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第六章「親と子は歩み寄る」 三話



 講義室の一件の後、ガウハルは笑いに笑い「すまない、笑いが止まらぬ。邪魔になるので退散するとしよう」と言ってから自主的に退室をした。

 そしてノータイムでガウハルは講義室から出てどこに行くのか決められる。この魔王、先ほど知ったアラムの秘密を誰かと共有したくてしたくてたまらなかったのだ。


「うむ、これは一人で栗毛をからかうのはちともったいない……白竜公なれば暇だろう」


 その言葉と共にあのカップルの片割れを誘うことを決定する。

 そして最近できた仕事仲間の部屋へ速攻で訪れ、少々強引に旅のお供に加えた。もう一人、黒髪の美女も彼の部屋で暇そうにベッドでグデーっとしていたのでこちらも誘ったが、フラれた。だが本命の方は連れてこれたので魔王様は上機嫌のままだ。

 そして今、アラムの家へと攻め込もうと意気揚々と歩いているのだが……。


「ガウハル殿、やはり少し、意地が悪いのではないだろうか?」


 後ろから付いてくるギャレンからそんな言葉が魔王に投げかける。この大男は基本、善人なのだ。


「ふははははは、なに、栗毛とはそれほど浅い関係ではない。それにそろそろあ奴の過去を知るべきだと思うてな。まぁそう言わず付き合ってくれぬか?」

「それは、その、愚生もアラム殿には助けられ、過酷な旅を共にした仲だ。多少、踏み入った話をしても許されるとは思うが……それでも本人が嫌なら愚生が止めるが承諾してくれないか?」


 と、引き続きギャレンからそんな忠告が為された。親しい仲でも、超えてはならない一線があるものだ。この魔王が好奇心でそこを超えるならば、少し強引にでも止める為に今回付き添ったらしい。


「まぁ、そう言ってくれるな。我とて一度ばかり突いてから反応を見て、遊べるかは決める」


 魔王様はそれぐらい心得ていると言う、だが言葉尻の“遊ぶ”という言葉にあまりギャレンはいい顔をしなかった。

 と、そのアラムの部屋に行く道中、一人の男児がガウハルへと駆け寄る。その手にはノートとペンが握られてる。


「あ、あの、サイン下さい!」

「おお! 構わぬぞ! して、名はなんという。ほう、良き名だ」


 そうしてつらつらとその男児の名前と自分のサインを書いていく魔王。ついでにその人物の名前を書くのは一応、転売対策でこうした方がいいとアラムから授かった知恵である。

 今現在、この双角の魔王が船内を歩けば、人は彼を避けるか駆け寄るかの二択であった。

 この船において今の彼の立ち位置は英雄だ。カーインとその兄ラウフが中心となって達成された世界崩落の怪物を倒した物語はバイト船内の隅々にまで知れ渡っている。

 なにせあの件からもう随分と経っているのに未だニュース番組はそのことを取り上げているのだ。基本、話題というものは消費期限は短い。だというのに未だメディアはディザスター討伐の快挙をもう何度も何度も放送しているのだ。それほどまでにかの災厄を打倒できたことは、この船にとって大きいのだ。


「おい! ガウハルさんだぜ!」

「きゃー! 握手してください!」


 なので、この魔王様、かなりの人気者(有名人)になった。善良な一般人からは英雄として、日陰者のならず者たちからは絶対に喧嘩を売ってはいけないヤバい相手として認識されている。


「凄まじいな……ガウハル殿は人気者だ。愚生は知らなかった」

「いやな、貴様と共に終焉の竜を倒して船に戻ってからこの調子よ。ディザスターを倒してすぐに栗毛の増援に向かったのでな。よもやこんなことになっていようとは、この我でも予測できなかった。まぁ、正直悪い気はせぬのだがどうも変な噂……いや、勘違いか、情報が曲解して広まっておるのは度し難い」

「何か、あるのだろうか?」

「おお、聞いてくれるか。それが我がなぁ、あの白い娘の兄直属の部下だの、白い娘の兄が魔王を単身御して己が配下に加えディザスター打倒を成し遂げただの、我はあの栗毛と組んでいるというのにそういう話をたまに聞くのだ。それがなぁー、どーも気に食わぬ!」

