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15.弟と……姉?

 ギルド医から許可を得ると、アレックス一行はアニクに案内されながら寮へと向かった。

 その庭先に行ってみると、素振りの音と共に全身から汗を流すアニクそっくりな象族の若者がいる。

「兄さん、ん……周りの人は新しいギルド員かい?」

「ああ、新しくルドルフ隊の隊長に選ばれたアレックス殿と、隊員の皆さんだ」

「入ってすぐに隊長に選ばれるなんて……凄いですね!」

 そう言いながらアニクそっくりな若者は、晴れ晴れとした笑顔を見せてくれた。背格好はアニクに比べれば一回り小さいが将来は有望そうだ。


 早くもエルフの魔導士スカーレットは興味を持ったらしく、モノ欲しそうに眺めていた。

「体に少し甘さはあるけど……将来性は十分ね。お姉さんがかわいがってあげようかしら?」

『こらこらスカーレット! あまり新人君をいじめないの!』

 アニクの弟君は、シルバーマップが喋ったことに驚いていた。角も翼も隠しているためマップをただのウマだと思っていたのだろう。


「う、ウマが……? ウマが喋……え? ええ?」

 アレックスが「マップ」というと、シルバーマップは70センチメートルほどの角を現してみせた。

「うおお! もしかしてユニコーン!?」

『初めまして。小生の名はシルバーマップ。モザイク処理が常時必要なビンビンウマだよ』

「も、もざいく?」

「純粋な人々には刺激が強すぎるウマという意味さ。またの名をヘンタイ一角獣」

 さすがのシルバーマップも最後の一言にカチンときたらしく、前脚で軽くアレックスを蹴ってきた。なお、最近は大人しめに見えるが、編集の関係で日常のヘンタイ行動がカットされているだけで、しっかりとヘンタイ馬である。ごは……!?


 アニクも言った。

「マドハヴァディティア。お前はタンク役としてアレックス隊長を支えろ」

 その一言で弟マドハは表情を引き締めた。

「ユニコーンマスターを守る……責任重大ですね」

「できるだろ。できないのなら故郷に帰す」

 マドハは険しい顔をした。

「できます! やってみせる!!」

 その答えを聞いたアニクは満足そうに笑った。


 アドハヴァディティアを仲間に加えて、アレックス隊の戦力は大きく強化された。

 剣も魔法もできるクノイチ千代。弓と風魔法のマナツル。炎と大地魔法のスペシャリストのスカーレット。攻守ともに優れる戦士アドハ。そこまで考えると、実はあと1人チームに加えられることを思い出した。

「残り1人は、どんな人を加える?」

 そうシルバーマップに質問すると、彼も『そうだねぇ』と言いながら考え込んでいた。


『魔境を探索するのなら、小生とアレックスが魔法戦士ということになるだろうし、そうしたら……戦士1、魔法戦士3、魔法弓1、魔導士1か……』

 少し考えこむと彼は言った。

『獣人系のアタッカーを加えるのが普通だけど、あえて、弓か魔法を強化したり、探索能力に優れた使い手を呼ぶ……というのもアリかな』


「あ、あの……」

 声をかけてきたのはマナツルだった。彼女は少し遠慮がちに言う。

「ちょっと変わり者なんだけど……有翼人でよければ姉を呼んでもいいかな?」

 その話を聞いた千代も、少し悩ましそうな表情をしていた。

「戦力としては十分なのですが……姉と言っていいのでしょうか……?」

 アレックスはすぐに言った。

「僕としては会ってみたいな。どこに行けばいい?」

「いいえ。私が連れてきますので……」

 そう言うとマナツルは翼を広げて飛び立った。

「まあ、戦力の増強は速やかに行うべきだからな……」

 なんだか、千代がどことなく嫌そうな顔をしているのが気になる。とても気になって仕方がないアレックスとシルバーマップだった。



 マナツルが飛び立ってから1時間半後。アレックスはルドルフ中隊長に話をしていた。

 アレックス隊に、ギルドの居候であったアドハが正式に加入を認められたことに、彼は想定内の出来事という様子で頷いていたが、マナツルの話をするとルドルフも興味深そうに視線を向けてきた。

「なるほど。彼女には姉がいたのか……」

「でも、なんだかマナツルと千代は、なんだか含みのある言い方をしていたんですよ」

「含み……? まあ、拙者としては能力さえ高ければ不満はないが……」


 その直後、シルバーマップは空を見上げながら言った。

『マナツルちゃんが戻ってきたよ。隣にいるのは……男の人?』

 まさかと思いながら同じ方角を見ると、確かにマナツルの隣には短髪のイケメン有翼人が飛んでいた。その頭にはテングという生き物のマスクを付け、翼の大きさもマナツルよりも大きい。


 その人物はマナツルと共に着地すると、即座にアレックスやルドルフを見た。

「お初にお目にかかります。マナツルの兄……ハヤトと申します」

 そっとシルバーマップを見ると、鼻の穴を広げてにおいを確認していた。アレックスのおよそ1000倍の嗅覚の持ち主である彼は、即座にハヤトがパワー系お姉さんであることを見破っている。

「小隊長のアレックスです。こちらは中隊長のルドルフ」

「ハヤト殿、早速ですが鍛錬の成果を見せていただいてもよろしいかな?」


 ハヤトは頷くと、手をシルバーマップにかざして浮き上がらせてみせた。

『?……!?……!!』

「某は少し変わった特殊能力を持っていましてね。近くにあるものを短時間ですが浮き上がらせることができます」

「な、なるほど……ちなみにシルバーマップの重さは?」

「確か500キログラム前後あると思います」


 ハヤトはシルバーマップを3メートルほどの高さまで浮かせると、やがてゆっくりと地面へと下ろした。さすがのシルバーマップも驚いたらしく、自分の身体はもちろん蹄の裏側まで確認している。

『これは驚いたな。一流の風魔法の使い手じゃないと、これほどのことはできない』

 マップの言う通り、この風のコントロール能力を戦闘に生かせば、相当硬いものでなければ切り落とすことも吹き飛ばすこともできそうだ。

「実力は十分なようですね。ぜひ、うちのチームに入ってください」


 ハヤトは頷くと、すぐに千代を見た。

「おお、千代……久しぶりだな」

「え、ええ……ええ、お久しぶりです」

 ハヤトは近づくと、千代の頭を撫でたり肩に触ったりと馴れ馴れしい態度で接していた。もちろんその行動を見たシルバーマップは不機嫌そうに耳を絞っていた。

『こらー! 小生の千代に手を出すなー!』

「某は男と牡馬に興味はない。しっしっしっ!」

『ヒヒーン!』

 シルバーマップ対ハヤトのケンカが始まると、そこになぜかスカーレットまで割り込んできた。

「ちょっと待ちなさい。千代は私のコレクションよ! 手を出すんじゃないの!!」

「や、やめてよみんなー!」

 マナツルがそう叫んだから大変である。ヘンタイウマと、ヘンタイエルフと、ヘンタイ有翼人は、少女2人の所有権をめぐって三つ巴の戦いを始めたのだ。


 隣で眺めていた象獣人のマドハも、苦笑いしながら事の成り行きを見守っていた。

「なんだか……凄いことになっちゃいましたね……」

「これが、我がチームのトップ3になりそうなんだよなぁ……はぁ……」

 というかスカーレット。君はいつの間に男集めから少女集めに方針を変更したんだ?

【作者からのお願い】

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