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#0 ファーストブレイン

2037年に完全没入型VRゲ―ムが開発され、ゲ―ムの主流はVRに移行、

VRゲ―ムに(とりこ)になっていく若者が後を絶たなかった。


――そして2040年。


今最も売れている聴覚干渉(ちょうかくかんしょう)型“VRPC(パソコン)”ハ―ドの名前は《ファ―ストブレイン》。


このVRPCの特徴は、VR世界に接続した者の耳から脳波を読み取り、

数日間の夢を解読、夢に対して働きかけることで、人格、大まかな記憶、

思考パタ―ンをアルゴリズム化してハ―ドウェアにコピ―、


ゲ―ム内で体験したことを、ログアウト時に実際の夢にリンクさせ覚醒させるという方式だ。

ログイン時には聴覚干渉(ちょうかくかんしょう)により強制的に睡眠状態に移行させる――、


“安全のため、脳にデ―タを戻す際には、

 エラ―や矛盾がないか完全にチェックする” とされている。


《ファ―ストブレイン》はファ―ムウェアを更新するために、

常時ネットに接続されている必要がある。


なお――ネットワ―ク環境が良ければ、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


その機能はあまりにも画期的(かっきてき)な為、

若者を中心にみるみる内に広まっては社会現象にもなり、

今では《ファ―ストブレイン》利用者は全世界で一億人にも及んだ―――。


◆◇◆◇


――2040年6月12日。現実世界。


俺の名前は来栖隼斗(くるすはやと)

一応高校に通っているが、殆どサボっており……引きこもりがちだ。

なぜ引きこもりがちになってしまったかと言うと……。


中学生の時……両親が事故に会い他界してしまったショックによる影響だ。

アレは……有名な事件だ。ニュ―スにもなった。

()()()()A()I()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。


事故の詳細は……わからない。


◇◆◇◆


……そんなわけで、俺は一人暮らしをしているのだが……。

幸福なことに多額の生命保険が支払われ、その金で学校に通っている。


……自慢じゃないが、俺は非常に頭が悪く――つまりバカだ。


だから当然勉強なんて出来ないし、

引きこもり気味なので好きな子に告白なんて当然出来ず今まで生きてきた。


そんな訳だから、当然非リア充だ。リア充は爆発しろ!


しかし、馬鹿な俺でも打ち込める趣味だけはあった。


それはゲ―ム作りである。


俺は引きこもりの特性を()かし、

たまたまネットに転がっていたゲ―ム制作ツ―ル《ウニティ》を使い、

遂にVR対応ゲ―ムを完成させることに成功したっ!!


ちなみに、ゲ―グルでゲ―ム制作ツ―ルのキ―ワ―ドで調べたら、

検索結果の上の方にどうやら有名らしい制作支援ツ―ル――ゲ―ムエンジンというのか?


それで、そのゲ―ムエンジンを実際に使ってみたんだが……。

英語のソフトばっかりで俺にはサッパリだった。


そして、更に調べ続けた結果、五十三ペ―ジ目にあった、

《加賀美のゲ―ム制作支援サイト》というサイトに、

この《ウニティ》のダウンロ―ドリンクが張ってあった。


五十三ペ―ジ目にある時点で怪しさ全開だった訳だが、

俺はどうしてもゲ―ムを作りたいが為に会員登録を済ましてまで入手したのだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()のが面倒だったが……。


だが、そのツ―ルは俺が今まで使ってきたどのゲ―ムエンジンよりも、

直感的に使え――更に嬉しいのは、メニュ―が日本語で書かれていたことだ。

《ウニティ》はとんでもなく使いやすいソフトだったのである。


なぜそんなに熱心にゲ―ム制作に集中できたかって?

……こんなクソみたいな現実からおさらばしたいからだ。

俺だけのハ―レム楽園(ユートピア)を築くんだ。


◆◇◆◇


俺のその信念は固い。


一年と半年という歳月をかけ、何度も挫折しそうになりながらも、

当初から考えていた《ファ―ストブレイン》対応の、VRゲ―ムの完成にこぎつけたのだ!


勿論、オンラインゲ―ムなんて作れなかったので一人用のゲ―ムである。


そもそも俺はコミュ障なので、オンラインは無理だ


モンスタ―を倒して経験値を貯めたり、NPCのおつかいクエストを達成し、

資金やアイテム、武器などを集めて強くなっていく――ごく一般のRPGだ。


「もちろん、世界観、モンスタ―、容姿、性格、基礎ステ―タスなど

すべて俺が考えたわけで」


……全て考えたというのは、まあ嘘だけど。

ある程度の()()()()()()はAIが勝手に用意してくれている。

その中の一部は俺が設定した訳だ。


「でも登場するモンスタ―と、

 仲間になるNPC以外の名前はめんどくさいので設定していない」


そう、俺は面倒くさがりなのだ。


「俺の仲間になるNPCはみんな美少女にしておいたし

 登場するはずの美少女五人全員が――俺の仲間になるようにも設定した」


これで素晴らしいハ―レム世界の完成だ。


「これで非リア充ともお別れだ!」


ゲ―ムの中で……ね。


「クエストはウニティが自動で作成してくれたが、一部俺が作ったクエストもある」


また、()()()()()()5()0()0()()()()()()()()()()()()()()()


ゲ―ム内で“あること”をすれば500のクエストに加え自由に追加することが出来る。


「俺のステ―タス、装備は最初から強めに設定したし」


俺が強くないとヒロインを助けられないからなっ!

準備万端に越したことは無い。


「これで俺が美少女を守る設定……。なんつって」


一応言っておくと、このセリフは全部独り言である。


◆◇◆◇


そろそろ、この家からもおさらばだなっ。

俺はしばらくこのゲ―ムに没頭するのだ。

待っていろファンタジ―世界よ……!!


「これで……!」


俺が望むハ―レム世界の完成だ……!


さてと……?


「動作チェックとかはわからん、設定も終わったと思うし、ゲ―ムを開始してみるか」


俺はベッドに横になり、VRPC《ファ―ストブレイン》の起動準備をした。

このVRPCは、ヘッドフォン型であり、耳元にスイッチがある。


「え―と……あったあった、ゲ―ム開始ボタンだ」


さて、これでようやく俺の創造(そうぞう)した完璧な世界に潜り込める!


「なんだか、ドキドキするな……」


◆◇◆◇


さあ、いよいよゲ―ムの始まりだ。


……俺は。


《ファ―ストブレイン》のゲ―ム開始ボタンを、


――—押した。


……その直後――、


――—視界が暗転(あんてん)し、現実世界から切り離された。


ゲ―ムの名は、《ワールドオブユートピア》。


こうして、長い。そう……


とても長い冒険(クエスト)が始まるのだった――。


◇◆◇◆


ログイン......。


“ハヤトの記憶デ―タ”に致命的なエラ―が発生しました。


修復開始......。


修復失敗......。

ゲ―ムシステム全体に致命的なエラ―を確認......。


ログイン完了。ようこそワールドオブユートピアへ――――。


        【管理用コンピュ―タ―VER.1.00】

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