天使ちゃんはテンパっている
天使ちゃん視点です。
(ふわぁぁああ?! びっくりした)
悪魔様を見つけてナイショでついて行ってみたが、まさか気づかれるとは思わなかった。今でも心臓がバクンバクン言っている。
(でも、格好良かったなあ)
声も、素敵だった。もっと話してみたい。そう思うのに逃げ出してしまった。
だって、あの鋭い目で見られると、自分を見透かされたような気がして上手く言葉が出ない。ああ、そんなところも好きなんだけど、そうなんだけど、もっと悪魔様と話して、触れて、色んなことを知りたいのに。
うぁぁあああ、と情けない声でうずくまる。
(なんでわたし、チャンスをのがしたっ……)
天使の私は普段悪魔ゾーンに来れないのに。
もう、二度と会えないかもしれないのに。
そんな思いが神様に届いたのか、それとも私の都合のいい妄想なのか、二度目のチャンスがやって来た。
「おい、やっぱり体調悪いのか」
「ふぇ?」
「ほら、泣くな。今親御さんのとこに帰してやっから」
「うわぁ!」
視界が高くなって、気づいたら私は悪魔様の肩に乗っていた。そのぬくもりは温かくて、これは現実なんだと優しく包み込むように教えてくれる。
「暴れるなよ」
(笑顔、可愛い)
ねえ悪魔様。
「大きくなったらお嫁さんにしてね」
悪魔様は目をまあるくして、でも楽しそうに笑った。
「ああ、お前が覚えてたらな」
約束、と指切りする。
(悪魔様はやっぱり格好良い)
でも、まだまだ甘い。
(天使は見た目に反して、意外と、狡いんだよ?)
近い将来、悪い女に騙されそうだ。まあ、私が悪い女なんだけど。
悪魔は約束を破らない。天使は約束を忘れる。コレが天界の大原則だというのに。