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 「首尾はどうだい?」


 気配もなく自分の真後ろに立った男に、レイモンドは驚きつつも内心舌打ちをする。


 「……将軍、基地内で気配を消す必要はないと思います」


 「意味ならあるとも!皆が吃驚した顔は大変愉快だよ!」


 (やられるこっちの迷惑も考えろ!)


 思わずギロリと睨めば、「お~怖」と将軍はおどけてみせる。


 「う~む……思うんだが、レイモンド君は最近カルシウムが不足しているんじゃないか?食事担当に、レイモンド君の牛乳を倍にするよう」


 「私に必要なのは休暇と心休まる職場です」


 「……うん。突っ込みは良好かな。突っ込みが良いということは、コンディションは悪くないんだね」


 どんな判断基準だ、と突っ込みそうになったレイモンドであったが、ここで突っ込んだら負けだと気付き堪える。


 「……本日も収穫はありませんでした」


 レイモンドの言葉を受け、将軍は仕事用の顔になる。


 「四日かけても、何も出ないと?」


 「はい。墜落の痕跡すら発見出来ていません。……風で別の場所に流されてしまったのでしょうか」


 「その可能性は低いだろう。地図を」


 レイモンドは素早く地図を広げる。地図にはこの四日で調べられた場所が赤く記されているのだが、将軍は地図を見て眉根を寄せた。


 「ふむ。四小隊を動員しても、まだこんなものか」


 地図はまだ半分が空白のままである。如何にフローレインが広大であっても、これは想定よりもかなり遅れている状態であった。


 「申し訳ありません」


 「何、レイモンド君のせいではないよ。しかし、あまりにも遅いな。何か理由が?」


 「磁場が強く、コンパスが使えないようです。案内人の記憶だけが頼りで、慎重に成らざるを得ないと。それから、この辺りなのですが」


 レイモンドが地図を指さす。そこは、フローレインの中央部分。


 「どうもこの森を守護する女神が住む場所だそうで……村の猟師全員に聞いたのですが、誰も入ったことがないそうです。案内出来ないと言われてしまい……将軍?」


 気が付けば、将軍が背を向けて部屋を出て行くところであった。


 「うん?あ、私、ちょっと出かけてくるね。後宜しく」


 爽やかな笑顔を残して、将軍は立ち去る。それを茫然と見送っていたレイモンドは、は、と気が付き思わず絶叫した。


 「あ、あんにゃろぉ、逃げやがったぁぁぁぁ!」


 静かな基地内に、一人の男の獣のような咆哮が、しばし響き渡った。










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