1.4年1日目 1/8=??
4歳。
聞くだけだとまだまだ子供に感じてしまう。しかし、もう赤ちゃんなんて年でもない。
自分で歩ける。これはかなりでかい。ハイハイよりも効率がいい...と思うし、何より、外に出れる。
外に出れると、やれることが格段に増える。火の魔法とかも多分あるだろうが、それをぶっ放しても誰も文句は言うまい。山火事になったら知らん。
そして、話せる。俺はこの世界の実情とか知らないからな。おとぎ話は何個か聞いたが...「ゆうしゃのこども」とか、「まほうのきもち」とか...何というか、子供っぽいものが多かった。まあ、子供だし仕方ないだろうがな。あ、でも「柱神神話」は気になったな。
今までは、そんな気になったことも聞けなかったが、声が出るようになったので話せるようになった。
まあ、いきなり母の前で「天上天下唯我独尊!」って言ってみたら、ものすごくビビられた。んで、「あ、ごめんなさい」って言ったらやっぱりビビられた。そらビビるわな。その情報は父まで行ったようで、帰って来たら、「流石、俺の息子は天才だな!」と言っていた。ビビるそぶりをしなかったのはすごいが、ちょっと自信過剰すぎないかね?いや、悪いことではないがな。
とと、話がそれてしまった。つまり、何が言いたいかというと、家族と話せるようになったのだ。そして今日はみんなが集まる日。そう、誕生日だ。今日は珍しく父もいるらしいので丁度いい。
さあ、第一段階だ。俺がこの世界で...
『後悔』なく生きるための
****
「トルちゃん!おめでとう!」
「おめでとう!いやあ、早いもんだな」
「ありがとうございます」
周りから歓声を受けながら、俺はテーブルに腰かけた。
食事は...いつもと変わらない。相変わらず、焦げたパンみたいなのと、狩ってきたと思われるイノシシか何かの肉だ。前世の記憶から行くと、かなりまずい部類に入る。
しかし、母と父が頑張った結果だ。並々ならぬ愛情が注がれている。なので、決してまずいなんて言わない。
さて...
「今日は皆さんに大事なお話があります」
「ほう?」
「ん?」
俺はすぅう、と息を吸い込んだ。
「...僕、外に出てみたいんです。」
父と母は、こちらを注目している。
「...いいけど、なんでだ?」
まあ、そうなるよな。
「実は、魔術に興味があるんです。ただ、この家でやるのはちょっとダメだなと思いまして」
許してくれないと今後の予定が狂うんで、許可してほしいんだが...どうだ...?
「うーん...でもなあ...」
父は悩んでいるようだ。うむむ、ダメかなあ
しかし、母は、
「いいじゃない!この子、赤ちゃんの頃から魔法を使ってたのよ!」
という事らしい。やったぜ。
てか...バレてたか...まあ、隠す気もなかったしいいんだが...
「...そうか...うし、いいだろう。でも、ちゃんと飯の時間には帰ってくるんだぞ?」
「...!はい!」
よし!まずは第一関門突破だ。次は...よし、明日になってから考えよう。
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まぶしい日差しが俺の目に当たる。どうやら朝だ。
俺の家には朝飯なんてものはない。昼と夜だけだ。というわけで、俺は今から外に出る。
と、部屋に出たところで父にあった。
「...ホントは、お前を外に出したくないんだがな...」
「なんでですか?」
俺は怪訝な面持ちで聞く。父は、下を向いて悲しそうに言った。
「...この町は、エルフしか住んでいない。エルフはいろんな髪の色がいるが...
赤と青はあまり居ない。だから、お前みたいな...」
「ちょちょちょ!待ってください!」
俺は自分の髪を見る。茶色だ。髪が赤?なんだよそれ。こんな状況で
冗談は勘弁してくれ。
「...そうか、見えないのか。お前の髪...てっぺんだけだが赤色だぞ」
「は、はあ?」
そう思い、髪を抜いてみる。
先半分はは茶色だ。日本でもたまによく見る色だ。だが、後ろ半分は...赤色だ。
「な、なんで...だ?」
髪の色が途中から変わっている。それ自体は珍しくないかもしれないが、両親のどちらも普通の髪だし、鏡なんてないので、途中から変わっているなんて知らなかった。なぜだ?
「...俺はな、海族のクオーターなんだよ。」
クオーター。つまり、俺は...
「8分の1...ええと、なんていうんでしたっけ」
「それは分らんが、とにかく、だ。なんでお前がそうなったかは知らんが、お前が赤色の髪をしていると、あまりいい顔はされない。海族の髪の色だからな。昔はそうでもなかったが、今じゃエルフは海族とは亜人種きっての犬猿の仲って言われるぐらいだ。」
心配してくれてるのか...いい父さんだな。なんか反抗する感じで申し訳ない気持ちになる。でも...
「大丈夫ですよ、俺はうまくやっていけると思います。」
「なんでだ...?」
そこで俺はフッ っと笑いを作って言った
「父さんの子供ですよ?」
父は少し不意を突かれたような顔をしたが、すぐに笑顔になり、俺を見送った。
因みに、父がどんなことをしてきたのかはこれっぽっちも知らない。故に、さっきの言葉はかっこつけて言ってみただけだ。でも…さっきので俺の事を信じてくれたら嬉しく思う。
そんなことを考えながら、俺は玄関のドアを開け、外に向かった。