物なんざ、何も無ぇ! 非番の奴はすっこんでろ!!」

「なあ~に。ついでだよ。その子、良いんだろ? デカハナの?」

「うっせええ!! デカハナ言うな!!」


 遂には息もかからんばかりの距離で対峙する二人。

 まるで何かの舞台劇を見ているみたい!

 その銭キチさんは始終涼しい顔で、気楽そうに話しかけるのだけど、正に剣もホロロという感じ。

 デカハナさんは、ぷいっと振り返り、無視する事に決めた様です。


「じゃ、君。こっちおいで。明日から、第七に顔を出しなよ」

「あー、せいせいした!! 無能はさっさとあっちへ行きな!! そんな使えねぇガキぃ引き取るなんて、ホント物好きな奴だぜ!! おら!!  杭!!」


 サッとデカハナさんの傍らに兵士が近付き、白木の杭を渡します。そして、ハンマーも!


 え!? おっちゃんは、助けてあげないんですか!?


 私は思わず、銭キチさんを目で追いました。

 だって、これが物語だったら、普通罪の無い人を助けてあげるのがこの手の人の役所でしょ!?

 でも、銭キチさんは、その可愛そうな若い子を伴い、立ち去ろうとしています。

 その子に小さく何かを語りかけながら、ゆっくりと、周囲の兵士を見渡し、そして……


 え? ええ!?


 その時、何が起きたのか、自分でも良く分かりませんでした。

 でもでも、銭キチさんは、透明な私の事も見て、フッと小さく微笑んだ様に見えたの!


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