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第五章「死んだ彼女に想いを告げ続ける」 七話



 根回し、というものは重要である。何事も滞りなく物事を進めるにあたり前準備は大切だ。

 幼少からアラムは自宅にいても常に電話をしていたファナール船長の姿を見て、それをよく学んでいる。彼女が疲労から熱でベッドに倒れた翌日、船内の多くの仕事が止まったらしく病み上がりの数日間。あの養母が死んだ目をしていたのを青年はよく覚えていた。

 まぁ、それはさておきだ。とにもかくにも根回し、というものをこの青年は重要視していた。なのでコルネ村でできることはしておこうという結論に至り、あの魔王様に連れ出される際にギャレンとキレスタールに冒険者ギルドでの仕事を頼んでいたのであった。


「なるほど、アケル王国への終焉の竜討伐の物資の協力要請、ですか」

「はい。さきほど話した通り、私め共は一悶着起こしてしまいましたが、今は世界の危機……やはりアケル王国には物資だけでも協力をしてもらいたいのです。望み薄ではありますが、やれることはやっておこうというのが私めの恩人の考えですので」


 冒険者ギルドの来客室で、難しい顔をして話しているギルド長とキレスタール。ギャレンはただただ無言でその様子を眺めていた。

 話の途中にちらり、とギルド長がギャレンの装備を盗み見る。彼が今着ているのは昨日ガウハルが制作したギャレンの新装備だ。その純白でバランスの良い機動と防御を兼ね備えた鎧を思わず金勘定をする職業柄の為、品定めをしたのだろう。

 だが今は交渉中。咳払いをした後にギルド長は机を指で叩きながら、申し訳なさそうな表情でこう言った。


「しかし……王都から離れた場所にある村のギルド長が一筆書いたところで、あのアケル王国の王族と貴族は動かないでしょうなぁ。ルアネ殿とギャレン殿には難しい依頼を何度もこなしていただき稼がせて貰いましたし、力にはなりたいのですが――」

「承知しています。ですのでドラゴノス帝国の皇帝様に頼み、使者を出してもらう予定です。ですのでギルド長様にはドラゴノスからの使者がすぐさまアケル王国へと向かえるように準備をしておいてもらいたく……少ないですが、これはその依頼料となります」


 そう言ってキレスタールは懐からズシリと重い袋を取り出す。中は言わずもがな、アケル王国で使用されている金貨で埋め尽くされていた。少ないなどと少女は謙遜したが、スリがそこらにいるこんな村で持ち歩いて良い大金ではない。


「おお、これはこれは、これだけあれば足の速い竜車とそれなりの護衛も付けれますな」

「はい、ですのでこれだけをそちら(ギルド)の取り分としまして、途中の村での備品購入は――」


 そしてアラムが今朝方に作成した用紙を取り出しながら、細かい部分を決めていく両名。人工知能を使い最短でアケル王国へと行ける道筋を計算していたらしい。


「うむ、実に無駄がない……まるでルアネ殿が考えたかのような道筋……話は変わりますが、あのルアネ様が終焉の竜に囚われた……というのは本当なのですかな? どこでその情報を?」

