第四章「男は女の愛を知る」 十八話
我々はそれを終焉の竜と呼んだ。
古より存在し、(読み取り不明)北海より現れる。
だが(読み取り不明)過去の資料と合わない。年々その姿を変えている。
(読み取り不明)一の存在なのだろうか?
わからない、しかし(読み取り不明)きっとかの竜を打ち倒すことは、未来永劫叶わないだろう。
――竜と魔術の世界、出典、人物、不明。
「あー……もう思い残すことは無いわ」
それはもう幸せそうな笑みだった。人生において最大の目標を達成したかのようなやり切った表情で空に見える明けの明星を見上げているのはルアネさんである。
「いやぁ……国の半分の武器を買い込むとか……」
「私めは忘れません……買い物途中、騎士たちに困惑顔でお城に連れていかれ、頭を押さえ項垂れた皇帝様にもうやめてくれと言われたことを」
その日はドラゴノス王国から旅立ちの日であった。ミューカスドラゴンを退治した翌日の明朝である。舞踏会の後、貴族たちが帰る中、レルドルト皇太子にこの国に数日観光目的で滞在していないかと言われ、全員が数日はゆっくりとするつもりではあったのだ。
が、翌日出立となった、なってしまった。全てルアネの業の深さが原因である。彼女はこの国の武器を買いに買いまくった。今回の仕事で皇帝から出たとんでもない報酬と、今まで冒険者として一級依頼をこなして得た一財産を財布の底を叩くほど散財をしてルアネは国半分の武器を買い込んだのだ。
そう、比喩とかではなく国半分の武器を買い込み、およそ剣、槍、棍棒などを約三千本だ。
「ま、本当は全部買いたかったけど!」
「ルアネ、やりすぎだと思うのだが……」
いつもルアネを持ち上げる話し方をするギャレンですら、この反応であった。
武器をしこたま買い込んだことにより、ドラゴノス帝国の元老院から皇帝のアケル王国からの客が自国での国家転覆を計り、この国の武器を買い込んでいるとかなんとかと疑われた。
無論、ルアネにそんな気はない。だが、全財産を叩いて約三千本の武器をただ趣味の為に購入するなど誰が思おうか。ということで政治的な問題になる前に、というかなりかけたが為に、こうして朝からこそこそと出発する運びとなった訳だ。
「じゃあなギャレン! しっかりルアネ姫を守るんだ。そして帰ってきたらどちらが彼女にふさわしいか決めるぞ!」
「ああ、必ず守る。皇太子殿もどうか政治的問題に負けないように健勝でいてくれ」
と、レルドルト皇太子とギャレンが固い握手を交わす。この二人、恋敵ということもありなにかと張り合っていたが、ルアネが趣味に走っている間になにやら意気投合したらしい。というのもギャレンも英雄ドラゴノスには憧れていたとか何とか。
同じヒーローを好きな仲ということもあり、ミューカスドラゴンを倒した後に親睦を深めたらしい。
「いやぁ、ギャレンさんはコミュ力高いねぇ」
「ええ、旅の醍醐味は出会いと別れですから。こういう光景は私めも美しいと思います」
「いや、僕もああいうスキルがあればもっと人生楽に生きれてたのかな……」
「本当ですね。私めもあんな風に人と関われていればしなくていい苦労を回避できたと思います……」
そして、その美しい男の友情を眺めてしんみりとそう呟くのは青年と少女である。お互い進んで人と関わりを持とうとしない者同士、ギャレンのような短時間で人と仲を深めれる明朗快活な性格が羨ましいようだ。
「じゃあ行くわよ」
一方でルアネは非常に淡白であった。もうこの国には用事は無いと言いたげに握手を交わしていた男二人を置いてすでに次の目的地へと歩き出していた。
と、思ったらふと立ち止まり、くるりと踊るようなターンで振り向いて、別れの言葉も無いのかと少し悲しそうな顔をしていたレルドルト皇太子をまじまじと見る。彼女が皇太子をここまで鋭い目で見たのは初めてではなかろうか?
