第五章「死んだ彼女に想いを告げ続ける」 五話
「ふぃー……いやまったく、酷い目にあいましたよぉ!」
「空を飛べば竜がひっきりなしに襲い掛かってくるとはな! 災難だったな栗毛よ」
「さっきのはきっと、竜の群れに突っ込んだんですってぇ! そりゃあ、僕も夜でよく見えませんでしたけど、ガウハルさんなら気づけたんじゃないですかぁ?」
「ふははは! むぅ……実はそうだ。いやぁ、すまぬすまぬ。察知できていたがな、興味本位で近づいたのよ。まさか都に近い空をあんな竜の群れが飛んでいるなどとは……面白き世界よな、ここは」
アラムの恨みごとを聞き流しつつ、ガウハルは近くの川から魔術で適当に取ってきた魚を枝に刺して、今晩のご飯を焚火で焼いていた。その様子からは反省の欠片も感じられない。
「この魔王めは……アラム様。このような者、即刻解雇するべきかと、不真面目がすぎます」
「いやキレスタールさん。僕にそんな権限無いから、それができるのは船でイスに座ってる管理職の人だからね? むしろ船の社会的信用からしたら、まっさきに僕の首が飛ばされてしまうと思いますから……」
と、ギャレンの隣で火にあったまっていたキレスタールが毒を吐く。相も変わらずガウハル相手には手厳しい。ついでで、いつもの青年の自嘲も出る。
一方、ギャレンはそんな初めて見る少女の一面に驚いていた。この心優しい修道女が誰かの悪口を言う姿など、想像もしていなかったのだろう。
「しかし、これでやっとゆっくりできますね~。ばかぁ、もう疲れましたよ。というか、ここはどこなんですかね?」
「知らぬ。適当に飛んできたゆえな。加え、我にここいらの土地勘など無い」
――星々が空に煌めく時間帯。あの空を飛んでの逃走劇から一時間後、彼らはとらえず国境まで行きつきこの川の付近で野営をしていた。
追手などはもちろんいない。竜除けの香も焚き、安全は確保されている。安心からか青年は焚火の前でスライムみたいにだらけて溶けていたが、急に真剣な顔つきへと変わっていた。
「で、怒涛の一日を過ごした後で皆さん眠いでしょうが、寝る前に少し情報を整理したいんですが……いいでしょうか?」
「それは構わん。こちらとて、この世界に来たばかりだ。少しでも多くの情報を得たい」
アラムの他を気遣いながらの提案に、ガウハルが乗り気な姿勢を見せる。それにアラムは安堵の表情を作った。
「あ、良かったです。ここで『え、疲れてんだから空気読めよ』的な反応されたらぼかぁ、泣いてましたよ」
「栗毛よ、今は非常時、そのような我が侭は言わん。まぁ、事実、少し疲れてはおるがな……して、今までの経緯はどうなっておる?」
焚火がぱちんと爆ぜる音と共にガウハルに急かされ、これまで経緯を簡潔に説明するアラム。ただ疲れからか説明下手な自分にうんざりして、途中からアラムが旅の中で制作した報告書のデータをまとめて見せながらの説明となった。
「――というのが僕たちの今まで旅です。今は第一に船への帰船と援護要請、第二はルアネさんの救出が目的ですかね」
「それは理解したが……して栗毛よ、この報告書だがー、とにかく誤字脱字が酷い。見直す癖を身に付けよ」
「すみません! そういうの今はスルーしてもらっていいですかね!? どうせ帰ってから船長に報告書の荒を探されて、しこたまぐちぐち小言を貰うんで!」
「ふはははは、いやな、前職では魔王だったからこういうものが気になって仕方がなくてなぁ。これでも、部下からの報告書を毎日と読んでたのだ。許せ、職業病という奴よ」
「ガウハルさんの世界にいた魔族の報告書って紙なんです? 石板? ああいや、というかガウハルさんはどうしてこっちに? 今、船と音信不通になってるんですが何か知りません?」
「うむ、それだが……さて、どこから話せばよいか」
右手にアラムの報告書を表示させた電子端末、左手に木の枝に刺した焼き魚を持ちながらガウハルは考える。
そして何度か焼き魚を口に運んだ後、焼き加減が完璧な魚を食べながらこう切り出した。
