第六章「親と子は歩み寄る」 十五話
今日の晩餐は豪勢であった。
あのハニーンが気を利かせて色々と値が少し張る物を沢山購入してきたからだ。コツコツと手品師として稼ぎ、金はあまり使わないので貯蓄はあるのだという。
そして腹を満たして何が起きるかわからない明日に備え、清く正しく男女に別れて寝る寸前……なのだが、例の如くアラム君がうるさかった。
ついでに女性グループはハニーンの部屋で寝るとのことらしい。
「娘が僕よりも完璧に自立してたんですけどぉ!」
さて、今夜お世話になる敷布団の上でそんなことをいきなり叫ぶ青年。他の皆はいそいそと寝る準備をしている中、青年が悔し涙かよくわからない体液を目から流している。
常人ならば少し構うのを躊躇う面倒くさい存在と化しているが、こういう生物として受け入れている魔王は彼をなだめ始めた。
「ほう、それは喜ばしいことではないか、栗毛よ」
「いやぁー、度々船長にお世話になっている僕としては自分が情けなると言いましょうかぁー、精神年齢で負けてる気がして悲しいと言いましょうかぁー!」
「そう言うな。そも、人というのはどうあっても他者へ迷惑を掛けながら日々を営むものだ。依存でなければそう卑下することでもあるまい」
そう青年を説き伏せながら、お布団にインするガウハルさん。この魔王、心なしか少しワクワクしていないだろうか? 皆が寝静まった辺りに小声でお前、誰が好きなのとか聞いてきそうな雰囲気だ。
それに続きエルフの三人組とギャレンも就寝準備を完了させる。
無論、先ほど記述した通り男女別れてである。来客用の飯を食べた教室はキレスタールの治療を施された若いエルフ三名含む男連中が、ハニーンの部屋で使っている教室は女性が使い今夜は眠るのだ……が、暑苦しい男部屋にただ一人女性が残っていた。ルアネその人である。
なぜか彼女だけ女性部屋の方には向かわず、男共がいそいそと敷布団に潜ってもどこかに行く気配はなかったのだ。入り口付近で機嫌の悪そうな顔で陣取り、アラムを蛇、いや、竜の如く睨んでいた。
これはあれだ。お前は今過ちを犯しているが、それに気づいて自ら名乗り出るならば恩赦を与えるという彼女なりの慈悲なのだが、アラムのような気の弱い男からすれば拷問のそれと変わりない。
なのでアラムは今までどう機嫌を取ろうかと考えていたのだが、お布団に潜っても気になってそろっと顔を出してもそこから立ち去らない彼女に腹を括り、いざ手を上げてから質問をした。
「……はい、アラム、何か?」
「あのー、で、ルアネさんいつまでこっちいるんですか? 今日はもう、ぼかぁー眠たくて眠たくて仕方ないんですけどぉ」
「私だって長居をする気なんてなかったわよ。ただあんたが私を無視し続けるからここにいるのよ」
「僕のせいなんですぅ?」
「そうよ。今日中に決着を付けたいことがあってね……アラム、あんたハニーンと仲良くなる気あるの? なんかお互いぎくしゃくしてるというか、距離感を計りかねてるというか、見てらんないのよ」
と、いうことらしい。ハニーンの耳が無い所でアラムにそのことを詰問する為に残っていたということらしい。
「そりゃあ、あるにはありますけど、あの子が変わりすぎてると言いましょうか……僕と別れた時と大分違うんですよ。社交性の塊というか、なんですぅあの爽やかさ? 僕に分けてほしいぐらいですよ」
「で、性格が変わりすぎてたあの娘とどう接していいのかわからず戸惑っていると?」
「はい、そうです! ルアネさん天才!」
青年が言いたかったことを才女は一言に要約する。なんとも便利だ。
「そもそも今日一日で色々ありすぎたんですよー。エルフとアンドロイドの里は壊滅しましたし、今はラウフさんの件を優先するべきでしょうし……というかカーインさんともちょっとあれな雰囲気でぼかぁ、本当にてんてこ舞いでしてねぇー!」
