第1話 最悪な日常
どんよりとした灰色の空。頬をなでるじっとりとしたなまぬるい風。
雑多な音と、たくさんのモノの臭いで吐き気がする。
この世界に素晴らしいモノなんて存在しない。
僕にとっては世界の全てがゴミも同然だった。
クソみたいな1日がただただやって来ては、時間が過ぎていくのを待つだけの日々。
僕は学校でいじめられていた。
いや。もういじめと言ってはいけないレベルなのかもしれない。
学校にいる間中、どんな時も僕に自由なんてなかった。
理不尽な暴力。浴びせられる罵声に終わらない嫌がらせ。
僕はクラスの奴らのストレスの捌け口だった。
なぜそのターゲットが僕だったのか、それは僕には分からない。
そんな日々の中で僕の心は麻痺していった。
でもこんな学校生活が嫌だからと言って早く家に帰りたいなんて思ったことはない。
僕の家は父、母、まだ幼い妹の4人暮らし。
数年前までは何処にでもある平凡で幸せな家族だった。
しかし、今は見る影もない。
父は、酷いDV男に。
何か気に入らないことがあると酒を浴びるように飲み家族に暴力を振るうようになった。
母は最初こそ父から2人の子供を守ろうとしたがそれも長くは続かず、今では自分のストレスを子供にぶつけ発散する最低な人間になってしまった。
妹に関しては、そんな両親を見ては酷く怯えすぐに泣き叫んだ。
幼いので仕方ないとも思うが、両親の苛立ちを募らせる1つの原因だった。
そのため悪循環を断ち切るため僕は妹を守らなくてはならなかった。
昔は、いい家族だったのに......
僕はいつも昔を思い出してはひとりひっそりと泣いていた。
こんな毎日の繰り返し。もう心身ともにボロボロで限界も近かった。
僕はこの最悪な現実から逃れるため、ひとりで公園に行くことがあった。
公園は家から程近いところにあり、立ち寄りやすい。
それでいて、人が居るところを見たことがない。
ひとりになりたい時にはうってつけの場所。
本当に小さな公園で遊具はブランコと滑り台くらいしかない。
ここは僕にとってとても心地いい空間なのだ。
唯一安心の出来るところで、ただひとつだけの僕の居場所。
この公園がなければ僕はもうこの世にはいなかったかもしれないと言っても過言ではない。
僕はある日、この場所で少女に出会うこととなる。
そして、彼女にこの生活を終わらせるきっかけを貰い、忘れていた感情さえもよみがえらせてもらった...