「それは……」


 と、ギルド長の質問になんと答えようかと言葉を詰まらせるキレスタール。あのアケル王国を襲った白と黒の祖である二人組をどう説明しようかか考え、言い淀んだらしい。


「ギルド長殿。簡潔に言えば、敵からの情報です」

「敵からの……ギャレン殿はそれを信じているので?」


 少女の代わりにそれに答えたのはギャレンだった。難しい話であれば自分は役立たずと黙っていたが、あのルアネの話になればこの男は口を開くのだ。


「そう仮定しなければ、愚生に戦う理由はないので」

「……相も変わらず、白竜公は黒竜姫の為にその拳を振るうのですな。宜しい、この依頼、私が責任をもって果たしましょう」


 ギルド長がそう締めくくり、これにてアラムの根回しは完了した。後は旅の準備をしてからガウハルと別行動し、未知の国へと旅立つだけだ。


「それではよろしくお願い致します……なにやら、酒場の方が騒がしいですね?」

「まぁ、酒場が騒がしいのはそう珍しくはありませんが、どうも今日は気配が違いますね」


 と、ギルドの酒場の方からアラムの怒声が聞こえた時点でキレスタールが雷の如く来客室から飛び出した。主のピンチであると判断したらしい。

 ギャレンもそれに続きギルド長に一礼をしてから酒場へと駆けていくと、そこには予想外の光景が広がっていた。


「……これは、一体?」


 身包みをはがされて縄でぐるぐる巻きにされたスキンヘッドおっさんと、怒り心頭といった感じで怒鳴っている青年の姿がそこにはあった。少女と後に続いた大男が泡を食らうのも無理はない光景だった。


「は、放しやがれ! 別に俺が女装していようがいいじゃねぇか!」

「ええーええー、別に女装だけをしているんだったら構いませんけどねぇ。ぼかぁ男の娘文化にも女体化文化にも精通してむしろ推進派ですから……でも問題はあんたが黒竜姫を名乗っていたことにあるんですよ! そこら辺をきちんと理解されてませんでしたかぁ!?」


 キレていた。青年が顔を真っ赤にして電流をビリビリと弾けさせている棒を持ちながら、縛られているおっさんの顔をまん丸に開けた目で顔を覗き込んでいた。あれは完全に目がキマッている。

 普段は新参者がいれば取りあえず脅かす、この新人教育が行き届いた酒場の冒険者たちもその異様性を感じ取ったのか、遠巻きに青年の拷問を見ながら酒をちびちびと飲んでいるだけであった。

 キレスタールも今のアラムを止めることは不可能と思ったのか、店の入り口で腕を組んで立っていた魔王に事情説明を求める事態にまで発展しようとしていた。


「べ、別にいいじゃねぇか名前を借りるぐらい! 俺がどれだけ苦労してきたことか知らねぇだろ! 黒竜姫だって言っても誰も信じやしねぇ! 最近ろくに食ってねぇんだぞ!」

「いやいや信じる訳ないでしょうよ鏡を一度よく見ましょうか!? それにそんな苦労なんて知らないですし聞く気も無いですよぉ、こちとら。はぁ、反省もしてないようですし、もう一度その体に電流でも流してやりましょうか!? ええ!?」

「ま、待て待て、もうそのマジックアイテムを使うんじゃねぇよ! まぁ聞けって、俺は一時期アケル王国の勇者と名乗って村々から支援金をありがたく頂戴してたんだがな?」


 そういえば、と青年は今の発言を聞いて思い出した。確かルアネとギャレンがコルネ村で冒険者として活動した目的の一つに勇者と偽ってアケル王国が善意(税金)として勇者へと渡すように政策を行っていたのだが、その協力金をかすめ取っている不届きな輩がおり、自分たちの名を世間に知らしめてその詐欺行為を封じる、というものがあった。

 どうやら今、目の前にいるのがその不届きな輩(詐欺師)らしい。


「元勇者の偽者かい! もう許せないんですけどぉ! すみませーん受付の人、ギルドって不審者とか犯罪者の留置とかしてますぅ!?」

「待てって! 勇者と名乗って金巻き上げてた奴なんていくらでもいるさ! 現にここで酒飲んでる奴の中にも探せばいるだろうよ!」

「そりゃあまぁ、いるでしょうけどねぇ。ぼかぁねぇ、あんたがそんな低クオリティーの格好してルアネさんの名前を語ってるのがとにかく許せないんですよ! というかなんでその見た目で黒竜姫を名乗ろうとしたんですか? お腹が出たおっさんのビキニアーマー姿とか誰も得しないでしょうが!」

「女物の鎧で一番安かったのがこれなんだよ!」

「いやまぁ、面積少ない分、原材料のコストも少ないでしょうけど、というか普通は白竜公()の方を名乗るでしょうに……」

「白竜公っていやぁあれだろ! 素手でドラゴン殴り殺すとかいう奴だろ! そんな馬鹿げた野郎が存在してる訳ねぇだろが! おめぇ頭おかしいのかぁ! ああ!」

「いやぁ……えぇ」


 たまらず本人の方に視線を向けるアラム。どうやらギャレンたちがこの場に来ていたことは、彼も気がついていたらしい。

 そしてその青年の視線に、白竜公は首を横に振ってみせる。もしこの男が白竜公が実在するとわかったら、その名前を存分に使い悪さをするだろう。ここは本物がそこにいると言わない方が吉だと、いつも愚生と自分を低く語るギャレンでもそれぐらいの判断はできたらしい。


