気に入らない関係
評価をいただけて嬉しかったので、投稿!
短いですが、どうぞ!
パタン、と玄関のドアが閉まる。
ヴィラは自分の手を見る。その手には少女の温もりと震えが今も残っており、ヴィラはそれを逃さぬように拳を握った。
[誰だ?]
セドにノートを突き付け問う。その目に怒りの火が灯っているのを見てセドは少し蒼くなったが、それはヴィラを苛立たせるだけだった。
[答えろ]
私の怒りを買いたくなければ、と目で訴えれば、セドはようやく重い口を開いた。
「レベッカのクラスメイトです」
[何の用だ?]
「分かりません。レベッカを出せとしか言わなかったので」
[なぜレベッカは怯える?]
「……元々腕白坊主で、レベッカは彼を苦手としていました」
[苦手、であれほど怯えるのか?]
見えなくとも気配で分かった。レベッカがどれ程彼を恐れているのか。
セドは目を閉じ、首を横に振る。
「……何かあったのかもしれません。しかし、問われてもレベッカが言わないのであれば、きっと言いたくない事なのでしょう。無理に言わせては、あの子を傷つけてしまします」
何だそれは、とヴィラは呆れてしまう。幼い子どもが、自分一人で解決できる問題などたかが知れている。解決出来なければ、それはその子の中で重石となり、積み重なった重石はやがてその子を押し潰してしまうだろう。例え話し難そうにしていたとしても、話しを聞いてやるべきだとヴィラは思う。
(そうしなければ、いざという時動けない)
だが、ヴィラはセドにその関係を改めるべきだ、などと言える立場にない。これは、彼女とセドの、家族間の問題だ。そこに他人が首を突っ込むべきではない。
[私はレベッカを追う]
レベッカと同じように朝食を包み出て行こうとするヴィラに、セドが追い縋る。
「お、お待ちを。レベッカは今一人になりたいはずです。ですから」
[軍は今日も動いているはずだ。レベッカを一人にすべきではない]
「し、しかし」
[極力レベッカには接触しない]
そう伝えれば、セドは渋い顔をしつつも口を噤む。
最も、ヴィラはレベッカに話しを聞くつもり満々であった。ただ、そうでも言わなければセドが納得しそうになかったのだ。
黙ったセドを残し、ヴィラはレベッカを追って家を出る。
彼女が行く場所には心当たりがあった。
ヴィラは脇目も振らず、その場所を目指して歩を進めた。
読んでいただきありがとうございました。