「実は、ディザスターを倒してきたのだが」
「はいはいディザスターを倒して……ディザスターを倒した!?」
「栗毛よ、貴様は期待通りの反応をするな! ふはははは、良い。その反応を貰いたかったのだ!」
それで話を切り出すのにあれほど時間が掛けたのかと、少女が批難の視線をガウハルに送る。だが今は情報整理が優先だ。しかし、先ほどの言葉はいくらなんでも聞き捨てならない。
「いやいやいやいや、僕たち船員全ての悲願ですよ! え、過去に二回しか成し遂げられてないとかいう、偉業の中の偉業じゃないですか!」
魔王への怒りが収まったキレスタールもその言葉の意を冷静に考えることができたのか、見るからに驚いていた。彼女もディザスターという存在がどれほど恐ろしく途方もない怪物か、その身をもって一度経験しているからだ。
「今は三度となった。カーインとその兄、ラウフが矢面に立ってな……あの時空渡りの箱舟と世界崩壊の怪物との総力戦の末、見事打ち取った。一般への公表はまだだったが、まぁ、大掛かりだったゆえにすぐにばれよう。我らが船に帰る頃にはその話題で持ちきりだろうて」
焼き魚を貪りながら機嫌良くガウハルはそう語る。そんな彼を見ながらあんぐりと口を開けて間抜けずらを晒していたアラムはブルブルと顔を振って、真剣な表情へと戻った。
「突拍子すぎてとても信じられません……けど、嘘じゃないんですよね?」
自分の知らないところで、歴史的動きがあったことに驚きを隠せないでいるアラム。だがガウハルが無意味な嘘を言うとも考えられない。真実なのだろう。
「でまぁ、我もその作戦に参加していたのだが、箱舟へと凱旋した直後に栗毛の置かれている状況を独自の情報網で把握してな。どうやらこの世界は今、新たなディザスターが誕生していようとしているらしいのだ」
「……今、なんて」
「独自の情報網だ。別にやましきことなど――」
「いやいやそっちじゃないですって、今更ガウハルさんがそういうことしてるのには驚きませんからね!?」
「うむ、新たなディザスターが誕生しようとしていると言ったのだ。話が長くなるぞ? 先ほどの報告書を読む限り、恐らくは終焉の竜と呼ばれる存在がそれであろう。箱舟と音信不通になっておるという話だったが、まず間違いなくそれが原因だ。箱舟では栗毛のあの養母が必死になっておったわ。なにせ箱舟ではこの通信不良は、世界を崩す怪物がこの世界で生誕しようとしている影響と予測されたのだからな。情報を把握しておる所は上へ下への大騒ぎよ」
「え……とぉ?」
「そして、その報が公に出る前に我が察知し、あの白き娘の手助けもあり、我は一か八か成功率の低いこの世界への転移を行ったのだ。時を掛ければ情報が転移を取り仕切る機関にもいき、その装置がこの栗毛がおる世界への転移が叶わなくなる。まぁ、多少は強引だったがこうして転移は成功はした。ゆえにこうして我は今、栗毛の前で魚を食べておる。して、長い話だったが栗毛、理解はできたのか?」
「……ちょっとぉ、待ってくださいね」
それだけ言って、アラムが険しい顔をしたまま固まってしまった。ディザスターの誕生、終焉の竜と呼ばれる怪物がまさかそれほどまでのものだとは流石にアラムも予測していなかったようだ。
そしてそれと同時に深く絶望もしていた。船との音信不通の原因がこの世界で新たに発生しようとしているディザスターならば、今後転送どころか通信すら回復する見込みはない。さらりと本人は言っていたが、ガウハルは命を賭けてこの場に来てくれたらしいが、他はそうはいかない。成功率の低い人間の転移はそもそも船では法で禁止されており、そんな無謀なことをするものなど普通に考えていない。つまりだ。現状は詰みに限りなく近い。
「うむ。流石の栗毛も今の状況を受け止めるには時間が掛かるか。してギャレンとやら、話は変わるのだが、栗毛の話で貴様とルアネという女との関係は大方は理解した……その上で一つ確認したいのだが」