「それに黒竜姫を最近見たっていう行商人に会ったが、一人だったって話だぞ! 白竜公が黒竜姫の連れなら、一人で行動してるのはおかしいだろう! な!」


 そして、これからこいつをどうしてやろうかという青年の思考は、ビキニアーマーの男のこの発言により吹き飛ばされた。黒竜姫を見たという証言にアラムとギャレンの顔から同時に、怒りが消え、更には表情も消えた。


「な、なんだよおっかねぇ顔しやがって! 俺は無一文だから――」

「その行商人、今どこにいますか? それで手打ちにしましょう」

「な、なんだよ。この(コルネ)村のどっかにはいるだろうよ。俺はその行商人の荷馬車に乗せてもらってここに来たんだからな……で、村に着いてビキニアーマーに着替えて――」


 まず最初にギルドの酒場から出ていったのはギャレンだった。それに続いてキレスタールもギルドを飛び出していく。


「な、なんだよ話を聞けよ。で、草むらでビキニアーマーに着替えてから――」

「ああ、もういいです! 受付の人すみません! この人、適当に処理しといてください!」

「おい手打ちって話はどこに行った! ふざけんな!」


 そこからはどうでもいい情報が続きそうだったので、青年はギルドの受付にこのまた悪さをしそうなおっさんの処分を他人に頼み、急いで二人に続き酒場から走って出ていく。

 無論、受付のお嬢さんは困った顔をしていたが今は非常事態だ。仕方ないだろう。


「いや、なんともそそっかしい三人だ。どれ、そこの男。我が話を聞いてやるからその商人の人相と荷台に何があったか思い出してはくれぬか? 何を売るかで大方の場所と行動は推察できるゆえな。ああ、配膳の者、二人分の酒を頼む。金銭はこれで足りるか? さきほど因縁を付けてきて襲ってきたゴロツキから拝借したものだが、なに、怪しい金ではない。慰謝料という奴ゆえそこは安心せよ」


 ぽつんと残された魔王は、肩をすくめて苦笑いをし、二人分の酒を頼む。それだけで上機嫌になったビキニアーマー男。更にはこの魔王の聞き上手ぶりは異常で、男は気持ちよく酒を煽りながら必要な情報を二日酔いのゲロの如く吐いていく。

 ――そしてその二十分後、コルネ村を駆けずり回る三人より先に目当て商人を一番早く見つけたのは、このガウハルなのであった。





 芋虫が二匹、地面を這った様な跡が地面に続いていた。

 少し前に降った雨のせいだろう。左右に木々がまばらに生えている人気の無い商業道に、その女が足をズルズルと引きずってつけた跡が、やたらくっきりと残っているのである。

 靴底をすり減らしながら、右、左、右、左と足を引きずりながら突き出す。頑なに足から地面を放そうとしないその異様な姿を通行人が見つければ、幽鬼の類か何かだと思うだろう。

 だがそんな心配は不要だ。この商業はもう随分と前から使われていないのだから。


「いや……でも、そうね。そうね、そう」


 ブツブツと女はよくわからない言葉を呟いていると、急に周囲が陰に覆われた。

 何事かと女が視界を遮る自らの黒いその長い髪を手でそっとずらすと、目の前には密集した鱗が見え、呼吸と共にその鱗に覆われている皮膚が小さく膨らんだり縮んだりしているのを目視した。


「グルルルルゥ」


 大きな、血を浴びたみたいに赤いワイバーンであった。周囲の木々よりも高く、竜車五台ほどの長さを誇る巨竜がそこにはいる。きっとこの商業道が破棄されたのは、この竜がここらに住み着いたからなのだろう。

