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8話 平凡女のお買い物

大変お待たせしました~。でも、話しはほとんど進んで無いです、スミマセン(泣)




「うおぉぉぉぉ‥‥、只今大変込み合っております、って感じだねぇ」


「そんな漢らしい声出して感心しないでくださいよ、ナーガさん。‥‥まぁ、気持ちは分からなくも無いですけど」


前半は呆れを含み、後半は頷いてるクルド君は眼前に広がる光景を見渡し頷いていた。

この光景は見慣れている筈の現地人でもそう思ってしまうのだろう。

広い道幅が半分になる程ひしめく様に建てならぶ露天。

あまりの混雑振りに人とすれ違う度ぶつかる肩。

あちこちからひっきりなしに聞こえる客引きの声は、とても元気で威勢が良い。

「このデリアは王都から離れてはいますけど、インダストリア国で二番目に栄えてる都市なんです。

だから、交易も盛んでいつもこんな感じなんですよね~」

「へ~‥‥ここってインダストリアって名前だったのね」

「知らないんですか‥って、知る訳ありませんでしたね。スミマセン」

クルド君からの説明に素直な感想を述べれば、なんでか謝っているクルド君。

とりあえずスルーで。

ワタシは今とても忙しいのでクルド君に構っていられないのだ。

只今のワタシはクルド君から借りた『何故か』サイズの丁度よい外套を纏い、軒先や露天に並ぶ異世界情緒溢れる様々な商品眺めている。見た事のない物ばかりでとても目移りしてしまう(中には視界に入れたく無い様な物もあつたけれど‥‥)

クルド君に連れて行かれた街の中はゲームとかでも見た様な、基本的に西洋感溢れる作りと材質だった。

そんな街中を見ても新鮮な感じはあれど、驚きはあまり無かった。

がしかし!すれ違う街人達を見て驚いた。

皆が皆、クルド君よりも高身長だったのだ。

勿論、男女問わずにである。

さっきから、すれ違う人達のみぞおちしか見ていない様な気がする‥‥‥‥‥

まばらに獣面の人や、獣耳、尻尾、背中に羽根を生やしている人なんかも見つけた。

―――うん、正に異世界。

進化の過程が全く違うね!

街の中の建物は基本的に二階建てで、敷地面積もワタシの常識の範囲内に見える。

その事から、やはりクルド君の一般常識が当てにならない事が分かった。

試しに、と思い果物や野菜らしき物の名前をクルド君に聞くが逆に「何だと思いますか?」と聞かれる始末だ。

―――質問に質問で返すなっ!

ワタシが分かる訳ないだろがっ!!!

と突っ込みたい所だけど、それは聞いたワタシが悪かったと思い我慢しておいた。

―――‥‥あぁ、ワタシって大人。


質問に質問で返された後は無言になりクルド君の後ろを黙々と大人しくついて歩くワタシ。

ただ、視線だけはキョロキョロと忙しなく稼働中である。

ワタシがこんな町中にいるのには理由がある。

とはいってもそう大層な理由ではない。

家に居ても情報が無さすぎて聞きたい事が纏まらないし、どうせ夕食街で食べるならもう街に行っても良いんじゃね?

つーかワタシの生活必需品買わなきゃじゃね?

的なワタシの独断で街に行く事が決まった。

取り敢えず、磯臭い自分の身体は置いておく事にして、異世界知識と異世界生活で必要な物を入手する事に至った。

この世界に馴染み過ぎて元の世界に戻れない、とかいう無くもない設定がワタシにもあてはまるかどうか分からないが生きる為にはある程度一般知識が必要となる。

もし帰れるかも知れない事態になった場合、知識が無かったらそのチャンスを失うかもしれないという設定があるかもしれなくもない。

それに、帰る帰れない以前に死んでしまったらそれでお仕舞い、ジ・エンド、セ・フィニだ。

だからワタシは知識を貪欲に欲しがる、『知らない事』があるのが恐いから。

それが『帰れない事』に繋がるかもしれないから‥‥‥‥


と、突然クルド君があるお店の前で立ち止まった。

その店先には色とりどりの生地や服らしき物が並べられており、丸い看板の真ん中には一反木綿‥いや違った、下底が巻物っぽいのに巻かれた白色の長方形が描かれていた。

絵の意味が分からないので看板は暫定で一反木綿と呼ぶ事にするが、店にある品物から見てこの暫定一反木綿は恐らく服飾系に使われる看板なのだろう。


「ナーガさん、ここは生地屋で服とか小物とかも扱ってるのでどうぞ」


「はぁ、どうも。‥‥で?」


「いえ‥っ、あの、だから‥‥どうぞ?」


「あぁうん、だから‥‥それで、ワタシ一人でどうしろと?」


「えぇっ?どうしろと‥‥って、着る物とか‥を、選んで頂けたら‥‥‥‥と思いまして。

えぇっ!もしかして、僕も一緒に行かなきゃなんですかっ!?」


「は?当たり前でしょ、何言ってるのさ。

ハイ行くよー」


「‥えっ、えぇっ!!!」


ドナドナよろしくクルド君の胸ぐら掴んで、ズルズルと店へ引きずって行く。

自分の推測通りのお店だったのは良いけれど、どうぞ‥‥と言われてもワタシには先立つものが無いしこの世界の常識も無い。

なので、買い物する時に現地人は必須となる。

この際『是が非でも女物!』とかいう贅沢は言わないので、せめて‥‥せめて磯臭くない服を着たい。


「ハイハイ、ご主人様お静かにー。周りの注目集めまくりですよー」


「ごっ‥‥ごしゅっっ‥!?」


ごちゃごちゃ煩いクルド君を黙らす為、敢えてへりくだってみれば赤面しどもるクルド君。


―――何故!?


まぁ突っ込むのもメンドイので、スルー決定。

大人しくなってちょうど良い。

ワタシはクルド君が大人しくなったのをこれ幸いと、一反木綿店へと引きずりこんだ。






 


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