「何? あんたカーインと喧嘩したの?」
「いや、喧嘩と言いましょうかちょっと僕が会話の選択肢を間違えたと言いましょうか……はい」
はぁーとため息を吐くルアネ。ここまでこの青年が迷走しているとは思わなかったらしい。
「なんでアラムは対人に関してそこまでポンコツになるのよ。あんた自頭はいいんだからもっとうまく立ち回れるでしょうに」
「その自頭が良いって頭の悪い人間を煽てる時に使う言葉ですよね?」
「捻くれてるわねぇー、あんた! そこは素直に喜んどきなさいよ!」
今日も今日とて斜に構えて生きているアラム君、そしてそれにキレるルアネさん。だがアラムの言い分は筋が通っている。今はラウフと誘拐されかけたアラム自身とハニーンの安全を得る方が優先だ。それにこの先、戦闘もあるかもしれない。それに備えるべきである。
わだかまりを解くのはその後でも可能だ。
「あ、そうだルアネさん、いい物あげます。もうちょっと調整とかしたかったですけど、この先で必要になると思うので」
もぞもぞとお布団から出てきて、召喚システムを発動させるアラム。だがルアネ様は怪訝なお顔をしていらしている。
「何よ? ご機嫌取りにお菓子でもくれるの?」
そんな子供騙しで絆されるような軽い女じゃなくてよ、という目で青年を睨むルアネさん。だがそんな懐疑的な目は、そんな彼女を尻目にアラムが何か召喚するとたちどころに変わった。
「これなんですけど、変形型の双剣で柄の部分をくっつけると弓に変わるんですよ。昔、科学技術と魔術技術の合成がどこまで可能かと試験的に作ってたのをちびちびと改良して――」
――と、アラムが説明を言い終わる前に入口にいたルアネが消えた。なんらかの魔術なのだろうか? ほぼ無音とノーモーションで青年の顔ギリギリまでその面を近づけていた。
間違いなくホラー映画の怪物が獲物を追い詰めた時の距離だ。
「いやいやいやいや、怖い怖い怖い怖い怖い!」
あまりの勢いとルアネ姐さんの完璧な笑顔で恐怖を感じたのかアラムが召喚した武器を布団に置き去りにし、教室の隅まで逃げる。危機感知本能が脳内で盛大に誤報、いや、正常に働いたのだろう。
「ぶ、武器、武器! ね、ねぇ、ねぇ武器じゃない、これ、アラム! え? あ、あなた! へぇ! ぶ、武器くれるの!?」
「落ち着きましょ! 喜ばそうと思ってサプライズプレゼントで用意してましたけど、落ち着いて! いけないお薬の中毒者が久々にヤバいお薬見つけたみたいな反応までは望んでない!」
「……臓器?」
「そんな対価は求めてませんから! 何サラッと怖いこと言うんですか、本当!」
「……」
それだけ確認してルアネは顔を赤らめアラムのプレゼントに夢中になる。カチカチと剣から弓に、弓から剣に武器を変形させて悦に浸っていら。
このちょっと心配になるレベルの豹変ぶりに、部屋で安静にしていたエルフ三人組が固まっていた。無理もない。さきほどの光景は隠れ里に住んでいた若いエルフには劇物で間違いないだろう。
「……その、変わった方ですね」
そしてギャレンの恋人と知ってか知らずか、今日彼の実力が見たいと狩りに誘った男に遠慮がちに話しかける。
「ああ、ああいう愛らしい側面もあるのだ……」
「あ、はい」
その返答でエルフ三人組のギャレンを見る目が変わった。こいつもあっち側の人だと認識したのだろう。
「怖かったぁー、もーう! 美人な人が怒ると怖いと言いますけど狂気的なことしても……いやぁ、それは顔面関係なく怖いですかね!?」
「ふははははは、喜んでもらえたようではないかぁ、栗毛!」
「想像してた喜び方と違いすぎますけどねぇ!」