「皇太子様? 私って馬鹿な男は嫌いなのよ。だから勉学が苦手、なんて言わずに筆を取りなさいな。私を口説き落としたかったら血筋や身分ではなく、この国にふさわしい成果を引っ提げてきなさい」
「あ、ああ! 必ずや!」
淡白だと言ったのは訂正しよう。この旅の中で十分に知っていたはずだ。彼女はどうしようもなく現実主義で、自分本位で、その上でそれ以上に優しい人間なのだから。
「ル、ルアネ! 愚生も成果を出せば振り向いてもらえるのか!」
「だぁもぉ、人がいい感じで別れようとしてるのにあんたはもぉー、黙ってなさい!」
と、その言葉に興奮を覚えたのは皇太子だけではなく、ギャレンが猛烈にルアネにそう執拗につっかかる。これさえなければ彼も彼女に振り向いてもらえそうなのだが、いやはや。
こうして四人は最後の国を旅立った。そう、この旅の終幕である。
――ひたすら北へ、北へ。
アケル王国からドラゴノス帝国を経由して彼らはここまでたどり着いた。この竜の世界最果ての地へと、ここから先は世捨て人による小さな村々しかなく、大きな国の主要都市は無い。
北の果て地。ただただうすら寒く、荒野が続く終焉の竜に続く道しかない名も無き地を、人々はそう呼んだという。
「へぇ、この大陸って大国が三つあるんですね。」
そんな生気の無い土地を四人、周囲の雰囲気を誤魔化すように和やかに歩いていた。
一番やかましいのはアラムで、この青年は怖いと感じるとよく騒ぐ。普段なら竜が襲ってくるとルアネが脅すが、どうもここら辺り大きな竜どころか小さなトカゲ一匹いないらしいので、皆が皆、青年をほおっておくことに決めたらしい。
そんなアラムが持っているのはキレスタールがドラゴノス帝国で購入した世界図であった。行く先々で地図を購入するのは旅人として基本ということで今まで何枚の地図を買っていたと言う少女、その事実をついさっき青年は知らされたのだ。
ちなみに黙っていた理由は偵察機で周囲の地理を調べられるアラムが、別に地図を用意することにより自分の技術を疑われていると感じるかもしれなかった、と少女は供述している。
「ちなみにショクル様も同罪です」
「いや、キレスタールさん? しれっと私を売らないでください」
「ショクル様、こういうのはバレた時に全て薄情してしまえとバイトで読んだ本に書いておりました。今その知識を実行する時かと」
「キレスタールさん、その歳でどんな内容の本を読んでいるんですか?」
とまぁ、裏で少女がショクルと話し合って決めたことらしい。隠し事をされていたことに何も思わない青年ではなかったが、すぐに笑って許していた。
「しかしこんな卵みたいな形だったんですね。この大陸」
アラムは世界図を見てそう感想を漏らす。地図の中心には卵型の大きな大陸にそれぞれ青、赤、緑いろの国旗が三つある。実にシンプルだ。
すると、そんな青年にルアネの突っ込みが飛ぶ。
「アラム、それ当たり前だけど略図よ。陸地の崖やら浜辺なんて海の浸食やらなにやらで、なだらかな線になる訳ないじゃないの」
「略図? こういうのはできるだけ徒歩で歩いて調べないんですか?」
「海岸沿いなんてほとんど凶暴な竜の巣よ? 誰が竜に食われる危険性を冒してまで正確な地図を描くのよ」
「ああ、それもそうですね」
この世界はあらゆる世界を観測してきたバイトから見ても過酷であると評価されている。そんな土地で人間が文明を気づけているのはそこら辺の酔っぱらいですら高度な魔術を扱えるからであることを青年は失念していた。
きっとルアネとギャレンが強すぎて旅の緊張感が緩みに緩んだせいだろう。
「しっかし終焉の竜でしたっけ? 旅の最終目的である敵ってべらぼうに強いんでしょ?」
「そうね。倒しきれずに海へ追い返すのが精いっぱいでしょうね」
