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第六十二話『お前、誰だ!?』


 実際、魔法に動作はあんまり必要じゃないわ。力や何やら、操作する対象をどうイメージで捉え、認識し、干渉し、操作するか。勿論、強力なものを操る際には、身体全体でイメージを投射した方が良い時もあるから、一概には言えないけどね~。


 その時は、正に全力投球って感じ?


 くすり。思わず口元から笑みがこぼれてしまう。


 子供らの、ぽかーんと見開いたお目目がしばしば。私がくねくねと小さなヒドラみたいに両手の指を操るものだから、その動きに吸い込まれてしまうみたいじゃない?

 ま、こうやって心の隙を作るのも、大道芸人や詐欺師の類から、スリ、盗人、え~っと……要は人をだまくらかしたりする連中の常套句みたいなものだから。私の場合は、この子らの心を盗むって感じかしら?



「ほ……え……?」

「何?」

「えと……えっ!?」


 私がピタリと手の動きを止めたものだから、ちょっとの間、何が起きたか判らなかったみたい。


「えっ!?」

「おおっ!!?」

「あああ!」


 たちまちみんな、左右に顔を巡らして叫び出す。うぷぷ、可愛いものね。


「お、お、お……」

「お前、誰だ!?」

「誰よ!?」

「誰誰!?」

「みんな、どこ行ったのー!?」

「オレだよ! オレオレ!! それより、お前だれだー!?」


 わんと裏路地に子供たちの甲高い声が響き渡り、慌てて耳を塞いだわ。

 みんなで、どこだどこ行った? 誰だ誰誰だ? 俺だ俺俺! てな具合で。


 そう。私、全員の顔を変えてみました。

 今まで出会った事のある大体似た様な背格好の子供の姿をお借りして、ちょいとすっぽり被せた感じ?

 喋れば当然、同じ様に顔が動くし、目の動きなんかも連動するわ。でも、声はいじってないからね~。ほ~ら……


「あれ? ……お前か?」

「その声は!?」

「オレだ! オレオレ!!」

「あっれ~!? どうしたの、その顔!?」

「そういうあんたの顔だって!」

「あははは、変~!」


 今にも取っ組み合いの喧嘩になりそうな勢いだったのが、目の前の見知らぬ相手が聞き知った声を叫んでいる事に気付き出し、次第に互いの変化を好奇心に任せていじくりあったり撫で合ったり。わいのわいのキャッキャと遊び出してしまう。ま、判るわ~。


 でもね。


 パンパン!


「はいはい! 注目ぅ~!」


 私が手を叩くと、子供たちは、ハッと息を飲んで見返して来たわ。

 思わず、ふふふっと笑みが漏れちゃった。

 色んな感情がふわっと、まるで穏やかな昼間の風を全身に受けたみたいな感じ。


「どうかな? 少しの間だけど、別人になった気分は?」

「これって、元に戻るのかよ!?」


 中でも一番背の高い子が、ずいっと半歩前へ出て聞いてきた。


「戻るわよ。変わって見えるのは、ほんの少しの間だけ。で、その間に、一緒に市で買い物をしようって訳」

「「「「「「おっお~……」」」」」」


「でも、他の人から何かを盗んだり、勝手にお店の物を持って来たらダメよ~。約束守れるわよね?」


 私は驚く子供らに、自分では魅力たっぷりと思える笑顔でウィンク。ね? とってもチャーミングでしょう?


「「「「「うえ~!」」」」」

「が~ん……」


 ちょっと酷く無い!?



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