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第十三話『前門の虎、後門の狼?』


 同時に、ぞぞぞっと私の下腹の下を、地の精霊たちが歓喜の声をあげて駆け抜けて行きました。

 何これ?

 目の前にはキラキラ銭キチさん。

 そして、後ろの……

 私は、恐る恐る背後に現れた気配へ目を。


 私、一つ勘違いしていました。

 オーク鬼って、一般には地獄の獄卒。冥界神の眷族が地上に出て来た連中だと思ってたの。でも、豚やイノシシって、普通大地母神の眷族なのよね。


 何、こいつら?


 そこに立っていたのは、まさしくさっきのオークロードかオークキングなデカハナさん。

 全身に潮風を受けて、ばたばたとマントを羽ばたかせ、薄毛を逆立てて。

 でも、普通のオークとは違ってた。

 オークは死の精霊をまとうけれど、デカハナさんに集うのは、地の精霊たち。何かの力で無理矢理縛られてとか、そういうチンケなのじゃない。

 それは、一言で言うならば『みんな大好きデカハナさん』状態。

 あ、地の精霊限定でね! 他の精霊たちは、みんな銭キチさんに集まってる。

 さっき、力が入らなかった訳が判ったわ。


 デカハナさん、私の受けてる加護、全部ひっくるめて持ってってたんだ!


 つまりアレね!


 寵児って奴!


 たまにいるのよね~。

 森や荒野で、ヌシみたいなのが。

 精霊の加護や神の加護を一身に受けて、他の生き物を超越しちゃってる存在って奴?

 万が一って言葉があるけれど、万人に一人そういうのが居ると考えたら、うん万人都市なら何人かは居るって事かしら?


 どうしよう。下手に動けないわ。

 前と後ろ。前門のキラキラ。後門の豚さん?

 何でか透明の私をバッチリ認識している!


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


 さっきから風音が本当に凄い!


 まるで大地が揺れてるみたい!


 特に背後のデカハナさんからは、色んな意味で身の危険をヒシヒシと肌で直接感じるわ!

 さっき、ほっぺに鼻をスタンプされちゃったからかしら?

 もし捕まっちゃったら……アレ以上の事をされてしまいそう!!


 いや~ん!


 あまりの恐ろしさに、じりじり両手を広げてにじり寄って来るデカハナさんから目が離せません。そのげへげへっての、やめてくれませ~ん?


「逃がさねぇぞ、げへへへへ」


 わわわわ、ぞわぞわするぅ~!

 見えて無い筈なのに、そんな目つきでこっちを凝視して来るなんて。

 これが見えていたらと思うと、卒倒しそうです。


 え? 冒険者相手に散々やらかして来たじゃないか? ですって?

 そりゃあ、命を奪いに来る相手には全力で反撃するのは当然じゃないですか?

 そっちが狙いの相手も散々いましたけど、大体そういうのは弱っちいの! デカハナさんは、なんというか、こっちのパワーを吸い取ってパワーアップしてくる超絶やっかりな相手なんです! いわゆる天敵って奴?


 すると突然、ちゅい~~~~んって傍らの地面で弾け、キラキラした何かが飛んで行くじゃないですか!?

 そのキラキラに、私もデカハナさんもびっくりして、ハッと息を呑みました。嫌ですね。何かタイミングぴったりで。


 そのキラキラ。弧を描いて大きく上に跳ねたと思ったら、銭キチさんの右手にすっぽりと収まるの。

 キラキラって見えたのは、たくさんの精霊たちが戯れていたから。

 みんな嬉しそうに、彼の元へそれを運んで行くの。

 何かな~って思って、魔法を切ると、それは一枚の大きな銀貨。間違いなく、何かの魔法の品ね。


「あ、あっぶね~なあ!! この銭キチ野郎が!! 俺も居るんだぞ!!」


 デカハナさんは、月明かりでも判るくらいに、顔を真っ赤にさせて怒鳴り散らします。この激しい風の中でも、はっきりと聞こえるくらいに。

 でも、当の銭キチさんは、相変わらずの涼しい顔。


「ダメダメ。僕が先客なんだから」


 私を挟んで、デカハナさんと話をしてるの?

 それとも、私に対して言ったの?


 何だか訳わからなくて、頭が混乱しそうです。

 ただでさえ、今夜は変な遭遇に驚いたのに、今はその人間びっくり箱のサンドイッチ伯爵です! パンにはさんで、ぺろりと食べられちゃいそう!


 そう思った瞬間、銭キチさんの気配が。

 これは殺気と違うけど、私に吹き付けて来る何か!?


 咄嗟に、手首に巻いた魔法のスリングを振り回し、コンマ数秒でブリット、弾丸を装着! その気配に合わせました!



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