双角の魔王の鋭い目線がギャレンを射抜く。人を畏怖させるに十分な眼光に、思わず青年に冷や汗が流れる。殺気だ。間違いなくこの魔王、気軽な会話の途中、殺気を孕んでギャレンを威圧したのだ。
そんなガウハルを睨み、杖を持つ手に力を入れるキレスタール。その目は間違いなく、この魔王を人類の敵だと認識しているものだった。
「貴様、もし世界と意中の女、天秤に乗せたらどちらを取る?」
「ルアネだ」
だが、そんな緊張感を跳ね除けてギャレンは即答した。しかしギャレンの額には、玉の様な汗が光っていた。流石にこの魔王の殺気に気が付かないほど鈍感だった訳ではないらしい。
「ほう、清々しい即答だ」
「俺にとって、ルアネは全てだ。彼女を救うのに世界を救わなければならないならば救う、そして彼女にとって世界が邪魔になるなら俺は喜んで悪となろう」
「ふははははは! 良いぞ。実に我好みの回答だ……では、そこの栗毛とキレスタールの命、そのルアネとやらの命が秤に乗ればどうか?」
「……ルア――」
「間があったな。なるほど、狂人には堕ちておらぬか……世界は敵に回せても仲間になったこの二人への情はある、か。いや、根は生真面目な男という訳か?」
「……」
双角の魔王はギャレンの一挙一動で心の奥底を覗き込む。すでにギャレンは座った状態から腰を浮かして目の前の魔王に対しての警戒を隠そうともしなかった。
「ギャレンとやら。正直に言えば、だがな……我はそこにいる栗毛と修道女を救えればそれで良い。貴様の意中の女など知ったことではない」
「それは! いや……そうだろう……とも」
一瞬、失礼な物言いにギャレンは怒ろうとしたが、冷静に考えてみればガウハルとルアネに接点はない。言葉尻を小さくしながら、ドスンと怒りで立ち上がりかけ、少し浮かした腰を乱雑に下ろし、魔王の話を聞く態度を取る。
ルアネと面識はない彼の立場から考えれば、仲間であるアラムたちの命を優先するのは当然だった。
「だがな……我はそこの栗毛の部下だ。ゆえに我の思惑などこの場ではどうとでもよいのだ。なぁ、栗毛よ?」
ちらりと、ガウハルの意地悪な目線がアラムに向く。貴様の意見はどうなのだと目で問い、憔悴した顔で抱えていたアラムがキョトンとした顔で周囲を見渡した後、盛大な溜息を吐きちらしてから、ぽつりぽつりと話し出した。
「ぼかぁ今、情報過多のせいで冷静じゃないんですけどぉ……」
心底弱っているのか、真っ先に青年から出てきたのは弱音だった。
「ふはは! だろうとも、そのやつれた顔を見れば理解できる。だがすぐさま決断せよ。今は時が惜しい。終焉の竜とやらが覚醒するまでの期間が不明ゆえな、迅速な行動が求められる」
「わかってますよぉ~、もーう!」
情けなく泣きそうな声で上を向き叫んでから、頬っぺたを叩き、顔を戻す青年。気合を入れ直したらしい。
だが、それでも自分の意見なんてなんの役に立つんだと疑問にでも思っているのだろう。実に腑に落ちないといった表情で、アラムは私見を語り出した。
「終焉の竜討伐とルアネさんの命、僕としてはどっちも同じぐらい大切ですが……強いて言えば最悪、この世界を見捨ててルアネさんだけを救出して船へと帰ってもいいと思ってます。正直ディザスターになりかけの怪物なんて僕には荷が重すぎますしね」
「ほう、では女を秘密裏に奪還しつつ、箱舟からの救助を待つと?」
「まさか。船からの救助が来る絶対的な可能性が無いので作戦は実行不可能です。で、取りあえず今さっきまで考えてたのはこの世界の国への協力ですかね。今の僕らの戦力でディザスターになりかけている終焉の竜の討伐は難しいですから……戦力をどうにか、かき集めたいんです」
「うむ、やはり栗毛は絶望的な局面でさえ思考を止めぬか。それでこそ我の認めた男よ。でまぁ、その策は確かに現段階で考えられる上策ではあるが……詳細は?」
「まずは二手にわかれましょうか。アケル王国への協力はまぁ……諦めましょうか。反対の人はいます?」