さて、愉快に笑う魔王と半泣きアラム。今日、絶対的な強者に襲われ少し危険に敏感になっておりこの場で部外者である彼らにとって、このアラムのチームはさぞ異質に見えただろう。
先ほどから一心不乱に武器を弄りはぁはぁと息を荒くしながら小声で何か言っている美女、それに愛おしそうに眺める男と快活そうに笑う双角の魔王。
となれば、彼らが頼る最後の砦は自分たちと同じで怯えているこの青年なのは自明の理なのであった。
「あ、あのぉ」
「あ、すみませんねぇ。騒がしくて」
「ああいえ、その、あなたはハニーンさんのお父さん、なんですよね?」
「いやいや、見た目は同じぐらいですけどエルフですから年上ですよね? こんな頼りない父親ですし、そう固くならないでくださいよ。ああ、ところであなた方はハニーンとは仲良くしてくれているんですかね?」
カチカチカチカチカチカチカチカチ! 耳障りな音が聞こえてくるがアラムはあえて無視して若いエルフたちにそんな質問を投げかける。彼らの緊張を察して世間話でもして落ち着いてもらおうとしているらしい。
「あ、はい……たまに狩りの休憩でここを使わせてもらってて、里でも仲はいい方です」
カチカチカチカチカチカチカチカチ!
「へぇー、でもなんであの子こんな所で一人……」
カチカチカチカチカチカチカチカチ!
「ああ、それは非常時の避難先としてや、持ち家の改築で使えない時とかこの旧校舎で寝泊まりするのが通例だったんで……その管理をハニーンさんにはしてもらってたんです」
カチカチカチカチカチカチカチカチ!
「ああ、だから寝具がこんなに……そうか、あの子、きちんと里の役でも役割があったんだねぇー……あ、ちょ、ちょっと、すみませんね? ごめんなさい」
カチカチカチカチカチカチカチカチ!
「あ、あのぉ、ル、ルアネさん、ルアネお嬢様! 武器の変形をやりまくらないでくださいよ! 今、僕なりにハニーンが普段何しているか聞いて、落ち着いてから話すときのネタを仕入れてるんですから、取りあえず静かにしてもらっていいですかねぇ!」
「で、でもアラム、へ、変、変形するのよ! これ、これ変形するのよ!」
「そりゃ僕が作ったんだから知ってますよ!?」
「そんなことよりこれ弓の形態にすると剣先から魔力の糸を出すんだけど剣形態でも使えるからそれを利用すれば戦術のは幅の拡張性はすさまじいしきちんと耐久性も考えられててこれだけ連続で形態を変換しても故障しないし更に刃に何か細工もありそうだけど科学分野の技術だからまだほとんどわからないけど刃を熱して殺傷力を上げる機構がついているのよね!」
「怖い怖い怖い怖い怖い! 早口で解析と考察の結果を伝えなくていいですから!? というかそんなことってなんですか! あなたさっきまで僕をどういう理由で怒ってたか覚えてますぅ?」
飢えた獣に肉を放り投げた青年にも非はあるのだが、流石にこれは予想外だとアラムがやいのやいのとクレームを入れる。と、それを見かねてかギャレンが半笑いで動いた。
ルアネがこうなったら彼は率先してコントロール役に回るのだ。でないと夫婦生活が破綻する。
「ルアネ」
「何よ、今武器の調整で忙しいからあんたの相手なんてできないわよ!」
「いや、今晩の修練がまだなので付き合ってほしい。それに愚生と戦いながらそのアラム殿から授かった武器を“調整”すれば捗るだろう?」
と。その言葉に弓剣の合体と分解をしていた手が止まる。鈍い男ではあるが、彼女が一番興味を持っている物は理解しているのだ。
「へぇ……いいじゃない! やるわよギャレン!」
もう満面の笑みだった。欲しいおもちゃを誕生日プレゼントに貰った子供が早速遊んでみる様なはしゃぎようだ。いや、あれは実際そうなのだろう。
「ああ。ということだアラム殿、ルアネを連れていくが良いだろうか?」
