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ぼくのこと

作者: 岳元らいと

 ぼくは視覚障害者だ。

 見える見えないでいったら、見えるほうだ。

 弱視という言い方をする。


 二歳かそこらのとき、右眼に小児がんである網膜芽細胞腫という病気を診断されたらしい。

 命の危険があるということで、右眼は摘出。

 左眼の一部にも転移していたようで、当時最新だった機械か何かを使って網膜の一部に放射線を当てたらしい。

 放射線云々は最近になって聞いた話だけど。

 そんなことがあって、右眼は義眼、左眼は見えるけど視力はそこまで高くない状態となった。


 保育所から中学校までは一般のところに通い、高校で小学生のときから縁があった特別支援学校へ。

 大学でまた一般に混ざることを決意し、その後はなんやかんやあって今に至る。

 まあ大したことのない人生さ。


 さて。

 見え方についてざっくりと。

 視野はたぶんそこまで広くない。

 計測したことは何度もあるけど一般レベルを知らないし、ずっとこの視野だからそれが当たり前になってるのもあるのかも。


 次は、うーんと。

 面倒だからまとめよう。


①距離感がうまく掴めない

②人の顔を認識するのが苦手

③文字の読み書きが不便


 まず①について。

 距離感がうまく掴めない。

 つまりは、物を掴み損ねたり弾いたりしてしまうってこと。

 これはしょっちゅう起こるやつ。

起こるたび「あらやだまただわ」とか口走っちゃうくらいよくある。

 片眼しか見えてないからね、うん。

対処法は簡単。

 一度掴み損ねたら、そこで距離を頭の中で修正して二度目以降で掴む。

 弾いたら、掴めるまでトライトライトライ。


 次、②について。

 人の顔を認識するのが苦手。

 ぼくの場合は、人の顔のパーツを細かく見られるほどの視力あるいは認識力がない。

 あくまでおそらく、だけど。

 目、鼻、口とかはもちろん分かる。

 分かるけど、特徴を捉えられるほどパーツの形を認識できるわけじゃない。

 ので、あの人は誰々さんとかあの人はこの有名人に似てるとかそういうのが一切分からない。

 ああ、顔だけじゃないな。

 姿もうまく認識できない場合もある。

 同じ服……例えばスーツとか、学生服とか統一されたものを着られるともうダメ。

 アナタハダレデスカ? みたいな。

 これについての対処法は、相手の声、仕草、癖、歩き方、あと極端なら背丈とかを覚えることで補う。

 まあこれは普段から関わりがある人に限られてくるんだけどね。

 仕事で顔を合わせるとか、友達とか。

 だから、たまにしか会わない、会えない人に関してはどうしても誰この人状態。

 勘弁してね。


 最後に③のこと。

 文字の読み書きが不便。

 限定的になら裸眼でも書けるし読める。

 マジックペンとか、フォントが大きいとか太いとか。

 でも普段目を通す書類とか、書く文字とかは裸眼じゃ無理。

 対処法はこれまた簡単。

 ルーペを使う。

 今ぼくが使ってるのは、んー……なんていうか、そう、虫眼鏡に似てるかな。

 それを使えば、基本的な読み書きはすべて補える。

 新聞の文字も読めるし、少し無理すれば蟻くらいのサイズの文字も書ける。

 蟻くらいのサイズの文字はしんどいからやらんけど。


 とまあこんな感じだね。

 不便なことはあるけど、そんなことはどうとでもなるんだよね。

 物心ついたときからずっとこの状態だったわけだしね。

 吹っ切れるとはまた違うかな。

 うん。

 当たり前、だ。


 あっ。

 そういえば、昔の手術の影響で、左眼もたまに見え難くなるんだよね。

 左眼の網膜に放射線当てたっていうのの関係なんだけど、それによって網膜の一部が薄くなってるんだ。

 そこに、細ーい血管がいくつも出てきて、うじゃうじゃと。

 そいつらが脆いもんで、ちょいちょい出血する。

 そこで出血しないやつもあるんだけど、それは血のコブになって結局は破裂、出血する。

 硝子体出血っていうんだって。

 出血すると、少し靄がかかったようになる。これがちょいと見えにくい。

 出血自体は微量だし、すぐに止まることがほとんど。

 出血した血管は枯れるし、出血が微量なら数週間とかそこらで吸収されてあら不思議、何事もなかったかのようにすっきり。

 と、それならいいんだけど。

 たまーに出血が微量じゃなかったり、出血が重なったりして靄がひどくなる。

 こうなると吸収に数ヶ月かかったり、最悪まったく吸収しなかったりなんてこともある。

 そうだなぁ、分かりやすい例を挙げるとすると。

 微量出血の場合は、お風呂で湯気が上がってちょっともや〜っとしてる状態。

 出血がひどい場合は、テレビで住所特定とかを防ぐために使われるモザイクが常時視界を埋め尽くしてる状態。

 厄介でしょ?

 困るってもんだよ、ほんと。

 視力が著しく下がるんだよ。

 がくーんと。

 で、そんな見え難いなったときは読み書きとか支障出るもんだから、手術して硝子体をきれいにするんだ。

 それで大体解決、すっきり見えるようになる。

 でもねー、見え難い期間はねー、ほんっとーうに色んなものが見え難いからしんどいんだよね。

 例えば、絵を描くのが趣味なんだけど、それももう線なんて引けなくなるからね。

 他にも、アニメとかテレビ観るの好きだけど画面がもや〜ってなったり、ゲームも何もかんも。


 おっとっと。

 ちょっと愚痴っぽくなっちゃったね。

 まあ色々ぼくのことを話してきたんだけど、何が言いたいか。

 一番は、


「それでも、一人の人間として偏見なく見てほしい」


ってことかな。

 人間できてるわけでも、いい奴でもないんだけど、だからこそ、障害者って枠組みで見ないで一人の人間として認識してほしい。

 それはぼくだけの話じゃない。

一人でも、偏見を持って見る人が減ってくれると嬉しいな。

なんて。


 じゃ。

 ぼくの話はこれで終わり。

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