第4話 天使の歌声
冬。冬は嫌いだ。すごく寒くて心まで凍り付いてしまいそうで。
何もない寂しい季節な気がして。
大切なものまで全て消えてしまいそうだと思ってしまう。
今日も学校帰りにいつもの場所に向かう。
もう彼女と会うことは日課になっていた。
今日はどんなことを話そうか。
ウキウキしてはやる鼓動を隠すように早足で歩く。
きっと今日も君と楽しい時間を過ごせる。......そう思い込んでいた。
その日はいつもとは少し違っていた。
公園に着くと君は出会った日のように、滑り台の上に立っていて。
美しい歌声を響かせていた。
初めて聴いた君の歌声はどこか悲しそうで、寂しげで。
今にも消えてしまいそうだと思った。
君が居なくなってしまうなんて考えたくもなかった。
彼女と会えなくなってしまったら、そしたら僕は......
それを思ったときには自然と彼女の元へ駆け出していた。
こんなに近い距離なのにすごくすごく遠く感じた。
もう僕には君しか見えていなかった。
君を手放してしまうのが怖くて、怖くて......。
気づいたら手を伸ばしていた。
僕は何度もつまずき、転びそうになりながらも彼女が立っている滑り台の下まで来た。
そこでやっと君は僕に気づいて、歌うことを止め、こちらに視線を向ける。
そのまま滑り台を一段一段上って行き、彼女の目の前まで辿り着く。
そして何も言わず君を思いっきり抱きしめた。
少しよろめく君をうまく支る。
すごく暖かくて、軟らかくて力を入れたらすぐに潰れてしまいそうだと思った。
彼女は最初こそ驚いたようだったが、僕を突き飛ばそうともせず身をゆだねてくれた。