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無感動多才少年

作者: 九条 隼

R15まではいかないまでも、あらすじ通り少々不健全です。

R12くらいで……。お気をつけください。



ねえ、全部貴方のせいなのよ。


細い首に両腕をまわして、今日も馬鹿な女を演じるの。

笑顔がよく似合う、世の中の辛酸を知らないような浅慮な女がお好みなんでしょう? ……そりゃ、そうよね。

だってあなた、まだ十代の半ばくらいでしょう? やっぱり、いくらいつも澄ました余裕顔をしてるからって中身はまだまだお子様ね。

幼いキスを彼に送って、少し退屈そうな顔から柔らかい顔に変えさせる。

……やだ、もう、なんなのかしら! それだけで、まるで初な女みたいに体が紅潮しちゃう。まさか、男を知らないわけじゃあるまいし。本当に、情けないったらないわ。悪女だなんだと言われたのがまるで嘘みたい。でも、こんなわたしも嫌いじゃない。

なんだか、本当に、世の中を知らないかわいい人になったみたいだわ。


女の子みたいに可愛い彼の膝に座って、自慢の体をくっ付ける。きっちりと身に付けられたスーツに顔を埋めて、すがり付くみたいに彼に抱きつくの。

華奢にみえて本当はなかなかいい体をしてるなんて、一体彼は何を目指しているのかしら? ヴァイオリンの天才演奏者って聞いてるけど、なんだかんだと体を鍛えているみたい。

ふふ、素敵ね。強くなりたかったのかしら。頑張ったのね。

あら、ネクタイまできっちりしちゃって、しょうがないから特別にわたしが緩めてあげるわ。

そっと首筋へ顔を埋めて、可愛く笑って見せる。どうかしら、わたしからのお誘いは。ここまできたら、さすがの貴方でもわかってくれるわよね?

すこし頬を赤くして、控えめに目を合わせるの。貴方くらいなら、きっと理性が飛んじゃうかもね?

余裕綽々な貴方の必死な顔が見れるのが楽しみだわ。



ああっもう! 違う、違うでしょ?

こんなに意識してるのに、何で効かないのかしら! 

ちょっと、誘ってるってわからないの?

少しくらい照れたりしたって良いのに、またその優しい微笑。まるで年上を相手にしてるみたいだわ。

少し拗ねた顔を彼に見せて、じっと見つめる。


ねえ、食べちゃってくれても良いのよ?

うるうると潤んでいく視界は、もちろん演技。女優なんてメじゃないわよ。なんていったって、今までこのわたしの涙に陥落しなかった男はいないだから。女の最大の武器は、綺麗な涙なのよ。

ほら、どう? ちょっとは狼狽えてくれるのかしら。



……ちょっと、違うってば!

頭を撫でてほしい訳じゃないのよ! あなた、わたしが年上だってこと分かってるくせに……もう、本当に思い通りにいかない人ね。

こっちは犯罪覚悟で誘惑中だって言うのに!



バカ、ばかばかばかばか!

悔しくなって、思わず彼の首をそのまま強く抱き締めるの。すこし苦しそうな顔をしたら許してあげてもいいのよ。

ああ、もう。違うでしょ! 何でそんな優しい顔をしてるのよ!

子供扱いしないで、わたしは貴方と違って大人なのよ?


これ以上ないくらい彼に乗り上げてぴったりくっついく。しょうがないから最終手段よ!

お姉さんが、あなたにイイコト教えてあげる。

ほら、あなたの綺麗じゃないところを見せてよ。ほんとはもっと嫌な人なんでしょ?

そんな聖人みたいな顔してないで。素直になってよ。わたしが全部、受け止めてあげるわ。



ふと、柔らかい黒髪がわたしの腕をくすぐる。

苦笑した彼の顔が目に入って、体が硬直した。


ああもう、馬鹿みたい……。なくしたはずの良心が小さく痛む。

こんな少年相手に必死になっちゃって。

その秘密だらけの心を奪ってやろうとしたのはわたしのはずよ。多才な美少年だとか神様に愛されてるだとかいわれてるから、ちょっと痛い目にあわせてやろうと思ってただけなのに。

……何でこんなにムキになっちゃってるのかしら。


わかってる、わかってるわよ……装う必要なんてないのよね。

たった一人のお子様に翻弄されてるわたしは間違いなく、馬鹿な女なんだから!

何でこうなっちゃったんだか。もちろん、流石に考えなくてもわかるわよ。まさかこのわたしがこんな子に、なんて。だいたい、タイプなんかじゃなかったのよ?



ああでもあなた、ちょっといい加減にしなさいよ。いくら天才だからって、そんなの関係ないんだから。

ちゃんと責任、とりなさいよね!


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