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第七十八話『この腹黒メスエルフめ!』


 人々がふって湧いた様な男女のやり取りに目を奪われてる最中、ラミアのシュルルは苦しい息に堪えながらも、僅かに離れた位置で、辛うじてまだ立っていた。



 くっ……色々と危ないところだったわ。

 ラミアでなければ、即死だったかも知れない。それくらい、この女エルフの一撃は殺意が感じられるもの。

 流石、何百年も生きてる長寿種ね! 他の人に判らない様に、えぐい事をして来るわ!


「もう一度言います!! 団長は女たらしです!!」

<<<おお~~~、パチパチパチ>>>


 何て事!? 喰いつき易いセリフで、すっかり場の注目をかっさらってしまったわ!

 でもキラキラさん、流石ね。全然動じないなんて、素敵……じゃなくてぇ~!!


「いや、照れるなあ~」

「て、照れないで下さい!!」


 ああ、どう差し引いても、たらしこまれてるのはあんたね? このメスエルフ! 耳、真っ赤じゃない!?


 周りのオス共は、そんな事を微塵も気付かないで、のほほ~んとこのメスエルフに見惚れてるわ。

 ま、それも仕方ない事かもね。


 煌めく豊かな銀の髪は腰までもあり、まるで流れる様。すらりと伸びた手足は人間のそれがとてもやぼったく見える程にしなやかで。ピンと伸びた長い耳は正にエルフ特有。少し切れ長の瞳はまるでアクアマリンだわ。そう、見た目その腹黒さを微塵も感じさせないのが凄い。


 それ程に、この腹黒メスエルフはスレンダーで美しかった。


 そう! 『スレンダー』で美しかったわ! 私とは違う、どちらかと言うとミカヅキタイプね。

 こいつ~。キラキラさんといちゃついちゃってぇ~! ずる……じゃなくて、酷い奴!

 よ~し!


 私の声と気配を、この腹黒メスエルフの左側に……


「ああ、ゼニマール様ぁ~!」


 腹黒メスエルフの左腕がひゅんと空振り、私はゆうゆうと反対側からキラキラさんに跳びついて見せる。左腕を抱きかかえる様に~、にやり。


「急に胸が苦しくなってしまってぇ~……」

「ん~? 急に? 大丈夫かい?」

「大丈夫じゃないですぅ~」


 ふと真顔になったキラキラさんが、またイイかも。


「あっ、この女ぁ~!」

「あん! 痛いのぉ~」


 猛獣の様に掴みかかろうとする腹黒メスエルフを、キラキラさんを盾にする様に回り込んで、わざと甘ったるい声を出すの。

 あら? でも、キラキラさんって結構腕が太くて、体付きもしっかりしてるみたい。一応、騎士団の団長さんだものね。それなりに鍛えてるなんて、素敵……じゃなくてぇ~!!


「私、胸が痛むのぉ~。苦しいわぁ~。あの、ここではなんですから、静かな場所で診て下さいませんかぁ~」

「え~? 仕方ないなぁ~。みんな、悪いけど……」

「団長! それ、悪い病気なんです! うつりますから! うつりますから! その醜い脂の塊を離しなさい! 離せ!!」

「や~ん。この人、目がつり上がっててこわ~い」


 わはははは! もうヤケだわ!

 何だかすっごくバカみたいなんだけど、でも、何だかすっごく楽しい~!

 こ~いうの、人間のお芝居とかで良く見るけど、実際やってみると何かイイ! キラキラさん、嫌だったら振り解くだろうし、という事は嫌じゃ無いって事だもんね!


 そんな私をあやす様に、キラキラさんたら優しくなだめてくれるの、素敵……じゃなくてぇ~!!


「まあまあ。彼女はエルフだから、目がつりあがって見えるのは仕方ないし、別に怖く無いよ。ね? そうだろ?」

「え~、怒ってる風にしか見えないわ~」


 キラキラさん、そう言って腹黒メスエルフの方を向いたから……べ~。


「ああっ!? 見てください!! この女、わざとですよ!! 痛いなんて嘘です!!」

「や~ん。このエルフ、何か変~。ゼニマール様ぁ~、こわ~い」

「死なす!!」

「これこれ。エンデ卿。市民を怯えさせない」

「でもでも~!」


 く~っくっくっくっく……苦しめ苦しめ。腹黒メスエルフめ!


 キラキラさんは、目をますます釣り上げて怒りにプルプルさせてる腹黒メスエルフを、優しくなだめるのでした。何て人格者なんでしょう、素敵……じゃなくてぇ~!!


「エンデ卿。話は後でゆっくり聞いてあげるから、今は副騎士団長として他の団員を率いて巡回を続ける様に。これは団長命令だよ。いいね?」

「うぐ……」

「復唱は?」

「くぅ~……はっ……ミハル・エンデ副騎士団長……巡回任務を引き継ぐであります……」

「よろしい。頼んだよ」


 にこぽん。キラキラさん、右手で腹黒メスエルフの肩を軽く叩くと共に、頬を二度もさすってあげる。と、たちまち奴はメスの本性を露わにして瞳をうっとりとうるませた。うわあ~。


「という訳で」


 くいっと、私の腰がキラキラさんに引き寄せられ、魔法がかけられたみたいに誘われるままに……え? えええっ!?


「行こうか?」


 ど、どちさ様まで!?


「はい……」


 あれ? 何か私の口から、妙にしおらしい声が……


 ちょっと。ちょっとちょっと! どこへ行くの? どこ? ちょっと、それは不味いんじゃないの~~~~!?



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