第1話 魔王VS勇者―それから神の任務。
魔王は世界に災いをもたらす存在だ。日記であろうと、歴史上の誰の言葉であろうと、誰もがそう口にする。魔王はすべてを破壊し、すべてを支配し、あらゆるものの上に立っている。『神』でさえ例外ではない。 魔王は恐怖の指導者であり、血に飢えた狂気的な悪魔たちを率いて、神々を含むすべての種族と戦争を起こした。捕まった者は地獄のような厳しい生活を送り、『休みなく働く労働奴隷』にならなければならなかった。それが魔王の行いであり、絶対に『許されない』ことだった。
ルールもなく、最低限の道徳もなく、国際基準のようないち日八時間労働・いち時間休憩もない。起きて働き、寝て、またそれを繰り返す。まさに『最悪』そのものだ。だからこそ、立ち上がって戦う誰かが必要だった。
ある日、普通の田舎村から一人の男が、気品ある白い剣を携えて現れた。 その男は、人々を捕まえて『休みなく働かせる』魔王の行いが許せず、大切な仲間たちや最強の剣とともに魔王軍と戦いへ向かった。その男はのちに人々から—『勇者』と呼ばれるようになった。
世界に平和をもたらす呼び名だ。 勇者は軍を率いて何十年もの間、魔王と戦った。どれほど時間が経っても戦いが終わる気配はなかった。しかし、永遠に続くものなど何もない。勇者のこれまでの努力は実を結び、勇者は軍を率いて魔王城まで突き進むことに成功した。
そしてついにやってきた.....魔王との対峙。
「久しぶりだな」
魔王は幸せに満ちた笑顔で挨拶をした。
「ああ、そうだな」
勇者は素直に返し、鞘から剣を抜くと、玉座にいまだ傲慢に座っている魔王へ剣を向けた。
人間と姿が変わらない悪魔族の男。色白で輝く肌を持ち、身長は180センチ半ばほど、肩幅が広く、大きくはないものの筋肉がついている。気品ある黒いシャツとズボン着け、清潔で美しい身なりとは相反する、古くボロボロに見えるコートを羽織っていた。 彼の中の唯一の汚れはそのコートだったが、それでも魔王はそれを脱ごうとはしなかった。
「今日がお前の最後の日だ、バロン!!」
『バロン』魔王の名が口にされた。 己の名を呼ぶことは、この魔王への挑発である。魔王バロンはそう考えた。
挑発...それは魔王にとって極めて珍しいものだった。だって、誰が魔王と揉めたがるだろうか? 魔王は指を一度鳴らすだけで国を灰にできるのだ。そのうえ顔も良く、他の存在をみすぼらしく見えるほどだ。
それなのに、勇者は恐怖を感じなかった。 名に恥じぬ勇敢さだ。 真っ赤な瞳が、じっと勇者を見つめている。 魔王は玉座から立ち上がり、顔を見つめ、それから間もなく高笑いを破裂させた。
「ハハハハハハハ..!! 我に剣を向けるとはいい度胸だ! いいだろう! たとえ低級な人間であっても、認めよう」
魔王は黙り込んだ。途端に、あたりは重苦しい雰囲気に包まれた。魔王城はまるで時間が止められたかのように突如静まりかえり、バロンが言葉を発すると再び動き出した。
「我が名はバロン。すべてを支配し、何よりも強い魔王だ。ならば勇者よ、我に見せてみろ。お前の力と、その勇敢さを—かかってこい勇者!! 我に見せてみよ、お前の物語をどう書き記すのか。導く先が『光り輝く』未来か、それとも『暗闇』なのかを!」
「望むところだ!」
勇者は星の光のように突進した。
剣を交える音と斬り合う魔法の音が、城全体に響き渡った。その戦いは目追えないほど速く、痕跡すら残らなかった。互いが持ちうるすべてをぶつけ合う戦いであり、命を懸けた戦い—それは激しく繰り広げられた。 ...これなのだな。勇者と魔王、二人の最強の戦いは。
「ハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「ヤーッ!!!!!!!!!!!!」
...
