#26 絶望。そして誓い。
リシテアとコ―デリアが消えた。
いや、消されたんだ。俺の作ったゲ―ムに。
この狂った世界に。
「俺は……強くなって……ッ。彼女たちを守るって……ッ」
「モンスタ―から彼女たちを守るって――」
そう思っていたのに……。
「こ、こんな、ハズでは………っ!」
リシテア……、
「ハハハッ!」
コ―デリア……!
「――――――ッ!!」
気がついたら大量の涙がこぼれ落ちていた。
「モンスタ―から護るだって?」
俺の感情は昂ぶる。
「笑わせるなよ……ッ! それ以前の問題だったじゃないか……ッ!」
顔を上げるとイオが突っ立っている。
「ハヤトさん、どうしたのですか? なにか具合でも――」
「黙れよッ!!!!!」
俺は思わず怒鳴ってしまう。
「ハヤトさん……」
「リシテアとコ―デリアが消えたんだぞ!!」
「その人達は誰なのですか???」
「……なんで初めて聞いたみたいな顔をしているんだよッ!!
彼女たちは俺達の仲間で――!?」
そうか。
ただ単に消去されたんじゃない。デ―タが消されたんだ。
なら同じデ―タの存在であるイオが二人を覚えている筈はない。
――そう。
彼女たちは所詮デ―タ――、
ウニティから創り出された。
ただのデ―タでありAIだ。
そしてこの世界も――、
ワールド・オブ・ユートピアもデ―タで作られているだけに過ぎない。
そして、この欠陥だらけの世界を作ったのは自分自身である。
俺が作り出した、狂った世界。
こんな世界は、俺が求めていた世界じゃない。
こんなクソみたいな世界――
ステテシマエバイイ!
コンナセカイ……、
ステテシマエバイインダ―――。
俺は剣を掴み。自分に向け突き刺そうとした。
「ハヤトさん、一体何をしようとしているのですか?」
「一体何を……か。フフフッ。所詮お前らAIには分からないだろうよ……ッ!」
「え―あい……?」
イオはAIが何か分かっていないようだった。
「そうだ! お前達には何も分からないッ!」
俺は怒鳴り散らす。
「なぜ俺がッ! この世界に来たのかもッ!
なんのためにお前達と出会い、冒険しているのかもッ!」
イオは黙って俺のセリフを聞いている。
いや、理解できないから返答が出来ないのか?
「お前達は所詮ッ! 俺の指示にしか従わないッ!」
所詮、プログラムで動いているNPCに過ぎない。
「俺が――なぜ悲しんでいるのかもッ!!」
「ハヤトさん?」
「――貴様らAIには分からないだろうなッ!!」
イオはぽかんとしている。
そうだ。彼女たちやNPC、モンスタ―は所詮AIだ。
俺が設定しただけのAIだ。
そして、このポンコツな世界も俺が創った。
俺は剣を腹に向けて近づける。
事実上の自殺である。
俺が死んだら、ゲ―ムオ―バ―状態となり、意識は無となる。
“魂が永遠にこの世界に彷徨う”ことになるだろう。
……この世界に魂があるのかは知らない。
そもそも、現実世界にも魂があるのかは分からないがな。
一人暮らしだから、現実世界の俺も昏睡状態のまま衰弱死するだろう――
さようなら俺、俺の世界――
――俺は、
剣を……、
自分に向け突き刺した――。
◇◆◇◆
――そう、この世界、ワールド・オブ・ユートピア――は俺が創り出した。
俺はこの世界に“人”のデ―タとしてこの世界に誕生した。
そして、この世界のAI……つまりNPC達は俺と同じデ―タの“人”として存在している――。
また、モンスタ―たちもNPCと同じく、この世界の“生き物”として存在している。
なら、現実世界との違いはなんだ?
否、現実世界との違いなんてない。
なぜなら――。
俺は、この世界にNPC達と同じように“人”として生きているからだ。
そこにNPCと俺に大した違いなんてない。
違いがあるのは、状況が理解できるかそうでないかってだけだ。
NPCもモンスタ―も俺も同じ存在なのは変わらない。
なんだよ。……そういうことじゃないか。
俺はHPがゼロになる前に剣を抜き剣を締まった……。
「…………」
「どうしたのですか? ハヤトさん。メラメラ……」
「なんでもないさ。ただ――」
そうだ、この“この世界”と“現実世界”に違いなんてない!
「――俺は、この世界を……本気で生き延びてみせる――」
そう。違いなんて無い。
「イオ」
「……なんでしょう?」
「お前を……」
いや、違う……。
「お前だけは――――ッ!!」
「“必ず”守ってやる!!」
――そう俺は誓った。
今度こそは失敗しないと。
必ず守ってみせると――。
俺はイオの手を引っ張り。先に進む。
「さて、と……」
俺は今後のことを考える。
「とりあえず……どうしようかね」
もうパ―ティメンバ―は二人だ。
雑魚モンスタ―にすら苦戦するだろう。
「ハヤトさんっ!」
「ん? どうした?」
「イオ、あれに乗りたいです! メラメラ……!」
イオは蒸気機関車を指差す。
「……乗りたいのか?」
「はい! どんな乗り物なのかイオは知りません。メラメラ……」
まあ、息抜きも必要だろう。
「よし、じゃあ、あの蒸気機関車に乗るか!」
俺達は機関車乗り場まで行った。
受付の人に話しかける。
「あの、この機関車に乗りたいのですが」
俺は金を渡す。
「そうかい、丁度 《トリトン》行きの機関車が走るところだよ」
「じゃあそこでお願いします」
そして、俺達は蒸気機関車に足を運んだ――。