「海へ追い返す?」
「歴代の勇者は代々そうしてるのよ。戦闘で傷つけて上陸してくるのを追い返すしか手だてが無いから、それを御大層に封印とか伝えてるけどね」
「海に住んでるならどうやってその終焉の竜の接近を察知するんですか? 海はだいたいが危険な竜の縄張りなんですよね?」
「全世界にいる占い屋が世界を滅ぼす災厄が来るって騒ぎ出すから、三つある大国が話し合って勇者が決められるの。まぁここ三百年はアケル王国しか勇者を出してないって話だけど」
そんな裏事情があったのかと驚くアラムと「聞いていた通りですね」と頷くキレスタール。少女の反応を見るにこの話が出たのは初出ではないらしい。
「え、キレスタールさん知ってたの?」
「ルアネ様たちと旅を始めた頃、私めが夜の見張り番をしている時にルアネ様から聞きまして、ショクル様が情報レポートにしてアラム様にも渡したと聞いていましたが……」
「はい、確かに渡したはずですが」
青年は無言で無線機を見る。が、その前にすでにショクルから渡したと言われ、冷や汗を流していた。
「すみません、確認不足でした」
「アラム様、私めなどから言われたくないでしょうが、旅の目的である敵の強さぐらいは把握しておかないと――」
「ああいや、敵の能力のレポートは穴が開くほど読んだよ。現時点で判明している能力は巨大な体と強力な再生能力、それと幾たびも姿を変化させている怪物なんですよね?」
流石に敵の戦闘力は把握していたらしい。命に直結するので、この臆病な青年は真っ先に調べたであろう。
「ま、その情報も眉唾物だけどね。なにせ終焉の竜に挑んで帰ってきた人間はいないし」
「え? じゃあどうやってそんなことを調べたんですか?」
「占いと遠見の魔術でしょうね。後者はある程度は信用できるわね」
「こんな魔術が発達した世界でも占いってのは胡散臭いもんなんですか?」
「え? なに、占いなんてものを疑わない世界があるの?」
「実績さえあれば事件の犯人捜しに使う世界もあるとは聞きますが、まぁ腕が無いなら問答無用で煙たがられるでしょうけど、話は変わりますけど今晩のご飯はなんでしょうか?」
「いや、今は――」
アラムの一言で少し話が脱線しかかる。終焉の竜については大事な話で深堀するべきことだが、どうにも青年はこの話をすると苦痛そうに顔を歪める。
「……ああ、これ魔術ね」
「え?」
「あんたさっき話を逸らそうとしたでしょ? 聞いたことがあるのよ。相手に作戦を練らせない為の高度な結界魔術があるって、敵の無意識に働きかける暗示みたいなものよ」
「はい、私めも終焉の竜について話そうとすると、ザワザワというか心が荒れます。こういった魔術もあるのですね」
唐突に、ルアネがそう結論付けた。いきなりのことに目を白黒させるアラム。するとキレスタールがその言葉を裏付けするように言葉を付け加えた。
「終焉の竜を倒そうとする者の邪魔をする魔術、この土地自体に仕込んだ大規模な魔術だけど種さえわかれば効果は無くなるはずよ。でも終焉の竜なんてのがこんな高度な魔術を使えるなんて……予想外ね。もしかしたら会話できるぐらいの知能があるのかもしれないわよ」
その後、終焉の竜討伐についての密な作戦が練られていく。といっても主に主軸となるのはルアネとギャレンで、少女はともかく青年はほぼ役立たずだ。遠くで無線を使って三人のサポートする非戦闘員なのだ。
そも、ただの人間であるアラムがこんな場所にいること自体が間違いなのだ。それでも彼がここにいるのは、彼の技術ゆえである。
「うん、偵察機に何も引っ掛かりませんね。百も飛ばしてますから何かあればわかるはずですが」
