8.4年3日目 騒乱の里
まず、俺を襲ったのは火の球だ。それも5発。
横向きに並んだ火の玉は、逃げ場をなくすように俺に向かって飛んでくる。俺を確実に仕留めるためだろう。
しかし、横向きなのは俺にとってはメリットだ。
「水線!」
その名の通り、水のレーザーが薙ぎ払われる。火の玉に当たったレーザーは、火をかき消し、奥にいる魔術師にも少しだがダメージを与えた。
「バカなっ!」
魔術師が声を荒げる。
確かに、さっきの攻撃だと並みの人間は太刀打ちできないだろう。命を失わないにしても、火傷では済まないような傷を与えられるはずだ。4歳児なら即死だろう。
しかし、俺は転生者。前世の知識を持って生まれた人間。カッコよく言えば、世界の理を外れし者。
並大抵の攻撃だと俺に傷をつけることも難しいだろう。
「おい、お前たち!一気に攻めるぞ!此方は6人、数では負けていない!ましてや相手は子供2人だ!ここで負けて、戦士の恥をさらすのか!」
「「おおー!」」
続いて、1人のリーダー格と思われる兵士と、5人の兵士。全員が鎧と槍を装備している。
攻め方は、全速力で俺に近づき、一気にとどめを刺すという感じだろう。実際、全速力でこちらに向かって来ている。しかも、横に列を作って。
ここはまた水線で薙ぎ払ってもいい。しかし、同じ手ばかり使っていたらなめられてしまう。そうやって相手の油断を誘うのは悪くはないが、慢心してこちらが油断してしまい、そのまま死んでしまうという事もありうる。
ここは冷静に、相手の速度を利用した魔法を使おう。
「石槍!」
兵士たちの目の前に円錐が現れる。その数6本。
全速力で走っていた兵士たちは、それをかわすすべもなく、そのまま激突。兵士たちは、槍の前でもがき苦しんでいる。
「ふぅ.........危ねえ」
実際、石槍での攻撃は制御については少し賭けなところもあったが、何とか成功して一安心だ。
が、敵の猛攻はまだ続く。しのがねえと。
そう思い、気合を入れなおそうと思った時だ。
グサッっと、鈍い音がした。
「っつ!」
俺の右腕に鋭い痛みが走る。やがて、それは熱を帯びて行った。
俺は慌てて右腕を見る。するとそこには、羽のついた木の棒。
矢が刺さっていた。
「っぐ!」
そう理解した瞬間、痛みがとてつもなく増す。俺は治癒魔法を掛けようかと思った。
しかし、それは無理だと悟る。
俺の右側から、ものすごい勢いの矢の雨が降り注いでくる。
その狙いは........イアだ。
俺の右足に体を寄せるようにして怖さを耐えているイアは、スナイパーたちにしてみれば恰好の的だ。
さっきは運よく俺の右腕に当たったが、これほどの矢の雨(50発はある)が降ってくるとイアに当たらないという事はほぼあり得ない
つまり、この矢を早急になんとかしないといけない。
「鎌鼬!」
俺は痛みが激しい右腕を必死に掲げ、そういって矢に向けて鎌鼬を放つ。
風の刃は矢を引き裂き、勢いを殺した。矢の残骸はぽつぽつと落ち、中には町民に当たるものもあった。
しかし、それは一部の矢を除いて、だ。
俺の鎌鼬は、横範囲は広いが、縦範囲はとても狭い。そのため、当たらなかった矢が何本も出てくるのだ。
「鎌鼬!鎌鼬!」
続けて2発を撃つ。それでも足りない。5本ほどの矢が、イアに向かって飛んできた。
気づけば、俺はイアに覆いかぶさっていた。
背中に矢が刺さる。温かい感触が背中を伝う。首や頭には刺さっていないため即死は免れたが、それでも治癒しないとしんでしまうだろう。
「ぁ........あ......嘘......」
イアは今にも泣きそうな顔をしている。俺が死ぬと思っているのだろうか。
俺もここで終わるつもりはない。何せ、4年だ。まだ4年しかたっていないのだ。こんなところで終わっていては、俺はとても後味の悪い死になるだろう。
それは、「後悔」以外の何物でもない。
だが、俺もあまり動けない。かろうじて足は動くが、姿勢を元に戻すのはこんなんだ。
どうしたものか........
温かい液体.......血が首筋や手首といった、あらゆるところをを伝っている。
大量の出血というわけでもないのに、ものすごく眠い。
意識がふわふわしてくる。もしかして、俺、何もできずに死ぬのか?
「........て.......げて...やく...」
朦朧とした意識の中、辛うじて聞き取れた声。
俺はその声を聴いて、意識を失った。
投稿が遅れてしまい、申し訳ございません!
ペースは今後落ちていくと思いますが、週1は必ず投稿しようと思うので、これからもよろしくお願いします!