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公爵様と仲良くなるだけの簡単なお仕事  作者: 江本マシメサ


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秘密組織について、話を聞きました

仕事の際の格好についての決定も終わり、今度は少しだけ『隠密機動局』について教えてくれた。

構成員は全員で五名。意外と少ない。

一人目は局長として、二人目は先ほどの軽薄男なのか。詳細は伏せるのかと思いきや、意外にも詳しく教えてくれた。


隠密機動局・構成員一覧。

『鉄の淑女』フェーミナ

『虹の道化師』ジョクラトル

『漆黒の石』ラピス

『勝利を掴む者』ラウルス

そして、局長が『小さな王』レグルス、だと。


各構成員には二つ名があり、国王からは本名ではなく二つ名宛に勅令が届くらしい。

特に『鉄の淑女』はとても強そうだと言えば、局長は『彼女は構成員の中で一番の実力者です』と教えてくれた。

『虹の道化師(ジョクラトル)』は先ほど挨拶をした軽薄な奴。『漆黒の(ラピス)』さんは局長も数回しか会っていないので良く分からないとのこと。最近『鉄の淑女(フェーミナ)』さんが連れて来た実力者らしい。


「『勝利を掴む(ラウルス)』さんは今日来ている方ですよね?」


局長が書いたカードの中にあった名前だったので覚えている。返事がなかったので局長の顔を見たら、さっと顔色を青くしていた。まさか相性の悪い局員だったとか?

そのまま局長は固まってしまったので、これ以上『勝利を掴む者』について聞くのは止めた。

彫像のように動かなくなった局長を動かすために別の話題を振る。


「そ、そう言えば! 二つ名って誰が考えるのですか?」


チラリと、局長の視線がこちらに向く。机の上にあったカードと万年筆をささっと渡して返事を急かすようにする。


――二つ名は陛下が考えます。


名前の持つ古代語の音の意味からもじったり、本人の能力から取ったりとさまざまらしい。

局長の緊張は解れたようで、私の問いかけにどんどん答えてくれる。

会話が途切れると局長の方から話題を振ってくれたが、紙面にはとんでもないことが書かれていた。


――ユードラさんの分も陛下に考えてもらわなきゃですね。


いやいやいや!! 私は隠密機動局の構成員ではないので二つ名は不要だと全力で首を振る。


――でも、折角仕事仲間として入ったのに。


局長は困った顔をしながら、私にもったいない提案をしていた。

「だったら、二つ名は自分で考えます。えーっと。そうですねえ、馬の頭部を被って働くので、『雌馬秘書』とかどうでしょうか?」

いい案だと思って言ったのに、微妙な顔をされた。『雌馬秘書』は見た目と名前で役目が一瞬で分かるようないいものだと思ったが、局長は『やっぱり、陛下に考えてもらいましょう』と提案してくる。かの公爵家のご子息からしたら陛下は伯父にあたり、気軽に相談出来る関係にあると理解はできるが、やっぱりお忙しいお方に手間をかけさせるわけにはいかない。

ふと、名案が浮かび、局長に提案してみる。


「あの、差し出がましいことを、申し上げてもよろしいでしょうか?」


局長はどうぞとばかりに頷いてくれる。


「二つ名ですが、局長に考えて頂きたいのです」


私の残念な頭では『雌馬秘書』とか『どこぞの馬の骨』とか情緒の欠片もない二つ名しか思いつかない。なので、お願いをしてみた。

局長はすぐに思いついたようで、カードを手渡してくれる。そこに記されていたのは――『黄薔薇の貴婦人』。


「あ、あの、これ、本当に、私の名前ですか?」


そうだと頷く局長。髪の色が黄色だから、関連して名づけてくれたのだろうか。思いもしなかった美しい名前に恐縮してしまう。

局長は『気に入りませんでしたか?』と聞いてくる。そんなことはない。むしろ素敵過ぎる名前だ、けれど、私に相応しい言葉ではない。黄色い薔薇だなんて、貴婦人だなんて。

けれど、二つ名を考えて下さい! と威勢よく言った手前、なんだか似合わないのでもっとしっくりくる名前を付けて下さい、などと言えるわけもなく。

「とても綺麗で素敵な名前です。嬉しいです。ありがとうございました」

深々と頭を下げて、お礼の気持ちを示した。


――『黄薔薇の貴婦人』ユードラ。


激しく名前負けをしている気がするが、受け入れるしかない。この日は業務についての説明だけで終わり、お昼前に局長が公爵家のお屋敷まで送ってくれた。

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