12. 4年4日目 己の怒り
現在ルビがうまく振れておりません。修正中ですので、お待ちください。
2:17 修正しました。
ガキン!!
風の魔法と剣から放たれる斬撃が交差して、プラスのような形になる。
「ぐぬぬ......」
俺の鎌鼬と斬撃の威力は同じくらいだ。ゆえに、鍔迫り合いのようなことが起こっている。
火花が散っている。よくよく考えてみれば、異様な光景だ。
「はぁっ!」
「くっそ!」
しかし、俺にはその光景をただ眺める事はかなわない。男が、さらに2つの斬撃を放ってきた。
俺もそれを耐えようと2つの鎌鼬を放つ......が、向こうの斬撃の力が強まったのか、斬撃が少しづつだがこちらに近づいている。
「鎌鼬!」
俺は、3発の鎌鼬を何とか放ち、斬撃をはじく。が、それと同時に、俺の魔法もかき消されてしまう。
「雷光 !」
「遮雷 !」
リナが落雷の魔法で相手を足止めしようとするが、レジストされてしまう。
よし、この隙に......
「鎌鼬!」
「ぬっ!?」
よしよし、意表をつけたな。これで、少しは体制を崩せるだろう。
と、思った瞬間。
ブォン!という風切り音を伴い、斬撃が俺たちに向かって飛んできた。
俺は咄嗟に高出力鎌鼬を放ち、何とか対処する。
「なかなかやるではないか」
「......やっぱ倒せてねえよな。ってか態勢さえ崩さないのかよ!」
そんな俺の言葉を遮るように、もう一つ斬撃が、放たれる。
俺も鎌鼬を放ち、それを遮る......
......なんか、攻撃パターンが一定だな。
ちょっと、イレギュラーな対応してみるか。
「ふんぬ!」
斬撃がまたまた放たれる。
「水線!」
俺は斬撃をなぞるように水魔法を放つ。
「ぬ、ぬおおお!」
男に水線が当たる...が、すでに放たれた斬撃は止まらない。
「鎌鼬!」
斬撃を弾いた俺は、斬撃の性質について考察する。
おそらく、斬撃は風魔法だ。見た目が鎌鼬と同じだからな。
次に、水線で弾けなかったことを考えるに、少なくともこの斬撃は属性の違う魔法は貫通するのだろう。もしかしたら、全ての魔法もそうかもしれない。
ついでに、あいつは水魔法のレジスト手段を持っていない可能性が出てきた。これは、水線を試してみるべきだろう。
俺は、立ち上がった鎧に穴の開いた男に向けて指を向けた。
「水線!」
これは行っただろ、と思った瞬間。
「遮水!」
まさかのレジスト手段を持っていた。いや、まさかでもないか。
だと、なんであの時発動できなかったんだ?もしかして、連続で別の魔法に対応できないとか?
......その線はあるな。
「鎌鼬!水線!」
俺が唱える。さぁ......どうだ?
「ふんぬ!はぁ!」
あいつ、剣から斬撃を放った直後に剣で水線を弾きやがった!
でも......これは、多分あたりだろう。おそらく、あいつは連続で同じ属性の魔法に対応できない!
でも......鎌鼬と水線だと、剣で対応される。
石槍は、照準を合わせるので連続で使用できない.......
どうする?と俺は意味もなく周囲を見渡す。
ふと、リナが目に入った。......連携、してみるか。
俺はリナに耳打ちで伝える。
「リナ、あいつの弱点が分かった、あいつは、連続で違う属性に対応できない」
俺が耳打ちをしていると、その隙にと、男が斬撃を放ってくる。
「鎌鼬!鎌鼬!」
俺は2発を撃ち、すぐに耳打ちを再開する。
「そうか......だからシンは、さっきあんなことしてたのか......」
「シン......ああ、だから俺が石槍を放つと同時に、雷光を放ってくれ」
「わかった、善処する」
シンと呼ばれるのは相変わらず違和感が満載だが、リナには俺の作戦が伝わったようだ。
「じゃあ、行くぜ」
「うん」
俺はすうぅっ、と息を吸い、そして言った。
「石槍!」
俺の呪文を聞いてから、リナは魔法を放った。
「雷光!」
男に、上からも下からも魔法が放たれる。
「ぬっ、ああああああ!」
男の悲鳴が響き渡る。周囲に埃が舞った。
やったか!?と思うが、気を抜かないで行こう。それでやられたら元も子もない。
次第に埃が少なくなっていき、男の姿が見える。
そこには......
「......やったな」
「うん」
男の死体があった。体の一部が燃え始めているので死亡とみていいだろう。
「喜んで......いいのか?」
「シンが喜びたいなら喜んでいい。私は静かに喜ぶことにする」
......俺も静かに喜ぶとするか。
俺は心の中で盛大なガッツポーズをしつつ、男の死体を埋葬してやった。
恩義なんて微塵もないが......それでも、これぐらいはしてやらないとな。
「さて......と」
俺はイアの方に目を向ける。イアに周囲の情報を聞きたいからな。
「おーい、イ......」
俺はイアを見た瞬間、頭が真っ白になった。
イアが倒れている。
俺は真っ先にイアのところに向かい、呼び起そうとした。
「イ、イア!」
「どうした、シン?」
埋葬の手伝いをしていたリナがこちらに戻ってくる。
「こ、これは......」
「イア!しっかりしろ!」
見たところ、切られた跡などは1箇所で、それほど深くはない。
となると......毒か?
「イア!イア!」
俺がイアを必死に呼び起そうとする。
誰だよ、こんなことをしたのは。
その瞬間、声が聞こえた。
「ここまで気付いてもらえないって......かわいそうにもほどがあるねえ」
見知らぬ男の声。それが、俺の前方から放たれる。
「ああ、大丈夫。死なないように調整したから」
「誰だ、テメエ......」
俺は怒りに染まっていて、死なないようにした、という言葉も届かなかっただろう。
しかし......この声だけは俺に届いた。
「僕の名前はレルム=ペルセウス。ま、名乗るのも惜しいけどね。赤毛の悪魔くん」
始祖ペルセウスの末裔。レルム=ペルセウス。
その名は、俺の記憶に「敵」として植え付けられた。
「殺してやるうううぅぅ!」
俺の、理性と引き換えに。