僕は君に本音を言わないけど、君は全てお見通し!
僕の彼女は、僕の心が見えているのか?
何でもお見通しだ!
僕の怒りに任せた言葉も、彼女はすべて知っている。
本当は、僕は一人じゃ生きていけない。
君なしではね。
僕は誰にでも素直に自分の想ってる事を言えない。
遡れば、僕が子供の時からそうだった。
父も母も、僕より8つ上の兄の事ばかり可愛がった。
僕は、学校でも落ちこぼれで親は僕に見向きもしない。
でも、そんな僕の事をちゃんと見ててくれたのは?
“8つ上の僕の兄”だった。
僕は、兄と二人の時はいつもこう言われた。
『なあ、蓮! 絶対に自分の“本音”を他の人に見せるなよ!
俺もお前しか見せてないんだ! 親父やおふくろには絶対に
見せることはない! だから、お前もそうしろ!』
『うん! 分かったよ、兄さん!』
僕も兄も、家の中でも外でも【仮面】を被る事にしたんだ。
本当に、自分を理解できる人は僕には兄しかいないと思ったからだ。
でも? そんな兄も高校を卒業して地方の大学に行く事になり僕を
置いて、この家を出る事になった。
『連! お前も高校を卒業したら、この家を出ろ! 外の世界は
凄く広いんだ! 俺もお前も、ちゃんと理解してくれる人に出会
える日が来る!』
『・・・でも、兄さん、』
『大丈夫! お前がこの家を出る時は、俺の住むマンションに来い!
お前一人ぐらい、面倒見て行けるから。』
『うん!』
『じゃあなー弟よ!』
『じゃあね!』
*
・・・あれから月日が流れて。
僕も無事に、高校を卒業した。
大学は、兄の住むマンションから通わせてもらう事になった。
僕たちの両親も、兄が僕の面倒をみるなら大丈夫だと行って
家を出る事を許可してくれる。
僕が兄の家に引っ越しの荷物を片付けていると?
兄の彼女が、兄に会いに来た。
『あら? 高ちゃんの弟?』
『連! 俺の彼女の片桐ミユさんだよ』
『・・・あぁ、弟の連です。』
『高ちゃんの8つも下なんだって! 可愛いわねぇ~』
『・・・・・・』
僕は兄の方を何度も見た。
兄は、僕に彼女は大丈夫だと目で訴えている。
僕も、気さくに兄の彼女に接することにした。
*
・・・それから、1年3ヶ月。
僕もやっと、僕を受け入れてくれる彼女に出会う。
僕はその彼女と付き合う事になり、兄のマンションを引っ
越す事になった。
1年3ヶ月後の冬の事だった。
冬の寒い日に、僕は自分の荷物をまとめて彼女の家に転がり
込んだんだ。
彼女は、僕の事を理解してくれる人だった。
僕は、屁理屈ばかりで筋道を立てて話す事ができず、直ぐに
キレてしまうタイプの男、なかなか友達も出来ない奴だ。
それなのに、僕の相手を彼女だけがしてくれた。
僕は言いたい事があっても、なかなか相手に伝えられずに少し
怒り口調になってしまう。
だから、相手からしたら嫌な気しかしないはずだ。
頑固で無口で、喧嘩っ早い。
人付き合いも悪いし、本当の自分の気持ちを言わない。
そんな僕を、彼女は辛抱強く見てくれた。
彼女は、僕の事は何でもお見通しだ!
僕が泣きたいのに泣けない事も、辛いときも弱音を吐かない
時も、苦しい時もどんな時もいつも彼女が僕の傍に居てくれた。
兄の言った通りだ!
いつか僕の事を分かってくれる女性が現れる。
今、僕は幸せだよ!
何でも僕を分かってくれる彼女が僕には居るから。
ずっと、このまま。
君には、僕の傍にいてほしいんだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。