「あの自らの保身しか考えておらぬ王が相手ではなぁ、説得は難航を極めるであろう。我は賛同する」
他の二人も頷きでガウハルの言葉に賛同する。アケルに関して、全員の意見が一致した。
「なのでガウハルさんはドラゴノス帝国っていう場所に行ってほしいんです。僕らが一度行ったことのある国で、そこの皇帝と皇太子さんは顔見知りになっているのでまぁ、楽に協力を取り付けられるかと」
言われ、少し思案するガウハル。少し火が弱まり始めた焚火を見ながら、数秒思考を回していた。
「ならば我ではなく栗毛、貴様の方が適任であろう? 知った顔が説得する方が良かろうて……」
「いえ、その国は終焉の竜に一番近い立地にある国なんですよ、ですから――」
「む、ああ、そうか。いや、貴様の報告書にもそう書いてあったな。なるほど、万が一終焉の竜が移動を始めた時に一番最初に襲われるであろうその国を守っておけという訳か。決戦にて投入するこちらの戦力が削られては元も子もない。良かろう、納得した」
「……この魔王様は理解能力が高すぎない?」
「いや、ディザスターと戦った後で疲れているので、流石にいつもより頭が回らん。まだ貴様には裏があるのだろうが、それが何かまでは読めておらぬ」
「その裏はディザスターと戦ってきたばかりのガウハルさんの疲弊問題の解決ですよ。できるならば、ガウハルさんは終焉の竜との戦いに備えてドラゴノス王国で休んでいてくださいね?」
「それは……そうだな。休息は大事であるな。しかし修道女のみでは、この過酷な世界で栗毛を守りきれぬと思うのだが?」
言われ、聞き手に徹していたキレスタールがガウハルを睨む。いや、ほぼ無表情なので睨んでいると言えるほど鋭い目つきではないが、何か殺気に似た怒りを発したのをアラムは感じ取っていた。
「なんだ修道女、真であろう?」
「確かにこの竜ばかりいる世界は過酷ですし、私めのみではアラム様は守れませんが、こちらにはギャレン様がおります。魔王ガウハル、貴方は終焉の竜打倒に向け休息を……歯がゆいですが、あなたの全力がなければ終焉の竜は倒せないでしょう」
「うーむ……しかし、だ」
ガウハルの歯切れが悪い。その目線の先にはギャレンがいた。
見ればその鎧はところどころ傷だらけであり、王国を襲った二大貴族の祖との戦いで半分破壊されていた。もはや使い込まれているとかそういうレベルではない。
ルアネと共にアケル王国を出てから使っている物なのだから、そうなるのは当たり前なのだが、こんな装備では自分の上司は任せられないとガウハルは判断したのだろう。なのでこう提案した。
「ではギャレンとやら、脱げ。全てだ」
「え、ちょっとガウハルさぁん!? 女の子がいるのに何を言っているんですか!」
「栗毛、これは真面目な話だ。その大男の鎧はすでに寿命を過ぎておる。我の力で装備を今すぐに新調する。幸いにも材料はここにあることだしな」
そう言ってから服のどこからか二つの塊を取り出すガウハル。白と黒の球体だった。
「え、なんですそれ?」
「貴様らを襲ったあの二人組だ。死体ごと圧縮して丸めておる」
「それ復活する奴ですからぁ! ゾンビですよゾンビ!」
「安心せよ。浄化魔術で清めた後ゆえ、既に無害よ」
「そんな除菌スプレーで殺菌したみたいな軽いノリで言われましても……というかそんなの捨てましょ! ああいや、祟られそうだから丁重に埋めるか燃やすかしてくださいよ! ギャレンさんこの世界って火葬なんです? 土葬なんです?」
「待たぬか。この鎧は上物で材質が良質ゆえ、再利用せぬ手はない。これで、そこの男の鎧を造って損は無い。腕利きの鍛冶屋とまではいかぬが、そこそこの物は作れるだろうよ」
「まぁー……そこまでガウハルさんが言うなら僕はこれ以上言いませんが、ギャレンさんはどうします? 敵として戦ったとはいえ、ご先祖様の鎧ですし……」