『....あなたなら絶対に良い世界を作れるはず』
自分に恋した少女の願い。
『諦めるなよ..』
友の願い。
それらのものが、勇者を立ち上がり戦い続けさせた。 白い剣は果てしなく輝きを放った。その光は世界中に広がり、世界全体が白い光に包まれた。
「ヤーッ!!」
天を崩し地獄を壊すほどの戦いの音が、世界中に響き渡った。神や天界でさえも目をそらすことができなかった。 黒と白の光が乱雑に交差し、地面は突如として消え去り、暗い空は白い光に染まった。魔王城は跡形もなく崩れ落ちた。
「来い!」
「ああ!」
二人はすべてをぶつけ合った。 バロンは激突の最中、高らかに笑った。
「実に愉快だ! これこそ我が数千年—いや、一生待ち望んでいた戦いだ!!」
魔王は笑い続けた。勇者は自分の唇を噛み、それから笑顔を見せた。 宴には必ず終わりがある。
ついに結末が訪れた。
「「 ヤーッ/ヤーッ!!!!!! 」」
勇者の剣と魔王の手が激突した。ほんの一瞬で、敗者が姿を現した。
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負けてしまったか。 我が輩は微笑んだ。隠しはしない。
それにしても我が輩は本当に狂っているな....素手で剣に立ち向かうなんて、どんな結果を期待していたのだろうか。
我が輩は、自分と同じくらいボロボロで息を荒らげている勇者をちらりと見た。
「勇者よ、我が願いを聞け」
「『聞いてくれ』と言うべきじゃないんですか?」
「聞け」
「...ハァ、仕方ないですね」
勇者は笑顔でうなずいた。
「なんですか?」
その笑顔は誠実さに満ちていた....
「お前が我が輩を倒してくれて、本当に運が良かった」
少し勝手かもしれないが、だが
「...勇者よ、この願いは少々厚かましいかもしれないが、我が街の民はただの普通の悪魔だ。何の罪もない、ただの村人にすぎない—」
「絶対に助けます」
勇者は最後まで聞くまでもなく答えた。
「人間と悪魔が共存できるようにしてみせます ..絶対に」
我が輩には嘘を見抜く目がある。....この者は真実を語っている。
人間と悪魔を共存させる? 千年も争い続けて小説のクリシェになったこの二つの種族か?...なるほどな。『勇者』という名は飾りではないようだ。 『勇気がある』な。
「...そうか。お前は我が輩が認めた唯一の人間だ。これからお前が直面するものは思い通りにいかないかもしれない。それでも絶対に諦めるな、勇者....これが最後の警告だ」
我が輩は続けて言った。
「もし次の機会があれば、お礼にごちそうを一食おごってやる」
それから我が輩は、穏やかに目を閉じた。
@@@@@
「やぁぁぁぁぁ魔王、久しぶり。どんな気分? あの人間になす術なく突き刺されてさぁ。ズブズブッ!」
「ほう、死後の世界か...というか」
何の飾るものもない真っ白な部屋。我が座っている椅子と、目の前の人物が座っているもう一つの椅子があるだけだ。
今、我は透明感のあるロリババアと一 緒にいる...いや、「神」のことだ。 ロリという言葉通りに小柄で背が低く、光り輝く緑色の髪、そして常に光の衣を身にまとっているかのように全身から白い光を放っている。
実に可愛らしい姿で、威厳など微塵もない。ただ、彼女は我に向かって腹の立つような笑顔を浮かべている。
「久しぶりだな、神」
「失礼ね、そんな風に思わないでよ。私は神なのよ? 威厳がないなんて、冗談でしょ?」
すっかり忘れていた。神は心が読めるのだったな...それにしても、あの若者みたいな言葉遣いは何だ? どこで覚えてきたのだ? それと...