「そうなのか、で、質問ばかりで悪いのだが、その……白い娘というのは?」

「お、あー! そうか、知らぬか。まぁこの船に乗り日も浅い、当然よな。とは言えあの栗毛の周りにおればすぐに知り合うだろう。先に兄の方か妹の方になるかは知らぬがな。まぁ、短く説明すると栗毛と仲が深い、いや因縁か? まぁ、そのような兄妹だ」


 そんな世間話をしながら二人して船内のどこでもある平凡な廊下を歩く。

 ふと横を見れば、外など見えない窓に映像で造られた自然映像が実際に見るより鮮やかに映し出され、音すら精巧に表現される。滝に砂漠に熱帯林に氷雪地帯と実にバラエティー豊かだ。

 このなんでもない廊下で体験できる偽物の世界旅行で、唯一再現されていないのは気温ぐらいだ。空調の利いた一般居住区区画を二人は目的地目指して闊歩する。

 ギャレンの部屋から出歩くこと十分ほどで、見えてきたのは転送機だった。

 役所の隣にある三台ほど横に並んでいるポット型の機械で、先に行先を入力し乗り込めば、自動で勝手に目的地に飛ばしてくれる優れものだ。


「白竜公、これの使い方は知っておるか? 知らぬなら、ここで教えておくが?」

「あぁ、それは助かる。実は常日頃からキレスタール殿から色々と学んではいたのだが、これについては教えてもらえなかった。聞いても彼女もよく知らないらしい……」

「なぁー、そうか修道女に教えを乞うたか。それは人選を間違えたな、あ奴はこの転送機というのがどうも苦手らしくてな。これを棺とでも思っているのか、怖がっておるのだ。講習の時も徒歩で自室から講義室に一時間半ほどかけて向かっているという話だぞ」

「そうか、そういう理由だったのか。まぁ、愚生もこれが怖いという気持ちはわかる。テレポートというものだっただろうか、終焉の竜を打倒する時にルアネに使用してもらったが、あれはあまり心地が良いものではなかった。少し平衡感覚がこう崩れて気分が悪くなった」

「そうなのか? まぁ、我々と馴染みの深い魔術と科学技術というものでは根本的に原理が違うだろうし、我は普段からこれを使用しているが体調に影響は出ておらん。そこは安心せよ」


 そう言いつつ、転送機の操作しギャレンに使い方を見せるガウハル。転送機の操作自体は簡単だが、行先の入力方法はあまり理解できず、何度もガウハルにどうやるのか聞いていた。


「この船は広いと聞いていたがこれほどまでに行先があるとは……なるほど番号で入力をして……ああ、そういえば役所とやらで自分の住んでいる区画番号はまず覚えるようにと言われのだったか」

「で、この番号が我もよく利用する市場のものよ。安く質がいい物が多い、この際だ。他にも安く質のいい店を教えるが?」

「ああ、ありがたい、そういう情報は本当に貴重だ。この船の一員になったばかりで愚生の懐事情はかなり厳しい。だが番号の桁が長くて覚えられそうにもない。メモを取るのでもう一度教えてくれないか?」

「ふはははは、だろうとも。我もそうであったぞ。番号も書くついでに行先の場所名も記入しておくと良い。音声入力なるもので場所の名前を言えば乗り込むだけで送ってくれる。そちらの使い方の方が一般的らしいな。白竜公もまずはそちらで覚えよ」

「なるほど、で、その音声入力とやらはどうしたら――」


 そう言いつつ熱心になにやらメモを取りながら説明を聞いてもその眉間のしわが無くなることはなかった。暫くはこのメモを見てからこの大男は転送機を利用するのだろう。


「……はぁー、いや、難しいな。機械という物は難解すぎる……これを使い食料調達に出られたらと考えてはいたが、部屋にあった物すら苦戦する愚生に果たして使いこなせるのだろうか?」

「時期に慣れよう。我も最初は面食らったものだが案外見た目ほど難しい物ではない。この船で生まれた者ならば幼子ですら扱えると聞く、安心せよ。未知の技術ではあろうが、コツさえつかめばどれも似たような物よ」