倒した先祖の鎧を自分の物に加工するのは、流石に罰当たりなのではなかろうか? そう思いギャレンの顔色を覗きながら青年はギャレンの意見を求めたが……。
「いや、ルアネを助ける力になるなら遠慮なくやってくれ!」
この男、まったく躊躇が無い。そうだった。考えてみればこのギャレンにとってルアネ以上に大切なものは存在しないので、当然の反応ではある。
「良かろう。では体の寸法を見るゆえ、草陰に来い。流石に修道女の前で貴様を剥くのは流石に憚られる」
「いや剥くって……」
アラムが剥くという言葉に反応する中、長身の男二人が草をかき分け夜闇へと消えていく。
「なんだろう。絵面がその、あれ……なんだけど」
「あれとは?」
「男色というか、なんというか」
「同性でも互いの合意があれば問題はないかと? 合意でなければ問題はありますが」
「いやまぁ、うん、え? キレスタールさんそういうのに理解あるタイプ? むしろ興奮するタイプ?」
「いえ、よくはわかりませんが私めが生まれ育った教会はそういう方々もいたらしいので」
と、青年の呟きに少女がなにやら首を傾げていると、あちらからガウハルの声が聞こえてきた。
「ほほう、素晴らしき筋肉だな。立派なものだ」
「……なぜそう、まじまじと見るのだろうか?」
「いや何、鍛え上げられた肉体というものは一つの芸術ゆえな……しかし下の方も――」
下、そう言われて少し顔を赤くするキレスタール。やはり彼女も年端のいかぬ少女であるらしい。なのでここは年上のアラム君が彼女を守る為に立ち上がった。
「ちょっと! ガウハルさーん! こっちには女の子もいるんですからねぇ! セクハラには気を付けくださいよ! そういうの本当に厳しいんですからね!」
吠える吠える。人の為という正当な理由があれば、臆病なアラムとてあの魔王相手にも大声で怒れるらしい。
「む、そうであったそうであった。いや、すまぬ。しかしだ、栗毛よ」
「なんですかぁ! 言い訳ですかぁ!?」
「貴様も異性に、たまに危うい発言をするであろう。その言葉、自身にも返ってくるのではないか?」
「……」
ぐうの音も出ない正論であった。
そういえばと、青年は自分のやってきたことを思い出す。思えばこれまでの旅の中でルアネに対してメイド談義やら、彼女の痴態を見た時にテンパってだらしない顔は異性としては良いと言ったりと、セクハラ発言をかましていた。そんな彼が人様にセクハラをするなと、怒れるものだろうか?
それはもう、断じて否であろう。
「はい……その通りです! すみません。生きててすみません!」
「いや、栗毛? 別にそこまでは言っておらぬぞ、逞しく生きよ」
ガウハルに論破され、自分の最近の失敗を思い出した青年はそれだけ言い残し、トボトボとキレスタールの隣から少し離れて、固い地面に直に横になる。そしてシクシクと泣き始めた。
「あの、アラム様。テントや寝袋で寝ないと……」
「僕にはこの固い地面がお似合いなんですぅ! そんな上等な物を使う資格ないんでぇ! こんなどうしようもないゴミ、そこら辺に捨てておいてください……うぅ!」
「あの、そういう訳には、お体に障りますので……魔王ガウハル、あなたのせいですよ!」
「いや、別に我はな……ええい栗毛よ、修道女も困っておる! 機嫌を直さぬか!」
「ごめんなさい、ご迷惑を掛ける気ないんですぅ! ちょっとでいいからこのままにして、皆さまおくつろぎください! ぼかぁ、今とっても恥ずかしいのと情けないので、地面の上で反省してるだけですから! お願い、本当に暫くそっとしていて! あ、それとガウハルさんは一番疲れてるでしょうからテントで寝て安眠してくださいねぇ!」
拗ねたというかもう、恥ずかしさで意固地になったアラム。そしてこれから一時間、やたら自分を慰めてくれた三名にそれはもう丁寧な謝罪とお礼の言葉を言ってから、アラムは寝袋に包まってから静かに就寝したのであった。
FGOの青崎さん家の妹さんが使う宝具(必殺技)が格好良すぎて通常の速度で使ってます。




