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第二話『初めてのブラックサン』


 あれは、私が初めてこの港町ブラックサンを訪れた夜の事でした。


 興奮した私は、一緒に来た二尾の姉妹を馬車の留守番にして、夜の街へ忍び込む事にしたの。だって魔法で姿が消せるのは私だけという事もあったから。

 でも、それが、あんな事になるなんて……




 街の城壁は、とても冷たくて気持ち良かった。

 夜の街に忍び込もうとした私は、魔法で姿を消して、背中に小さな背嚢一つ、右の手首に愛用の魔法のスリングを巻きつけ、腰にその弾を入れたベルトポーチといった軽装で挑みました。

 普段、私たちは裸なの。

 勿論、ダンジョンに挑む時なんかは武装するし、狩の時も軽めの革鎧なんか着ちゃうけどね。


 古い胸壁の石組みを、長い下半身を押し付ける様に少しずつ登ったわ。

 胸壁の上には、見張りの兵士が居るから、慎重に、音を発てずに、スネイキーにね。


(ふわあ~……)


 胸壁の上へ登り切ると、そこから人間の街が、夜の街が一望出来た。

 動物の巣穴特有の、汗や糞尿混じりの動物臭。それが潮風にないまぜになってこの高さまで届いて来る。

 この近辺で最大の街、カラシメンタイコ公国の公都ブラックサン。

 遠く城の高い塔が闇の様に星明りをくり抜いてそそり立ち、眼下には青白いいびつな影がでこぼこに広がっている。


(流石、数万人都市! 家がびっしり!)


 こんなに家が文字通り林立しているのは初めて!

 人間の村や町は、実は初めてじゃなかった。

 遺跡巡りしている時に、たまに立ち寄っては食料や水を補充したから。

 一応、人間の変装をしてだけど。夕暮れに紛れ、ロングスカートで尻尾を隠して。

 今は幻影魔法を覚えたから、変装なんてしなくて良くなったけれど。


 この街に来たのも、荒野で野営地を経営していたら、人間の行商人が街道をショートカットしてたまに来てたから。

 そこで狩人の女房のふりをして熟成させた生ハムなんかと物々交換していたら、いっその事街で肉屋をやらないかと誘われたのよね。

 早速、紹介状を書いて貰って、教えて貰った代行屋さんと手紙でやり取りをして、準備が整ったところで、少し前に到着したって訳。


 野営地の経営は、一番のおちびさんにお任せしちゃった。

 まぁ、姉妹は私含めて17尾も居るから。後釜を据えるのは簡単でした。

 魔法で守られた安全地帯だから、いくらおちびちゃんだって大丈夫大丈夫♪


(さて、問題はこっちね!)


 どこから見て回ろうかと、好奇心に眼を輝かせている私。

 すぐ隣りでは、街の兵士らしき武装した若い男性が静かに立っている。

 こうしていると、彼の心臓の鼓動が聞こえて来る様。

 たくましく、しっかりした熱い鼓動が。


(ああ……何て美味しそうなの……)


 好奇心と食欲、二つの欲望が私の中で鬩ぎ合う。


 そう。私はラミア。生き血を好む荒野のモンスター。


このお話は「カクヨム」で投稿した作品を手直ししたものです。

毎日一話ずつ更新していく予定でおります。

どうぞよろしくお願い致します。

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