「どーぞどーぞ!」
こんな変になっているお姉さんを女性部屋に送り届けるのもはばかれる。ギャレンの訓練ついでに色々と発散して元に戻ってもらうのが一番だろう。
教室から出ていく二人を見送りアラムが深い深いため息を吐き散らかした。流石に疲れたのだろう。
「しかし流石はギャレンさん……タフガイだよ、こんな深夜に訓練するなんて」
「染みついた日課なのであろうよ、一日たりともその研鑽は止めぬだろうとも。しかしあれがあの才女の悪癖か……白竜公からちらりとは聞いていたが、いや、凄まじいな」
「へ? 初見でその反応なんです? なーんでルアネさんのあれを初めて見て笑ってられるんですか、あなた?」
「才有る人間は大いに常識から外れるものよ。それを考えればあの程度、さして驚くには値しない。それにな栗毛、人は大体が歪んでいる。それを見せるか見せていないかの違いよ」
「いやぁ……そうなんですかねぇ?」
限度というものがある、とアラムは言いたかったのだろうが、この船は奇人変人の集まりだ。探し、少し踏み込めば確かにルアネレベルの個性的な者もあっさり見つかるのかもしれない。
いやまぁ、そんな他人の特殊性癖やらを率先して見たくはないだろうが。
「ハニーンさんも大概だけど、随分と癖のある方たちですね」
さて、アラムと愉快な仲間たちのやり取りについていけないエルフの男子三人組であったが、今聞き捨てならないことを口走らなかっただろうか?
「……すみませーん? ハニーンがさっきのルアネさんと同列に語りませんでした?」
と、エルフの男子がはてと首を傾げる。親なのに知らないのかという反応だ。
「そのぉー……彼女、女性が好きで……それにあんな感じなので王子様的な人気がありあまして……同性から受けがいいと言いますか……少しやりすぎなところもありまして」
「俺の初恋相手もハニーンさんに奪われたんだよなぁ」
状況を説明してくれるエルフ君一人。遠い目をしてそんなことを呟くエルフ君一人。そしてそれをなだめ肩に手を置くエルフ君が一人……この反応からして作り話の嘘ではないらしい。
さて、問題が起きた。アラムの娘ことあのハニーン、どうやら女の子が好きらしい。そして今夜、彼女は自室にうら若き乙女二名を連れ込んでいる。
「すぅ……それはー……女の子を見てたら可愛いから好き、とかではなく、そのぉー、女体が好きということでしょうか?」
「はい、大好きみたいです。エルフは性欲があまりないので人間基準でどれぐらいかは知りませんが……大好きですね」
「うん、まぁね。僕も大好きと言えばそうなんだけど、そうかぁ、大好きかぁー……あ、すみませーん、ガウハルさーん! ちょっとぼかぁ、キレスタールさんとカーインさんの純血守りに行ってきまーす!」
「いや、はやるな栗毛! 貴様、勢い任せに判断と行動するな! 少し冷静に――」
「そんなこと言ってる場合じゃないですよぉ! 娘がキレスタールさんとカーインさんをベッドの中で襲ってたらどうするんですかぁ!」
自分を止める魔王を尻目に、アラムは教室から飛び出す。
キレスタールもカーインも青年にとって大切な人間だ。もし娘の毒牙にかかっていたら大変だ。
疲れた肉体に鞭打ち暗い廊下を全力疾走、古い階段を躓きながら二段飛ばしに駆け上がり、二回に躍り出たら左右を見渡して灯りのある教室にまた全力で走っていく。
「キレスタールさん! カーインさぁん! ちょ、ちょっと今いいかな!? い、いい、今セーフの段階です? それともアウト!?」
さして勢い任せにドアを叩きながら二人の安全を確認すると、なにやら悲鳴が中から聞こえてきた。たまらず戸を開けるアラム……そこには二人して毛布に包まり震えているキレスタールとカーインが……だがこれは青年が想像していた光景ではなかった。
