10. 4年3~4日目 つながり始めた物語
むっとした空気が、森の中に漂う。
目の前からは焼き付けるような熱が伝わってくる。
その光景は、地獄のようなものだった。
「うっ......っつ、これは長くいたら火傷しちまうな」
俺は、変わり果てた商店街を見て思った。
数多くあった家屋は倒壊しながら炎を立てており、店の品物の野菜や魚、武器や鎧も、それぞれ炭になったり黒ずんだりしている。
そんな中で........異様な雰囲気醸し出している物があった。
蒼白の竜。この地獄のような光景の中もあり一層と神々しさが増している。
「グォアアアア!」
竜の2本ある角が青色の反応をし始め、周囲に電気が漂う。
やがてそれは、4mはある竜の体を通り、地面に到達する。
その瞬間、轟音と共に1つの電気の球体が竜ごと飲み込むように発生した。
俺が名づけるとしたら、雷球とでも名付けるだろう。
ともあれ、そんなドラゴンが商店街を占拠しているように見えた。
「行くぞ!怯むな!相手ももう持たないはずだ!」
しかし、それは先入観だった。実際は、翼はボロボロで、傷が多くある。満身創痍という感じだ。
来て正解だったと思う。このままじゃ俺の予想だと10分と持たない。
「よし......行くか」
俺は、激戦区に向かい歩き始めた
****
俺が着いた時、事態は予想道理悪化していた。
「電魔法のレジストを!」
「「アンチエレキ!」」
「グオォォォ......」
竜の角が1本おられている。それで力が出せないようだ。
「皆!俺に続け!」
「「おおー!」」
騎士団だと思われる人間たちが突進する。俺がやられたときにいた兵士たちよりも武具の質がいいから、ここより発展した所........王都のようなところから来たんだろうな。
「グガアア!」
「アンチファイア!」
雷魔法を封印された竜が炎魔法を唱えようとするが、後ろにいた魔術師たちにより叶わなかった。
........これはそろそろ、俺も突撃した方がいいかもしれないな。
「石槍」
俺は少し声を抑えつつ、魔法を放った。
「うおっ!」「グハ!」「うぅ......」
騎士たちがどんどんぶつかり倒れていく。流石にこの手は引っかからないだろうと思ったが......案外効くもんだな。
「っ!総員、迎撃態勢に入れ!」
「「はっ!」」
続いて、魔法使いの集団から声が聞こえた。気の入った返事をしてやがるな。
やがて、リーダー格のような人間は俺の姿を認めると、こう言い放った。
「相手はただのガキだ!捕らえて尋問しろ!」
「「はっ!」」
捕らえて尋問ねえ......酷いことするもんだな。
勿論、あっさり捕まって尋問される気はない。わざと捕まって内部から壊滅させるのも考えたが、そううまくはいかないだろうし、やめることにした。
水の魔力と石槍の応用をして........
「氷槍!」
じゃあ......目にもの見せてやりましょうか。
「グホァ........」
「だ、団長!」
魔法使いのリーダー格が俺の新たな魔法によって撃ち抜かれる。串刺しになっているわけではないが、かなりな大けがをしたと思う。これで魔法部隊は少しの間動けまい。
「グガアアァァ!」
竜が、なんで来たんだ!といわんばかりに咆哮してくる。が、俺はそれを無視する。
「総員、放て!」
今度は四方八方から矢が飛んでくる。これはどう対処したものか........
そうだな、あれを参考にさせてもらおう。
イメージは球体。俺の体を包むような感じで......
「風球!」
矢は俺の魔法によってずり落ち、そのまま落下した。何本かバリアを通り抜けてこちらに来たが何とかよけきったため問題ない。
しかし......アーチャー部隊は面倒だな。対処しておくか。
「水線!」
俺は使い慣れている魔法を使い、アーチャー部隊を一掃した。何人か逃した気もするが、まあ来たらバリアを張ればいいだろう。
残りは........
「騎士団......だな」
こいつらに対しては有効な手段を俺は持っていない。ので、完全にあの竜頼みになってしまうのだが........
「グオウ......グガッ!」
協力的な様子はないしな......
「怯むな、行くぞ!」
「「おー!」」
くそ、考えてる時間はないのか!
「団長に代わり、私が指揮をとる。皆、奴に向かって総攻撃だ!」
「「はっ!」」
魔法部隊も戻ってきた。という事は......
ビュン!
俺の頬に温かい感触が走る。頬を触れて確かめると、それは血だった。
「うっ......と、第3者から見てもやべえ状況だな」
決定打はもう使ってしまった。おそらく、槍系の魔法を連発すれば何とかなるだろうが、今俺は数年前の魔力切れと同じような状況だ。連発はできない。
「グォ........」
さらにこちらの味方(だと思う)竜は全く力が入らない様子。
相手は絶好調、こっちは絶不調......絶望的だな。
なんでこうも俺はすぐ追いつめられるんだろうな。詰めが甘いからか、そうだよな。
......悟ってる場合じゃねえ。何か有効手段を考えないと!
この際、味方......竜に多少被害が行ってもいい!あれでいて竜人だ、人に戻ったらどうにかできるだろう。とにかく、強力な範囲攻撃が必要だ!
範囲攻撃......範囲攻撃........強力......災害......炎?
「そうだ!」
燃えているがれきが落ちてくる。
あの時はいらないと思っていたが........ここで使うべきだ!
「総員、続け!」
「発射!」
感覚はあの時の感覚でいいはずだ。大丈夫、ほんの昨日の事だ。思い出せる。
ありったけの魔力をつぎ込んで放つ。途中、魔法が飛んできたり、矢が飛んできたりしたが、かすり傷で済む程度の傷だ。だが、集中力をそがれる。
大丈夫、出来る!
そう思うようにしながら、魔力をどんどんつぎ込む。やがて、意識が飛ぶ寸前ほどになった。
今だ!
「爆炎!」
ドッガアアアアン!
俺は、その音とともに、意識を失った。
****
「........これは、酷いな」
半人半龍の男は、静かにつぶやいた。
「転生......こいつも、極めると俺のようになるんだろうか」
「それはどうかな」
横にいた光......精霊が答える。
「俺も元はただの人間だった。だが......」
「転生を繰り返すうちにこうなったってかい?」
男は肯定するように首を縦に振った。
「それもあるだろうけど、君の場合その血が大半だよ。常人の血ではない。それを言い出したら、この子もだけどね」
「エルフに海人……それに古代風神と古代武神か」
「風神と武神はほぼ無いに等しいけど、かなりややこしい血統みたいだね」
やがて、精霊は遠い目をしていった。
「しかし......気になるな。魂が異常に少ない」
「そうだな........むっ?」
そこで、男たちは異変に気付いた。
「空間の歪........まだ成長仕切るには10年ほどかかりそうだが」
「場所は........イリアム周辺の森か」
精霊はため息交じりに言った。
「面倒だね......はぁ、いくよウロ坊」
「........ああ」
2人は歩き始めた。
少々の胸騒ぎを覚えながら........