第3話 束の間の幸せ
僕が初めて彼女と出会って数週間がたった。
あの日から僕の世界はほんの少しだけ輝きを取り戻した気がしていた。
今日も公園へ向かっていた。
最近は毎日学校が終わるとすぐに急ぎ足で行くようになっていた。
それは現実から逃げたいという理由だけではなく、君に会いたいと。
少しでも長く君と一緒に居たいと思うようになってきていたから。
このときはまだ気づいてはいなかったのだが、きっとこの気持ちは恋だった......と思う。
公園に着くといつもの場所にいつもの人影。
「こんにちわ。今日も居たんだ。」
僕はそうやって声をかけ君の隣に座る。
君はそんな僕に笑い掛けてくれた。
そんな時間がすごくすごく幸せで、ずっとこのままで居たいと願った。
どんなに辛いことがあっても君に会って話すことができれば、何でも乗り越えられる。
彼女にだけは何でも話すことが出来たし、ちゃんと僕の話を聞いて受け止めてくれた。
それに何より普通に会話が出来ることが僕にとっては特別なことだった。
もう君の存在は僕の生活に欠かせないものになっていた。
毎日毎日、君とたくさん話をした。
しかし君との話題は尽きることはなく、逆に話したいことがどんどん増えて行く一方。
そんな僕とは対称的に彼女はあまり自分のことを語らなかった。
その理由はわからなかったが、僕も無理に聞こうとは思わない。
誰にでも人に聞かれたくないことはある。
何よりも僕が根掘り葉掘り聞いて、この関係を壊してしまうことが怖かったから。
君に嫌われてしまうのが怖かったから。
そんな単純な理由からだった。
そして、こんな生活が1ヶ月、2ヶ月と続き季節も冬となったある日。
幸せな時間は突然終わりを告げることとなった。