なにせハニーンも少し離れた位置で恐怖を浮かべた顔で突然現れた自身の親を茫然と見ていたのだから。
「……あーっと、無事?」
「アラム様、緊急事態なのですか? 私めは無事です。すぐに戦闘行動に移行できます」
と、カーインと怖がっていたはずのキレスタールが杖を持ち、少し鋭い顔つきになる。慌てふためくアラムを見て敵襲があったのだと勘違いしたのだろう。
「あー、いや、違うんだ。その、なんていうか……」
「父さん。急用じゃなかったら女の子がいる部屋を不用意に開け放つのは駄目だろう?」
「……そのぉ、ハニーン、ハニーン君? ちょっといい?」
「なにかな、父さん?」
「すぅー……小耳に挟んだんだけど君ぃ、女の子が好きなの?」
と、このアラムの発言に妙な空気が流れる。戦闘の意思を見せていたキレスタールはキョトンとして、カーインはなんでか半泣きで、ハニーンに至っては少し、怪訝な表情を浮かべていた。
と、ハニーンの自室として使っているこの教室に備え付けられていた旧型のテレビから悲鳴が上がる。どうやらホラー映画でも見ていたらしく、そこにアラムがいきなり大声でドアを叩いたのでびっくりさせてしまった様子だ。
「あ、え、あ、あの、ごめ――」
「……父さん。ボクが女の子を好きだとして、なんでこの部屋に怒鳴り込んできたのかな?」
と、ハニーンが少し強い口調でそうアラムに訪ねる。明らかに怒っていた。
「そのぉ、キレスタールさんとカーインさんが襲われてたらどうしようって……」
ぎこちなくそう白状するアラム君、この男、とっさに嘘を吐けばいいものを……それにハニーンは落胆の表情を見せた。
「父さん、ボクがそんな分別の無いアンドロイドだと思っていたのかな? 夜部屋に女の子を連れ込み行為に及ぶと?」
「えっと、あの――」
「そりゃぁ、ボクは父さんにとってマナイスの存在だろうけど、だからといってそういう決めつけはどうかなと――」
「きゃ!?」
「え、うわぁ!」
と、ハニーンがアラムに怒りの気持ちをぶつけようとした瞬間、アラムの後ろから肩に手が置かれた。それに驚くアラムとハニーン、その気持ちを表す様にホラー映画を映す画面の中でももう一度大きな叫び声が上げられた。
「栗毛よ、だから冷静になれと言ったであろう……あいや、すまぬな栗毛の娘よ。話の流れで栗毛が盛大に誤解したのだ。大目に見てくれ、とまでは言わぬが言い訳ぐらいはさせてはくれぬか?」
ガウハルだった。廊下を全直疾走したアラムに軽々と追い付いたらしい。
「で、でも父さんはボクを信用していないからカーインさんたちを心配して――」
「情報元はあの保護したエルフ三人組よ。その内の一人が初恋相手を取られたと嘆いてな……横恋慕も辞さない強引さ会得したのかと栗毛は思ったのだろうよ」
「あ、あれは、いや、確かにあの子の初恋相手に好意は持たれたけれど! でもそれとこれとは関係――」
「ある。いやな、栗毛の娘よ。まだそれほど貴様をよくは知らぬが、この栗毛とは違い八方美人だろうことはその話し方と雰囲気で予測できる。それに加えその容姿とくれば、さぞ男女問わず人気があろうて。そして好意を持つ者も多かろう」
「それは! その、だけど!」
「いや、責めている訳ではないのだ。常識ある交際や、不特定多数と遊びで関係を持っていなければ同性愛者であろうと責められることもなかろう。まぁ、アンドロイドという存在に性欲があるのかという疑問は置いておくとして、だ」
ガウハルはすっと手を上げ、ハニーンに落ち着くようにそう語りかける。そう、責めている訳ではないのだ。