そう、偵察機である。彼が操るそれは現状、最強の探知能力だ。上空に広がり数キロ先の石ころの形だって知ろうとすれば知れるのだから、それを知った時にあの才女であるルアネが思わず舌を巻いたほどだ。
「そ、じゃあ今夜はここらで野宿ね」
「でもまだ日は高いですよ?」
「周囲を見なさい。辛うじて枯れ木……というより乾燥した流木ね。海も近いし台風か何かでここまで飛ばされたんでしょうけど、薪を作る材料がある場所で寝たいじゃない?」
思わず青年が目を見開く。周囲の景色を見れないほど自分が切羽詰まっているということを一日の終わりで彼女の言葉で実感したからだろう。
思いの外自分が緊張していることを実感して、アラムもここで休むという提案に内心で賛成した。それに、焚火というものは人を落ち着かせると青年は経験でわかっていた。
この世界に来るまでその知識自体はあったが、電気に慣れ親しんだ彼は否定的であった。だが、長い旅の中で火がゆっくりと体を温めてくれる有難さを痛感したのだ。
「そうですね」
だから、彼女の言葉をそう短く肯定した。
「ではいつも通り愚生が薪を集める。今晩は――」
「いや、三人で集めるわ。あんたは晩飯の準備をしてなさい。アラム、キレスタール、薪拾い手伝ってくれる?」
ふと周囲を見れば、灰色の荒野であった。時が固定されたような死の土地に、暖かな灯が一つ灯った。土魔術で風よけの壁が作られ、快適な場所が作り出される。
しかしこの土地特有の不気味さは消えてくれない。何しろ日が落ちた空は雲が無いはずなのに星明りすら見えない。異質な土地であった。
「色々、あったわね」
ふと、焚火を起こしてルアネの好物であるスープを元に少し合成にした物で体を中から温めていると、彼女がぼそりと呟いた。
「はい、色々ございました。最初、私めとアラム様はあなた方を尾行していたのですよ」
「それを知った時ぞっとしたわ。魔術で周囲を警戒しているはずなのに尾行されてたなんて、アラムの偵察機とやらは生きていないんだから察知できなくて当然だけど」
それから、何も実らないはずの荒野で思い出話という花が咲いた。ルアネの秘密を知ったアラムとのあの不幸な事件、ルアネとギャレンが倒したデザートドラゴン。冒険者としてこなしたクエストの数々、仕事で失敗して落ち込んだアラムとキレスタール。盗賊団の壊滅、そして、四人で旅した時間。
思えば、四人で行動した期間は短い。されど内容は濃く、相手の気心を知れる時間はあった。今にして思えば、黄金の花伝説の村での馬鹿騒ぎからお互いの距離が近くなったのだろう。
そして、先日のドラゴノス帝国でのミューカスドラゴン退治だ。
「あの次期皇帝様は今頃、机に齧りつけてるかしらね?」
「きっと立派な皇帝となるだろう。レルドルト皇子には才能がある」
「そりゃあんたからみりゃ大抵の人間は才能に満ち溢れてるでしょうね」
「痛い所を突くな……ルアネ。そう言えば」
「ん?」
「本当に今更なのだが、やはり黒竜姫というのは変ではないだろうか? ルアネは貴族令嬢であって姫ではないのだから」
本当に今更である。それを言われた瞬間ルアネが拗ねたような怒った様な変な顔になった。ルアネも痛い所を突かれたらしい。
「うっさいわね! 黒竜嬢とかなんかかっこ悪いじゃない……いや言ってみたらそんなに悪くないわね。いやでも、黒竜姫の方がしっくりきたのよ! 別にいいじゃない!」
語呂の良し悪しの問題だったのか、とアラムとキレスタールが食事を続け乍ら心の中でツッコむ。二人もそこは気になっていたらしい。
「そもそも武器や魔術にいちいち名前を付けるのはどうなのだろう?」
「何よしつこいわね! ドラゴノスだって技名叫んで戦ってたわよ! そういう文献とかは無いけど! あんたドラゴノス好きなんでしょ!?」
めちゃくちゃな理論で反論するルアネさん。あの十四歳で発症する病気はこういう真面目に質問してくる輩が古くから苦手なのである。
