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第六章「親と子は歩み寄る」 七話



 さて、あれからカーインは彼女を行きつけの喫茶店へと連れてきて話を聞いていた。それで話がややこしくなったのか纏まったのかはわからない……だが、結論だけ言えばこういうことらしい。

 ハニーンという機体名のアンドロイド、彼女は確かにアラムの彼女になるべくして製造された。そしてそれからあのアラムという青年と過ごし、ある程度の期間を経て、彼女はこう結論を出したのだという。

 ――自身はアラムの彼女ではなく“娘”ではないのかと。

「何がどうなってそうなったのかを先に言えば、ボクは指向性を持って製造されなかったのが原因でね。医療アンドロイドならば医療に喜びを、生産アンドロイドならば生産に喜びを、警備アンドロイドならば警備に喜びを感じる風に作られるんだ」

 ハニーン、彼女はそう語る。アンドロイドとは人間に奉仕する為に生まれてくるのだと。


「アンドロイドというものは、人間の補助、もしくは代理で仕事をするものだからね。その為に生み出され、その為に使い潰される……けれども、ボクは違った」


 女性三人を前にして、少し伏し目がちな顔でそう語った。


「通常、ボクたちは製造目的に沿った行為に生きがい、喜びを感じるように指向性を持って生み出されるものなんだけれど、ボクにはそれが無かった。アンドロイドが生まれついてあるべきものが……ボクの場合、どうしてか創造主たるアラムという男性の彼女になることへの使命感と喜びを感じる機能が付与されなかったんだよ」


 コーヒーの香りで満たされた店内で、男装の麗人はそう語る。男物の服を着たその女性型アンドロイドは、それをどう思っているのか。その薄い笑みを浮かべる表情からは読み取れなかった。


「つまり、あなたは他のアンドロイドと違って、自由であると?」

「自由、か。まぁそれもボクを言い表す適切な言葉かな。そう、父さんであるアラム氏がなぜこんな設計にしたのかは不明なのだけど、僕は生まれついて真っ白だった。無垢、と言えば聞こえはいいけれどね。創造主の命令、いや、そもそもあの人はボクに命令なんてしないけれど、ボクはそれを無視できるように設計されているんだ」


 カーインの問いに、アラムの娘はそう答える。

 アラムの彼女として製造されたのに、彼女になることに喜び、必要性を感じなかったという。それがアラムの技術不足でのせいなのか、はたまたわざとそうしたのかは現段階では不明だ。


「ゴーレム……まぁ岩人形ね。そういうのを作る時も“主人の命令には絶対服従”という前提で造られるわ。自由意思を持たせて人間を襲うようになったら目も当てられないもの」

「ロボットにもそういった原則はあるの。人に危害を加えない。命令には従わなければならない。自己の保存をしなければならない。他にも嘘を吐かないとか盗みをしないとかあるけど概ねそんな感じかなぁ」


 カーインとルアネは自分の持つ知識を披露しながら、ハニーンの話を理解していた。

 ただキレスタールにはやはり、難しい話だったらしく、コーヒーを飲みながら三人の会話をただただ眺めていた。しかし一つだけ疑問に思ったことがあるらしい。


「その、なぜハニーン様は自身を、アラム様のパートナーではなく子供であると……いつ、どこで認識したのですか?」

「自然にそう思った……というのは少し言葉が簡潔過ぎるかな。あの人はとにかくボクを縛らなかったんだ。部屋では自由に過ごしていいし、それどころか外出してもいい。でも船内のルールは極力守ってほしい……なんて言われたんだったかな。それでデータ収集(自分の成長)の為に外に出て、色々と学んだのさ」


 なるほど、謎の解明できないアンドロイドが外をほっつき歩いていたのはあのアラムが放任主義であったかららしい。


「そうして、こういった人が憩い集う場所で、色々な人を見た。友人、恋人、そして親子さ。ボクは親子を見て、腑に落ちたんだ。父さんとは恋人ではなくきっと親子なんだろうって、だってボクは父さんに“生み出された”し“教えられている”のだからね。まぁ、普通人間とは子供を産めるのは女性の方なんだけど、ボクはそう判断し、父さんとの関係をそう定めたんだ」


 自分を産みだした者を恋人として認識はできなかった。単純といえば単純な道理ではある。


「それにアラム君はどう反応したの?」


 ふと、カーインがそれを聞いて一番気になった部分を彼女に問う。

 恋人、伴侶として生み出した存在に「あなたはボクの父親だ」と告げられ、当時のアラムはどう思い、行動したのだろうか?

 それに、ハニーンは寂しそうな顔をした。


「……驚いて、ただ黙っていたよ」


 そう短く、そう告白した。


「あの時の父さんは、まだ子供だった。十歳かそこらの子供に子ができても戸惑うことしかできないのは当たり前のことなのだろう。けど、ボクはどうしても認知してほしかった。それで、まぁ怒ってしまったのさ。認めてくれ、ボクはあなたの子供だと……今にして思えば、冷静さを欠いていたと思う。アンドロイドだというのに、合理的な行動がその時、どうしてもできなかったんだよ」

「……アラム様とはその後、どうなったのですか?」

「あぁ……ボクの方が耐え切れず家出をしてね。それっきりだよ」


 カーインの質問を繋いだのはキレスタールだった。少女にとってあの青年は恩人であり、尊敬する人間である。けれど、アラムも間違える。いや、あの青年は人より多く間違えるのだ。

 手先が器用なくせして、あの青年は生き方がとにかく不器用なのだから。


「でも、最近困ったことになってね。いよいよ自分だけでは首が回らなくなって、恥を忍んで父さんと連絡を取ろうとしたんだけれど、共通の知り合いに話を聞きに行ったらインタービーナーズになって他の世界に出張中だと教えられたんだ」


