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本日俺は死んだ

夢で見たストーリーを脚色してUPしてみました、まったり更新ですがお気に召すと幸いです。


 ぞろぞろと歩く人の流れ、俺は先頭集団に居り後ろから押される様に進んでいく。


 京都のような街並みを抜けて行くと、眼前に増改築の繰り返された山の斜面一面の旅館が眼前に広がった。

 『 まるで千と千〇みたいな湯屋みたいな建物だな・・・ 』が折れの最初の感想だった。



 入口へ誘導するように立ち並ぶ就業員、その奥に女将と思われる真っ白なとても奇麗な女性が佇んでいる。


 真っ白な和服に白髪のロング。

 瞳は真っ赤で振袖には狐の柄が織り込まれている。

 ひざ丈まである髪は腰元で結わえられ、まるで尻尾の様にゆらゆらと揺れている。


 そんな彼女が深々と頭を下げ、歓迎の挨拶をはじめた。


 「 狭間の旅館 ” 彼の世の一丁目庵 ” に、ようこそ御出でおこしんした 」

 深々と頭を下げる美人女将には後光がさすように輝いているように見え、一瞬立ち眩みを覚えた。


 ・・・・・・・・・・


 通された部屋は和室で、畳の上で座布団を枕に今日一日の事を思い返していた。




 俺の朝は早い、職場まで2時間・電車を乗り継ぎ都心の商社のビル前の地下鉄の駅から人の流れ、ビルに吸い込まれて行く。そんな日常だが、その日は違った。


 まだ低い位置にある朝日が、自宅の表札を照らす ” あずま” 俺の城だ。

 そんな自宅の門の前を黒猫が横切る。

 早朝にもかかわらず、カラスの群れがゴミを漁り羽音を立てていた。

 中学生の息子と高校生の娘とも久しく話していない。年の差結婚で15歳年下の妻の” あずみ ”ともすれ違いが5年ほど続いている。当然レスである。

 残業で夜も遅く、帰宅は0時を回る事が殆ど。もう惰性で働いていると言っていい。

 しかし仕事は遣り甲斐はあり、営業成績は常に上位。家庭を顧みないダメな父親なのだろう。


 今日も新規プロジェクトの会議でプレゼン。

 これが決まれば今月もトップに成るだろう。


 自宅から駅に向かう途中、俺の前を大きな旅行鞄を引きずる若い女性、その横を5歳くらいの女の子が歩道と車道の路肩を行ったり来たりしながら歩いている。

 『 こんな早い時間 訳アリなんだろうな・・・・』そんな事を考えながら親子の距離が縮まって行く。


 後方からトラックがフラフラと蛇行しながら結構なスピードで迫ってくる。

 嫌な予感しかしない。


 俺のすぐ後ろまで迫ってきたトラック。

 そんな折、幼女が車道側に転んだ。


 「 っくそ! 」

 プレゼン資料の入ったカバンを投げ捨て、駆け出し幼女の服を掴み歩道に投げ入れた瞬間



  ドン!!


 俺は宙を舞った。

 不思議と痛みは感じない。


 地面を数度バウンドし幼女を見る。

 ポカンとした表情の子供の顔が目に飛び込む。


 『 よかった・・・ 』

 しかし、再び視界いっぱいに広がるトラック。



  バキボキメキ!!


 トラックが俺を挽く。

 首元から胸、両足がタイヤの下を潜る。

 そこで、一瞬の内に意識が飛んだ。


 ・・・・・・・・・


 次に気が付いた時、現場を俯瞰する俺の視点。

 か細い糸のような物が、俺と体を繋いでいるのが見える。

 血みどろで襤褸雑巾のような俺。体が変な方向に捩れている。

 不意に糸が、プツリと切れた。


 空中に引き上げられるすごい力が俺を包む。

 しかし、投げ捨てたプレゼン資料のカバンが気になりそれに抗う。

 俺に残された唯一の未練・・・・今日のプレゼン。

 必死に手を伸ばすともう少しでカバンに手が届く。

 空へと吸い上げられる力と俺の未練が拮抗する。

 次第に俺の抗う力が勝り、カバンに手が届いたところで、吸い上げられる力が不意に途切れた。


 ・・・・・・・・・


 次に気が付いたのは、いつもの路地。

 日は少し高くなり、妙に傾く視界が家路へと向かう風景を見せる。


 商店街の窓ガラスで自分の姿を確認する。

 首が異様な方向に曲がっている。


 立ち止まり、自分の首を正常な位置へと戻すと、何とかいい具合に納まる。

 ぶらぶらと力なく揺れる俺のでも、根性で元の位置へと戻すと、血まみれのスーツ姿の俺の姿へと戻った。

 まだシャワーを浴び、スーツを着替えれば、プレゼンには間に合う。


 玄関を開けリビングに入ると、あずみとあずみの同級生がイチャついていた。



 俺は急に感情が抑えきれなくなる。

 純粋な怒りだ。


 二人の吐く息が、白く見え始める。


 「 なんだか急に寒くなってない? 」あずみが甘えるように囁く。

 「 じゃ、俺があたためてやんよ 」

 二人は更に体を寄せ合う。


 俺は二人に近づき、あずみの結婚指輪に触れる。



  パキ!!

 「 痛ぁ! 」


 割れるはずのない金属のあずみの結婚指輪が割れた。


 俺が怒りに任せテーブルを叩くとテーブルの上に置いてあった皿が、滑るように床に落ち粉々に砕け散る。


 二人の周りをまわり、窓ガラス拳を振り下ろすとビシリとひび割れが走る。


 そして、二人の首に手を掛けようとしたとき、不意に誰かに肩を掴まれた。

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