「まぁ、確かにルアネも機械とやらを初見で使いこなしていたな……そうか、部屋に備え付きであった道具と同じような物なのか。未だに苦戦する愚生は少し自分が情けない」

「ああ、いや、あの才女めの順応能力は我でもどうかと思うぞ。比べるな比べるな。というか貴様ら部屋の道具は買い揃える予定はあるか? 入居した時にある物は最低限の設備しか揃えられておらぬからな。ああ、それと役所で当分の生活資金の申請はしたのか?」

「それはキレスタール殿からも聞き手伝ってもらった。どこかで日銭でも稼げればまずは調理器具を新調したい」


 そしてそのままガウハルが転送機にある数字を入力する。アラムが住んでいるこことは別の居住区画だ。


「今回は我が操作しよう、先に送る。覚えたてでは手間取るであろう?」

「ああ、ありがたい。そうさせてもらおう」


 そしてギャレンを先に転送機で飛ばし、ガウハルも転送機に乗り込む。

 さて、あのアラムをどうからかおうかと思っているのか、少し口元に笑みを作りながら転送機で目的地へと飛んだ魔王だったが、その笑みはすぐさま消えることとなる。


「――む?」


 無事に転送が完了し、ポットの扉が自動で開く。するとなぜか見慣れた黒い物体がガウハルの目の前にあった。


「これは……栗毛の偵察機か?」

「ガウハル殿! 大変だ!」


 慌てたギャレンの声、姿は見えなかったがそれだけで緊急事態と判断しガウハルは動く。

 まずは転送ポットから出て状況の確認をしようとして――。


「ぐぉお!」

「ぬ? ああ、すまぬ栗毛」


 ポット前で倒れているアラムを思いっきり踏んづけたのであった。その横にはしゃがんでいるギャレンがいる。視界に入らなかった訳だ。


「なんで、二人して……僕を踏みつけるんですかぁ?」

「いやな……転送機の前で行き倒れておれば必然、踏みつけられようて」


 こんな人間足ふきマットみたなことをしていたら踏みつけられても文句は言えまいと、ガウハルはアラムの抗議に反論する。

 というかその言葉から推測してギャレンにも踏まれたらしい。が、それよりもなぜこうなったのかを聞くべきだ。


「して栗毛よ。なぜこんなところで倒れておるのだ? 腹でも下したか?」

「あのー、ちょっと色々ありまして……それで気分が悪くなって、そのまま病院に行こうとしてたら、なんか、動けなくなりまして……」

「それは……先の仕事で用法を守らず自身を薬漬けにし、無理をしたのが祟ったのではないか? 最近は調子良く見えたが、まだ治ってなかったのだろう」

「いや、まぁ、それもあるんですけどぉ」


 なんともアラムは歯切れが悪かった。だが本当に具合が悪そうで表情から生気を感じられない。


「はぁ、白竜公、予定変更だ。栗毛、病院というのはどの病院か? 連れていく」

「すみません……」

「謝るな謝るな。それ、転送機の番号を言え。暗記しておるか?」

「ああいや、あそこ番号に登録されてないんです。音声入力で名前を言うしか行く手段がないので、転送機を音声入力の状態にしてれません?」

「なに、そのような場所があるのか?」


 そう言われガウハルは慣れた手つきで転送機を操作し、アラムに言われた通り音声入力ができる状態にする。

 それを廊下で寝そべりながら確認して、アラムはこう言ったのだった。


「――第八研究所、ターレブクリニック」



そういえば、FGOの最新ストーリーも人工知能のお話ですね……パクってなーいよ。本当だよ! なんか被っちゃったの! そして三体同時のピックアップのガチャでもキャラが被って被って偏って欲しいのがきませーん!


よくあることなんですよこういうの、なんか、発表時期に他の人の作品のテーマが被るの。なんなんですかね、これ。


まぁそれはさておき私、FGOというか奈須きのこ大先生の影響を多大に受けており、というか小説なんてものを書き始めたのもあの方の影響でして。ええ、『空の境界』を多感というか中二病を発症していた青春時代に映画を見て、そのまま文庫本を買って読んだらこんな人間が出来上がりましたよ。


これからも型月作品を楽しみにしつつ、インタービーナーズも更新していく所存であります。


最後に、次の更新は休日になるかもです。時間に余裕ができたら平日に更新しますが、ではまた!

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