 それはアラムたちがあの竜と魔術の世界で半年ほど仕事をし、終焉の竜を打倒した期間のことだったのだろう。


「心底驚いたよ。あの部屋の隅っこで背中を丸めて機械を弄ることしかしなかった人が、この船から飛び出して仕事をしていることにね……人間は凄い。ボクみたいな模造品は、そんな風には変われないからね」


 いや、本人はなりたくてなった訳ではないのだが……ハニーンはお店のマスターが新規のお客さんの獲得の為にいつの間にか人間と“間違えて”持ってきたコーヒーを眺めてから、強い眼差しでキレスタールたちを見る。


「まぁ、昔話はここまでにして……失礼を承知で頼みごとをしたいんだ」


 口を付けることができなかったコーヒーをカーインへと回して、彼女はこう切り出した。


「知り合って間もない人に、こんな相談をするのは恥ずかしいのだけれど、あの父さんと仲良くやれているならあなた方は善人なのだろう。どうだろうか見目麗しいお嬢さん方、ボクが出せる報酬は少ないけど、やっかいな依頼を受けてはくれないかな?」


 アラムの娘、ハニーンは何か、決心をしてそう三人に相談を切り出すのであった。



 男装の麗人、ハニーンの依頼というのは用心棒と捜査であった。

 なんでも彼女が居住している場所では最近不審人物が現れ、嫌がらせが行われているらしく、近隣住人にも被害が出ていると言うのだ。


「そんなもの警務部だっけ? そこに通報したらいいだけじゃないの?」

「そうなのだけれど、ボクが住んでいる場所は少し特殊でね。警務部に助力を乞うことも考えたが、それは最終手段と仲間内で話し合い決まったんだよ」


 騒がしいショッピングモールの中を歩きながらそうルアネに説明するハニーン。


「それにあまり公に名前を出せる場所じゃないのでね。こうして人目が少ない場所にある転送機から移動しようと歩いている訳さ」


 どうやら今から向かう場所は秘密の場所らしい。


「ちょっと、ならず者の巣窟とかに連れて行かないでよ?」

「いや、治安はいい場所なんだ。そこは心配しなくていいよ。皆いい人さ」


 ハニーンは爽やかな笑みを浮かべてそう断言する。彼女はその場所が好きなようだ。

 すると今度は控えめな声でキレスタールが彼女の名を呼んだ。


「あの、ハニーン様」

「何かな? 髪が素敵なお嬢さん?」

「その、ハニーン様はなぜマジックを?」

「ああ、仕事のことかい? そうだね、ボクにできそうな仕事というのがそれぐらいだったのと、人を楽しませるのも……まぁ好きな方だしね。稼ぎは少ないけれど天職だと思ってるさ」


 そう言いつつ、マジックハットを脱いでポンっと花を出現させてみるハニーン。それをキレスタールにプレゼントする。ふと、キレスタールがそれを眺める。この少女と似て清涼な水色をした透明感のある花だった。


「お花、好きなの?」


 と、今度はカーインが質問をする。するとハニーンは目線を上に向けて、いかにも考えてますよという表情をした。


「うーん……そうだね。あまり考えたことは無かったけど好きかな。実は知り合いに花を育てるのが好きな人がいてね。いや、正確には人ではなくアンドロイドか。その方からよく貰うので、商売道具で使わせてもらっているのさ」

「アンドロイドの知り合いがいるんですか?」

「ああ、沢山ね。今から行く場所はそういう所なんだ。ああでも、他言無用でお願いするよ」


 と、口元に人差し指を立ててみせるハニーン。それを見てルアネはなんだかへんてこりんな顔をした。


「ねぇ、あのジェスチャーはどういう意味なの?」

「いや、こなたも知らないかも?」


 と、そんな会話を耳にしてハニーンが「あぁ」っと大げさに言って納得したという感じではにかんだ。


「これは秘密にしてくれというポーズさ。昔、父さんが僕を作るにあたって参考にした作品に出てくるんだ」


 参考にした作品。皆、それがどういうものなのか少し気になったが、それを聞く前にハニーンは関係者以外立ち入り禁止と書かれているドアに堂々と入るっていってしまった。


「え? そこ入っていいの」

「ボクは関係者だからね。君たちも入ってくるといい」


 そう言われ三人は遠慮がちにそのドアをくぐる。するとガチャンと音を立ててそのドアは閉まってしまう。どうやらオートロックのようだ。


「え……」


 ルアネが嵌められたのかと警戒する中、ハニーンは今からマジックショーでも始めるように両手を広げてこう言った。


「それじゃあお嬢様方。このボク、ハニーンが今から招待するのは自然豊かなエルフとアンドロイドの隠れ里、どうか皆皆様、お楽しみに!」


 エルフとアンドロイド、交わりそうのない二つの存在を口にして、ハニーンは柔らかな笑みを浮かべたのだった。



 モン◯ン楽しみ!

 最近の私の心はあのハンティングゲーム一色でありますが、ついに体験版が……でも期間が決まっているのでずっとは遊べない。限られた時間で遊びつくせるかどうか!


 まぁそれはさておき、今回登場したハニーンさん。あのアラムから生み出されたとは思えないほど女性の扱いが上手そうな男装の麗人のアンドロイドです。

 男装の麗人っていいですよねぇー。個人的にごつい鎧の中身が線の細い美人だったりするのが好きですよぉー……新しいモンハンもその方向性でキャラを作る予定です。普段、男装備を着る大和撫子的な女性で! 声とかも大人しめの感じのあるかなぁー?


 さて、私の癖はここまでにしましょう。語ると長いんで、ではまた次回会いましょう!

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