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亜人転生~辿り着いた想い~  作者: 吾郎
一章 海族
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3. 4年2日目 友達

俺は茂みに隠れながら、ばれないように静かにしている。心臓の音がうるさいほどになっている。


 俺は目の前の光景が信じられなかった。騎士は、正義の味方のような、そんな都合の良いイメージがあったからだ。

 だが、実際はどうだろう。木に縄で縛りつけられた無抵抗な少女に、剣を構えている。助けるどころか、完全に牙をむいている。俺の中の騎士の株は暴落だな、何が正義の味方だ。

 いや、今はそんなくだらないことを考えている場合じゃない。目の前で、生死を争うようなことが起きているのだ。どう行動するかを考えねば。

 ......どうする?


 助けに行くか?俺ならそれもできるだろう。なんせ、人を殺したことがあるからな。だが、それはあくまで相手の装備が整ってなかっただけだ。目の前の騎士を見てみろ。全身甲冑だぜ、それも動きにくそうなことこの上ないくらいに全身防備だ。俺の魔法が通らず、そのまま俺もあの子も死んでしまう......という落ちだろう。うまくいけば最善だが、うまくいかなければ最悪。完全に賭けだ。


 それとも放っておくか?その場合俺は確実に助かる。気づかれないかが問題だが、気づかれさえしなければ楽勝だ。騎士たちの意識は完全に少女に行っている。それに、さっきも言ったが、動きにくそうな甲冑だ。逃げ切ることは容易だろう。この方法は確実だが、1つの命が失われることになる。


 逃げてしまえばいいじゃないか、という現実的な心と、助けて2人で生きて帰るんだ、という、非現実的な心の間で、葛藤が起こる。

 逃げずに立ち向かうか?どこの勇者だよ。俺は平民だ。そんな正義感にかられる必要はない。

 じゃあ逃げるか?お前はこの状況を放っておけるのか?お前は、人一人として助けられないような情けない人間なのか?


 ......ああ、埒が明かねえ。


 そのまま数分。いや実際は1分もたってないだろう。ただ、その時間が物凄く長く感じられた。

 結局、俺は逃げることにした。俺は人一人救えない愚図でもいい。ただ、生きていれば取り返しがつく。そう、自分に言い訳して。

 俺はゆっくりと、茂みから動いた。


「だ、誰か助けて!」


......!体が震えた。......なんで、俺は逃げてんだ?この愚図が。


 気づけば、俺は動いていた。しっかりと2本の足で立ち、腕を伸ばし、1人の騎士の下に標準を合わせる。

 そのまま魔力を込め続け...


石槍(ロックスピア)!」



 3メートルほどの円錐が騎士の体を貫く。装甲はもはや意味もないというほどに砕かれ、騎士は絶命。

 何が非現実的な考えだ。元から、この世界は......


 非現実的というのにピッタリじゃねえか。


「な、何だ!貴様は誰だ!なぜそのようなことをする!」


 騎士が慌てたよう言う。俺はニッ、と笑いを作り言った。


「僕はただの子供ですよ。何でかは……自分の心に聞いてみてください」


 俺はカッコつけていい、騎士の下にもう1度石槍を放つ。

 騎士は上空4mほどまで打ちあがり、そのまま倒れた。おそらく死んだだろう。


 俺はほっと息をつき、そして言った。


「......案外賭けに出てみるもんだな」


さって...じゃあ、後始末をしますか。

****


「よし、これで大丈夫だろう」

「あ、ありがとう...ございます」

 

 少女は俺に向かいペコリと礼をした。

 少女の容姿は、まず注目すべきは背中の羽だ。天使のような羽が生えている。亜人だろうな。

 髪は白だ。目は黒。何というか、天使をそのまま人にしたような感じだ。

 顔はというと...幼さが前面に出ている感じだ。ただ、行動や言動は大人びている。成長が遅い系の亜人だろうな。

 

 ってか、俺この子の情報全く知らねえわ。聞いとこ。


「そういや、君の名前は?」

「...名前はありません。天人族ですので」

「……天人族って、名前貰えないの?」


 もしそうだとしたら不便だな。どうやって区別してるんだろう。「1号、あれやっといて」 みたいな?いや、ないない。

 

「天人族は、10歳にならないと名前が与えられないんです。」

「えっと、今何歳なの?」

「...5歳です。あなたは?」


 え、5歳?まじかよ。種族柄じゃなかったわ、何でそんなしゃべれるんだよ。


「僕は4歳だよ」


 すると1号...じゃなくて目の前の少女は驚いたような顔をした。


「え、うそでしょ?4歳なのにあんな魔法をつかえるの?」

「それはこっちも同じだわ。なんでそんなぺらぺらしゃべれるんだよ」


 お互いに少しの沈黙が流れる。気まずい空気だ。あの子も俺と同じで、反論できない状況だろう。なんでかは分らないがな。


「...お互いに謎が多いですね」

「そうだな。ま、今度からは気をつけろよ」


そういって俺はその場を去ろうとした。


「え、ちょちょと!待ってください!」


 少女は俺を引き留めた。いや、なんでだよ。


「お、お願いします、いかないでください!」


 少女は泣きそうになっていた。俺が何したってんだよ。あ、色々したか。でも実際、見捨てようとしてたわけだし...ここはついてこないほうがいいだろう。


「なんでだ?僕では何の役にも立てないだろ?」

「そ、それでも!私の隣にいてください!」


 う~む。頼られるのは悪い気分ではないがな...

 

「えっと...住む場所とかは?僕の家は流石に無理だぞ?」

「じ、じゃあその家の近くにもう一軒、さっきの石の魔法で家を作ってください!」


 そんな簡単なことじゃないんだがな...石の魔法もそんな自在には操れないしな。それに、いろんな問題もあるが...ま、今の親しか知り合いがいない状況よりはマシになるだろう。


「...分かったよ。でも、食べ物とかは自分で何とかしろよ」

「はい!ありがとうございます!」


 こうして、俺は友達ができたのであった。


 その後、騎士の武装を剥ぎ取り、骨は土に埋めといた。鎧とかはかなりな高値で売れるだろうしな。

 そんなこんなで、俺が家に着くころには、もう夕方になっていた。

 まあ、この剣とか鎧とかでいくらか金は浮くだろうから、許してもらえるかな?

 と思って親に渡そうとしたが、怪しまれるのを危惧して置いておいた。



 因みに、あの子には森の中にいてもらった。夕飯を食べたら戻るつもりなので、それまでは何とか生き延びてもらおう。

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