「すまん。美少女を見ると、つい考えが膨らんでしまうのは世の常だ」
我は潔く認めた。だが嘘をついたわけではない。 彼女は身長145センチほどの少女だが、最も目立つのは、一着だけで太ももまで覆う衣服だ。
男神たちがよく着ている服で、普通は威厳を感じさせるものなのだが、この神が着るとスケール感がまったく出ない。 逆に、妙に可愛らしく見える。 神は我の頭の中の考えに反応して眉をひそめた。
「最低ね。心の中で人のことをあれこれ分析して、妙に可愛らしいとか言っちゃって。言っておくけど本当に怒ってるんだから。いい加減にしなさいよ。今、私と揉めても痛い目を見るだけだからね」
..ロリ..ロリ..可愛いロリ..愛くるしいロリ。
「煽ってるでしょ! 気にしないから、負け犬の言葉なんて興味ないからね! ギャハハハ、負け犬! 勇者にちょっとやられただけで倒れちゃってさ、クスクスクス!」
この奴め、久しぶりに会ったというのに口の悪さは健在だな。我と神はただ見つめ合った。血気盛んだった若き日の思い出す。そう、我がまだ魔王になる前、そしてこいつがまだ神になる前の話だ。
「人を負け犬扱いするとは、本当に性格の悪い存在だな、神々というのは。それと、お前たちの頭の上にあるその輪っかは一体何に使うのか実に知りたいものだ。他人に投げつける縄にするのか? それとも暇つぶしの輪投げ遊びにでも使うのか? ダサすぎるぞ」
「ふん、言っていなさい。低級な種族にはこの頭の上の輪っかの素晴らしさは理解できないでしょうね、この発情魔王!」
人を平然と発情扱いしおって。
「我は快楽を享受しているだけだ。もし快楽を享受することが低級な種族の生き方だというのなら、お前はどうぞ高級な存在のままでいろ。チン〇ンを使う権利すら持たない一匹の忠犬め!」
「な、なんですって!」
「ああ、お前の場合は...中の黒いアサリのことだな? フフフフ! まったく哀れだな!—この欲求不満のガキめ!」
神の顔は瞬時に真っ赤になった。
「な、な、なんですってぇぇぇ!!?」
「欲求不満の少女と言ったのだ。交配どころか、自慰すらしたことがないのだろう? まったく純真だな。一度も発散したことがないとは。ほら、全部聞こえているのだろう? 我の心を読め、すべて読むがいい。ところで自慰の仕方を教えてやろうか、欲求不満の神よ」
「あ、あんた! 最低、最低よ! 歴史上で一番最低な魔王ね!!」
「実に挑発に乗せやすいやつだ。ハハハハハ!」
神は恨みがましい目で我を睨みつけた。それにもかかわらず、恐ろしさはまったく感じられない。見た目が可愛いチビだからな。
「魔王、神を侮辱するのは罪よ」
「何の問題もない。我の世界の人間の大半は魔王を信仰しているのだからな」
「グッ!」
「当てるまでもなく痛いところを突かれたようだな。ハハハハ」
我は高らかに笑い、腹を抱えた。一方、神はうつむいて何かぶつぶつと意味不明なことを呟いている。
「こんなに笑ったのは久しぶりだ。感謝するぞ」
ああ、たまには他人をからかうのも悪くない。普段は城の中に座っているか、勇者と戦う時のポーズの練習をするか...ああ、たまに人間の王都に向かってビー玉を弾いて遊ぶくらいだったからな。
「.......ロンガイガイラダムライムライムライダイロンファイライギロンファイギファイガイファイガイファイエwdodpiwdpiwdjpdpwdwpdjwpdヨカイヨカイヨカイヤライカイヤライヨカイヨカイヨカイヤライカイカイカイカイヨカイヨカイライライカイライカイライカイライカイライライダイライフダイライファイダイナイアカンヤアイアカンヤンエアスハフエアタイカイライ/ヨカイハフカイヨカイヨカイフカンハヤカイフライナイカイライカイ/アカイヨカイヨカイニーイエンファイダイフイイーファイエンファイイーファイイーレンファイネイファイ」
「おい、どうした?」
神はうつむいたまま黙り込み、言葉になっていない言葉を呟いていたため、我は胸騒ぎがし始めた。
言い過ぎか?
「おい、さっきのは少し言い過ぎたかもしれん。年季の入った処女の少女神であるお前にとっては、心身ともに少なからぬ衝撃だったのだろう。ふむ、理解できる—だが謝りはせんぞ」
「..ねえ、魔王」
神は邪悪な笑みを浮かべた。
「魔王、私からの任務を受ける気はない?」
任務?