 鋭い牙としたたり落ちる涎、それと臭い息が女に掛かる。ワイバーンがその大きな口を開け、ゆっくりと女に顔を近づけてきているのだ。もはや隙を狙う必要もない。まるで人間が食卓で食べ物を口に運ぶかのように、新鮮な血肉を味わおうとして――。

 血しぶきが上がった。長く太いワイバーンの首が、綺麗な断面図を作り、そこから血の噴水が湧き出たのだ。


「見て……綺麗ね」


 女はそれを見てにたりと笑う。見れば、死体になったそれのすぐ傍で大きな槍が一本のみ、地に刺さっていた。だがそれは幻なのか? すぐさま光となり消える。あのワイバーンはこの幻の槍にやられたとでもいうのだろうか?

 ――その答えは、すぐさま判明する。


「ギャハ! ギャハ!」


 強い陽光が降り注ぐ荒地を、その無数の“大きく、多い”影が遮る。まるで小さな雲が早送りで太陽を隠したり隠さなかったりしている様だ。

 それは群れであった。あの一匹でさえ人の絶望となりえるワイバーンの群れ、それが仲間を殺されたことに怒り、女を餌ではなく明確な敵として認識していた。

 絶対的な捕食者から空を征服する王者の大群として、その口に火球を溜め今にもそれを今か今かと放とうとしている。


「あら大変、このままじゃドレスが焼けてしまうわ」


 だが、それを見た女の言葉はそんな場違いなものであった。まるで雨が降ってきたから傘をさす様な動作で、手をそっと掲げて、彼女は文字通り本物の“武器”の雨を降らした。

 空飛ぶ竜の更に頭上から召喚される剣と槍、槌に斧、更には杖までも空の王者であろうワイバーンの群れを蹂躪(皆殺しに)していく。

 深紅のワイバーンたちは吠えた。この不条理に吠えるしかなかった。今まで絶対的な覇者として君臨し続け、自らを襲う捕食者などに遭遇しなかった竜たちが「なんだこれはと」憤り、その断末魔を大地に轟かせるしかなかったのだ。

 大地に無数の武器が降り注ぎ、すぐさまそれを染め上げる深紅の竜から噴き出した血がぶっかけられ、最後に大小さまざまな肉片が空から落下してくる。


「ふふ、うふふふふふ!」


 女は笑う。不敵に笑う。心底楽しそうに、虫を殺して遊ぶ幼子の様に。



 女は貴族であった。

 この女の母は愚物であった。

 この女は父を尊敬していた。

 この女に、ある日一人の男が自分に言い寄ってきた。

 この女はその男に変えられた。

 この女はその男に希望を抱いた。

 この女はその人生の最後、終焉の竜に挑んだ。



「あは、あは! あははは! あははははははははは! 楽しみ。また会いたいわ!」


 女は狂ったように笑い続ける。そして、先ほど殺した竜の死体にいつの間にか持っていた剣で、何度も、何度も、何度も切りつけ続けた。

 ――その“骨”が見えるまで。



 はい、いつもは私がせっとせっとやっているFGOネタを書いている後書きですが、今日は謝罪をさせてください。生まれてきて申し訳あり……いやそっちじゃないよ?

 実は最近、鬱と診断されたのですが精神科のおブツのおかげで覚醒しました。頭が十五年ぐらい若返ったかのようです。

 ええ、十五年、その期間、鬱であった疑いが出てきました。おかしいな?

 その時にはまだこの「インタービーナーズ」を書き始めも構成(妄想)すら存在しておりません。なので鬱の状態で書いていた疑いがあるので、なんとなく書き終わったお話を見直してみると、あら不思議、誤字脱字や漢字間違い文法間違いが私の人生の間違いの如く見つかる見つかるぅ!

 なので今、手直しも並行してやっていて、投稿が私の頭の中にある予定より遅れております。タイトルがなんか変なのそのせいです。すんません本当に。こんなのを人様にお見せしてたのかと頭を抱えております。

 なので気長にまってくださいますよう、平にご容赦を……。

 では引き続き、FGOをたの……いや、素で間違えた。この「インタービーナーズ」をお楽しみください。では!

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