「どっか行きなさいよぉもぉー! そろそろ日課の鍛錬でも始めたら!?」
「ああ、そうだな」
少しキレ気味のルアネがそうギャレンをそう言って焚火の前から追い出す。
鍛錬、長い間ギャレンが秘密にしていた日課である。ドラゴノス帝国入国前に発覚したそれだが、彼が幼少の頃から続けているという年季の入った習慣である。
ただ拳を握りしめ、何かを殴る。木でもいいし、岩でもいい、物体であればなんでもいいが、殴りがいのある物を選んで彼はただそれを殴っていたらしい。
「キレスタール殿。今夜も頼む」
「はい」
そう言って白い大男と少女が立ち上がる。数日前からギャレンのサンドバックはキレスタールの結界となっていた。本人曰くこんなに殴りがいのあるものは他に無いらしい。
「あれも立派な病気ね」
「拳一つでワイバーンのお腹に穴を開けるんですからすごいですよね。ギャレンさんって自分のことを非才とか愚生とかいいますけど全然天才じゃないですか?」
「いや、それはないわ。あれはあいつのは純粋な努力による研鑽よ。そこは履き違えないであげないでくれるかしら? アラム」
と、なにやら珍しくギャレンのことを擁護するルアネ。それを聞いてアラムはにんまりとなんとも気持ちの悪い笑みを作った。
「な、何よ」
「いや、ようやくギャレンさんに心を開いたなと」
「バッカ、敬意よ敬意。あんな出鱈目な方法で天才の私と同等の強さを手にした人間に対しての敬意だから!」
少し顔を赤くしてそう話すルアネ。すると、アラムはさっきと打って変わり、目を細めて彼女の腰にある細い銀の剣をじっと見つめていた。
「何?」
「いや、その剣、アケル王国で王様から貰ってた奴ですよね? ルアネさんってあの王様が苦手な割にその剣を大事にしているなって」
「まぁ、愚王から貰って剣でも武器に罪は無いわ」
「愚王って……でもそれ、ルアネさんの趣味に合わないですよね?」
と、青年の指摘にルアネが一瞬キョトンとする。まさか自分の趣味に理解を示してくれるとは思いもしなかったのだろう。
「まぁ、そうだけど、私の趣味がわかるの?」
「なんとなくですが……他にもお気に入りの剣があるのに、なんでそれだけ大事に腰に下げてるのか僕ずっと疑問だったんですよ。教えてもらえませんかね?」
やたら真剣な表情でそう聞いてくる青年。それにルアネはいくばかの逡巡の後に、黙り始めた。
それから二人きりの中、少し沈黙が続いた後、唐突にルアネが荷物から紙を取り出した。
「それより……はい、これ」
「なんです?」
「遺書よ」
そのあっけらかんとした言葉に、一瞬アラムは面食らうも、それを黙って受け取った。
「あら、何か言われるかと思ったわ」
「残念ながらぼかぁ、人があっさりと死ぬことぐらいは知ってるんで涙ながらに絶対に死なないで、なんて言いませんよ? そういう可能性もありますね、としか言いません。それに一番生き残る確率が高いのは後衛の僕ですから、遺書を託してもなんら不思議はないかと」
「そう、貴方が仲間になってくれて良かったわ。ギャレンだとこうはいかないもの。私が死んだらギャレンに見せて頂戴、その後は父に」
「わかりました。生き残っても見せますね」
「ちょっとそれは! 破ってそこら辺に捨てなさい!」
とまぁ、そんなおふざけもありながら、彼らの最後になる旅の夜はこうして終わりを迎えたのであった。
この旅での最後の夜が深まる。きっとアラムとルアネが寝袋に潜った後にギャレンとキレスタールが帰ってくるだろう。
ふと、青年が眠りに落ちる瞬間、生暖かい風が吹いた。きっとこの風が吹いてきたこの先に、この世界の終焉が待ち受けているのだろう。
次回更新は明日の朝六時の予定です。