「詳細を言え」
「世界が全部で่十個あるのは知ってるわよね?」
「勿論だ。今や勇者の奴にやられたせいで、十一個目の世界を手に入れようとしているところだがな」
「うん、その通り...言いたいのはね、世界は十個だけじゃないの。その十個の世界っていうのは、神、つまり天界の管理下にある世界のこと...管理外の世界が他に二個あるの。一つ目はあなた自身の世界で、すでに統治権を失ったけれど。そしてもう一つが、今も抵抗を続けている世界よ」
「ハッ、哀れなことだ」
「言い過ぎよ。ちょっとした技術的なミスにすぎないわ」
神は手を叩き、素直に言った。
「だから、あなたに行って破壊してほしいのよ」
「神らしくない頼みだな」
世界を破壊してくれだと? 大して難しいことではないが、神からの頼みというのがな。
「仕方ないじゃない、手に負えなくなったんだから。あなたの世界と同じよ。あの勇者がいなかったら、どうすればいいか分からなかったんだから」
「ほう? 神々が足を踏み入れない、我の世界に匹敵する強者ばかりの世界だと言うのか?」
「そうそうそう! 強者とばかり出会えるわよ。あなたも興味があるでしょ?」
へえ、悪くない提案だ。
「で、我は見返りに何を得られるのだ?」
「その世界が崩壊したら、あなたに世界を一個作ってあげるわ!」
世界が一個タダで手に入るというのか! だが... 我は神に向かってカンフーの構えをとった。
「話がうますぎる! 何を企んでいる?」
世界を一つ破壊するだけなら簡単な仕事だ。だが、見返りが良すぎる。
「そう思う?」
神は契約の巻物を取り出し、我へ投げつけた。
『提案:世界の破壊』
『見返り:世界一個』
『契約違反の場合:その世界に永遠にとどまること』
我の目は一瞬で大きく見開かれた。
「お、お前、冗談だろう!!? 世界が一個だぞ!!!」
「神は嘘をつかないわ」
我は動揺しながら神を指さした。
「そもそも、他人に世界を作ってやるほどの重大なことを、天界の決議を通さずに進めてよいのか? こんな風に独断で決めて、神なら何をしてもいいと思っているのか? 世界を一つ作るエネルギーがどれほどかかるか—お前が神になったら天界が崩壊すると思ってはいたが、ここまでとは思わなかったぞ!」
「うるさい!うるさい! 受けるか受けないかだけ言いなさい!! 受けないなら今すぐ地獄に送ってあげる!!」
「クーデターを起こされても知らんぞ」
「よ...余計なお世話よ」
見返りは世界一個...断る理由など微塵もない。
正直なところ、あの勇者以外に我に勝てる者などいるとは思えん。たとえ集団でかかってこられようともな。
我は大きくため息をつき、答えた。
「承諾しよう」
神は久しぶりに見る機嫌の良さそうな笑顔を浮かべた。同時に白い部屋の中央で光が強まり、我は異世界へ送られようとしていた—ぴょんぴょん跳ね回っていた神は、光が消える最後の瞬間に我の方を振り向いた。
「魔王、言っておくことがあるの」
「死なないでね」
最後に目にしたのは、狂ったように爆笑する神の姿だった。 死ぬなだと?
「あり得ん!我は魔王、名はバロン!! 歴史上最強と謳われ、神から世界の統治権を奪い取り、悪魔の領土へと変えた魔王だぞ! たかが世界一つ破壊する能力がないとでも?.... 愚かな!!」
我は黒いコートのポケットに手を突っ込んだ。
「神とはいえ、これほど見下されては素直に面白くないな! ....証明してみせてやる ....何時間で終わらせてやろうか、神よ?」
その時の我は何も知らなかった ....何一つとして知らなかったのだ。一方、知っている者はというと?
「キギャギャギャギャギャギャギャ!!!!!ー」
狂ったように爆笑していた。 何も知らなかったからこそ、我は格好をつけて立ち、フフッと呟いていたのだ。
「フフフフ—」
…….
…………
………………..
「ヒックヒック...」
気づいた時には、我は路上で横になって泣いていた。
「家帰りたい」
と。




