先を行く、彼女の背中を、追いかけて
「ねぇ! 今度花見に行こうよ!」
私の一番の友人である友紀子が一つに縛った髪をぷらぷらさせながらそう言った。私は読んでいた本から顔を上げた。
「いきなりだね。いつにする?」
私も桜が綺麗だなと思っていたので公園にでも出かけようかと思っていたのだ。
「今日!」
「今日……か」
今日はいい天気で、気温も高く、お花見日和と言ったところだ。最適かもしれない。
「いいよ」
「やった!」
彼女は大げさに跳ねて喜んだ。中学三年生にもなって子供っぽいなと思った。
だけど、彼女が私のことを思って誘ってくれたんだ。私は4月から転校する。ここから遠く離れた青森に。クラスでは多く友達ができず、いつも一人で読書をしていた。そのため、あまり思い出がないのだ。
だから私はそんな彼女の想いを素直に受け入れた。
私たちは自転車を押しながらいつも通る道とは別の道を歩いていた。午後の日差しが気持ちよい。
「ねぇねぇ、コンビニ寄ろうよ!」
「あ、ジュースとか?」
「そうそう!」
私たちはセブンイレブンに寄ってジュースを買った。私はなっちゃん。友紀子はファンタだ。
そして近くの桜で有名な公園へと向かう。自転車にまたがる。そして風を切って走り出した。
「もうすっかり春だねー」
「うん、暑いくらいだよ」
私たちは駐輪場に自転車を止め、飲み物を持って公園に入った。
「うわぁ……」
私たちはその光景にしばし見とれてしまった。
ピンク色の桜が見事、満開を迎えていた。花見をしている人も数が多く、どこからかバーベキューのいいにおいがした。
「行こう!」
友紀子は私の手を取った。
「えっ」
私は彼女に遅れまいとついて行く。
目の前を行く彼女の背中はどこか寂しそうだった。
こんにちは、まなつかです。
本当はもっと続けていきたかったのですが、流石に時が流れてもう5月ですのでこの話にて連載は終了とさせていただきます。
ご愛読、ありがとうございました。
これからは夏に向けての小説を書いていきたいと思っています。