「だが、貴様の社会的立ち回りの上手さが今回は裏目に出て、貴様と親しい者から誤解するような証言があったということだけは知っておいてほしい。それを承知の上なれば、この栗毛に苦言を呈するというならば我は不介入だ。後は好きにせよ」
「ん? えっとガウハルさん? 僕の味方じゃないのぉ?」
「何を言う。何事にも限度と節度があろう? 我は貴様を気に入ってはいるがその齢となれば過ぎた手助けは毒となろうて。それに親子喧嘩というのも一度はやっておくが良い。毎日、というのも問題はあるが、一度もしないというのも不健全であろう?」
完全に仲介を買って出たガウハルに任せっきりの青年に、そう魔王本人が喝を入れる。助けはするが解決は自分でせよということらしい。
「……悪かったよ父さん。少し冷静さを欠いてた」
と、先にハニーンの方が謝罪の弁を口にする。少し拗ねたかのような印象を思わせるが、アラムが誤解するようなことを言われたのは重々承知したらしい。
「ああいや、僕の方も悪かったよ。うん、勝手に決めつけるのはよくなかった……でも、どうして女の子が好きなんだい?」
どうしてもそこが気になったのは生み出した者としてか、技術者の性で参考にしたかったのかは不明だが、青年がそんな問いを投げかける。
と、なにやらハニーンが少し呆れたような顔をする。
「そりゃあ生み出されてすぐの人格形成期に深い交流があったのは父さんだけなんだ。性的趣向もその父さんを見て影響を受けるに決まっているじゃないか。自分でそういう風に作っておいて今更何を言っているんだよ?」
「いやぁー、ハニーンの成長は僕にも未知数というか、指向性は持たせてないからそんなことを言われても……え、というかこの発端、僕の身から出た錆ってこと? というか僕から何を吸収して女体に興味を?」
「まぁ……父さんは、もう少しそういうコレクションをうまく隠した方がいい」
「ちょ、ちょっと待ってぇこれぇ! 後ろにカーインさんとキレスタールさんがいるんだからやめて! お願いだからぁ!」
「言わしたのは父さんだろう……」
さて、娘の爆弾発言に焦りまくるアラム。それに魔王は肩を震わし笑いを堪えるも耐え切れず大いに笑っていた。
「ちょっとガウハルさーん! 笑わないでよ本当に死にたくなる!」
「だろうともさ! いやぁ、栗毛よぉー、貴様ほど面白い男は中々いまいてぇー!」
「くっそこの魔王様、他人事だと思って!」
さて、野郎二人がそんな会話をする中、ハニーンの自室では「こなた聞いてませんよぉー」と明らかに気を使ってそんなことを小声で呟いてみせるカーインと、そもそもハニーンの言ったコレクションの意味を理解していないのか戸惑っているキレスタールがそこにはいた。
と、ハニーンたちが見ていたホラー映画では主人公がなにやらベッドの中で震えているところであった。今夜、アラムも別の意味で寝具の中で悶えたのはまぁ……言うまでもないだろう。
私は仏教徒なのでクリスマスをボッチで過ごしてもなんら問題はないのですよ。
さてはて、今回アラム君が大暴走、ついでにルアネさんも大暴走! 彼女の前ではシリアスな雰囲気など一瞬にして殺されてしまうんです。
さて、今回は修学旅行的な夜にワクワクしているガウハルさんと恋人をうまく誘導したギャレンさんもいましたが……やべぇな、アラムチームの男性枠における一番の良識人がギャレンになっちまう。あいつも大概非常識な方なんですが……まぁいいでしょう。
さて、今回で十五話、ということでまた書き溜めの開始、次回の投稿は未定です。
で、でも内容は頭の中にあるんで、え? 出さなければ意味が無い? それはそう。ということで次回投稿は待ってください。
来年の三月になれば僕はハンターになるので今回のお話をそれまでには終わらせないと……あ、皆さんも買いますかねあのゲーム。
それではまた。




