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第二十七話『楽しい楽しい空き物件巡り』


 馬車を巡らせ、元来た道を引き返すと、次第に人の喧騒が戻って来ました。

 鋳掛屋さんがしょい棒担いで館を出入りしていたり、物売りが道端で小間物を商っていたりと、昼日中、街の人々は声を出し合って各々の小さな商いに励んでいます。


 私の隣に座るハルくんは、ふと目を細め、この光景を見渡す様にして、それから私へと目線を泳がせて来ました。


「この辺は、暗黙の了解って奴で、自由に商いをしている人が多いんですが、お店を構えるとなりますと、きちんとギルドに加入しなければならない決まりなんです。勿論、この街の中だけの決まりですが」

「伺ってます。何にでもギルドがあるんですってね?」


 私は風に遊ぶ麦わら帽子のつばを、片手で押さえるフリをして、そんなハルくんを少しだけ眺めては目線を前へと戻します。

 何と言いますか、誠実が服を着て歩いてるみたいな、そんな不思議な感覚です。

 ペテン師や詐欺師はこれまで大勢見て来ましたから、そういう人が匂わせる空気が全くしないというのは、それだけで尊い事なんですね。まぁ、キラキラさんみたいに、例外もありますけど~。


 そんな私の思惑に気付いてか、気付いていないのか、ハルくんはとつとつと街の話を聞かせてくれています。


「はい。ああいった抜け穴はあるにはあるんですが、そうなると今度は地回りのヤクザ者が仕切っていたりと、皆さん大変らしいです。かく言う代行業も、そこかしこに挨拶周りをしておかないと、後で何を言われるか分かりません。シュルルさんも、お気をつけ下さいね」

「分かりました。ありがとうございます」

「大丈夫大丈夫~。シュルル姉~なら~、片手でちょいよ~」

「あははは、ジャスミンさんは面白い方ですね」

「ふむ。確かに突き抜けてるで御座る」

「それ、褒めてる? それって褒めてるよね~!? きゃは!」


 ぐぐ……まじめな話をしてるのに……

 どうしても口の端がぴくぴくしちゃう! おまけに尻尾の先で、私の背中をぺしぺししてくるし~!


 私はコホンと咳払い。ちょっとだけ澄まし顔で、ちょっとだけ嗜めます。


「ジャスミン。少しは慎みってものを覚えて頂戴ね。お嫁に行けなくなるわよ」

「そうしたら~、ハルくんが貰ってくれるぅ~?」

「え!? ぼ、僕ですか!? いやっ、そのっ、急に言われましても!」


 またもや、どさくさに紛れて抱き付いてる! しかも、結婚の申し込みまで!? あなた、自分がラミアだって判って言ってるの!?


 後ろからギュッと抱きしめらて、ハルくんも顔真っ赤だし!


「ジャ、ジャスミン。冗談でからかっちゃいけませんよ。ほ、ほら。謝りなさいな」

「あ、あはははは。いえ、良いんですよ。これくらい」

「じゃあ~、お仕事の後で、もっときちんとお話しましょ~」

「ふうむ。これくらい強引に行かねばならぬので御座るか~」


 ミカヅキも腕を組んでうんうんと頷きながら、ひたすら感心ばかりしてないで、この子を押さえておいて頂戴よ!

 目で思念を飛ばすけど、どうも一つの境地に達してしまったらしく、ミカヅキったらにこぽんと手を叩くの。


「いや、シュルル姉。商売を始めるより早く、こんなに一人売れてしまうなんて、これはめでたい事で御座るなあ~」


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